スピッツ「ジュテーム?」 悩み疲れた 今日もまた
スピッツの「ジュテーム?」について。小噺から。
コウスケ(43)には、5歳と3歳になる娘がいる。妻との関係は冷え切っているが、不満はない。もう2年以上、妻と夜を共にしたことはない。
そんなコウスケには誰にも言えない秘密がある。会社の部下であるサヤ(26)。逢瀬はもっぱらサヤのマンションだ。このことが会社にばれたら、妻にばれたら・・・。後ろめたさに押しつぶされそうになるけど、「ぬくもり」に包まれるため、「いくつもの間違いを重ねている」。
もちろん、サヤは、コウスケに家庭があることを知っている。
「ごめんね」がコウスケの口癖だ。
「『別にかまわない』と君は言うけど 適当な言葉が見つからない」
コウスケは、サヤのやさしさに、自分のずるさを隠して、やり過ごしてしまう。
もう決して失いたくない存在になってしまっている。
「君がいるのはステキなことだ 優しくなる 何もかも」
サヤカと一緒にいると、仕事や家庭でささくれだった心がやわらかく、溶けていく。でも、本当に妻と2人の子どもを捨てられるのか?そのことを考えると、コウスケはいつも言葉を失ってしまう。
コウスケがサヤカと会えるのは、会社を退けた後のわずかな時間。カレーを作ってくれているんだ気付くと、そそくさと彼女の待つ部屋へと進んでいく。
「君がいるのはイケナイことだ 悩み疲れた 今日もまた」
自分の力ではもう決して、後戻りできない。
◇ ◇ ◇ ◇
「フェイクファー」と同じく不倫の歌ですよね?
こんなにきれいな声で歌われると、美し過ぎて聞きほれてしまう。
「愛してる」ではなく、「ジュテーム?」なのは、男側のずるさそのもの?
自分の心の安定のためには、愛人の存在は非常に大切だけど、家庭ほどは「愛していない」。都合の良い存在。
「ジュテーム」ではなく「ジュテーム?」なのは、本当に悲しい。ずるい。
日本人にとってのフランス語への距離感も、この曲の最高のニュアンス演出に役立っている。
ああ、ズルくて、残酷だけど、仕方がないことがあるのがこの世。
2022年7月 トラジロウ
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