私信　どうなりたいの

あなたは
やさしい親で在りたくて
見ない時間を遣り過ごすことに慣れていて
実には　あれもこれも
脳は喋り始めるけれど
意識が口を閉じさせる
「やさしい親」だと思われたくて
 
そんなあなたの子供たちは
何も言わない、言えないあなたに
自身の正しさを投影している
 
あなたは
寛大な親で在りたくて
言葉にされた享楽に時を投じ
鬼籍の方との約束も
背負った義務の執行も
置き放したまま
忌避するヒトを隣に創り
忌避するヒトの所為（せい）にして
忌避せざるを得ないと
暗い顔で語り始める
 
そんなあなたの子供たちは
あなたが創る忌避なるヒトを
自信を持って足蹴にしては
「あなたの味方」と旗を揚げ
ヒトを蔑む癖が付き
忖度の笑顔が板に付き
欲に擦り寄り胸を張る
 
あなたは
正しい親で在りたくて
根もなくて葉にもならない
文字を並べて
記憶の欠片をさらに刻んで
唯だ見ていたい映像にして
「根拠」と云う名で語り始める
 
そんなあなたの子供たちは
突きつけられる現実を
思いたい言葉で語り続ける
あなたの鏡
 
そんなあなたの子供たちに
突きつけられる現実は
身にも付かず
処理も成されず
轟音を立てて積もり続ける
 
あなた達が
無いものとして足を向けない
民家途絶えた山裾に
今年も直（じき）に
雪が降り
自生の仙蓼（せんりょう）が実を付ける