見出し画像

2画面構成のトリッキーな映画(ネタバレ有り)

新宿のシネマカリテにて『VORTEX』を観てきました。
久しぶりにギャスパー・ノエ作品を劇場で観ましたが良かったです。バイオレンスやエロが多い監督が今回はそれらを描かずに老夫婦の映画を撮ったって事なのでどんな作品なんだろうかと公開前から気になってましたが、予想以上に素晴らしい作品でした。
正月なのにお客さんも沢山入ってて人気の高さが伺えます。
ざっくりと内容と見どころを書いてみたいと思います。

内容

老夫婦が直面する老いと病気(アルツハイマー、心臓病など)、そして死についての話

見どころ

*全編スプリットスクリーンの画面構成

本作の見どころってやっぱりこの画面構成じゃないかなと思います。映像インスタレーションでこういう作品ってありそうですが、それを映画で見た事が殆どなかったので劇場で見ると新鮮でした。(2台の映写機から関連性のないシーンを交互に上映するチェルシー・ガールズという作品がありましたが、それとも若干違う。)
そして、映画として見れないかというとそうでもなく。
編集によって観客に理解してもらうのではなく、各シーンを並列で理解するようなそんな感じがしました。死に直面した際の展開も作り手の意図が伝わる造りだった。

*病気の症状をドキュメンタリー的な方法で描いている

これまでのノエ作品と大きく違うのは暴力とエロがない事ですが、それでも身につまされるようなシビアさが伝わるのは心臓病やアルツハイマーなど病気の症状を長回しによる映像で描いているので役者の演技がとてもリアルだった。再現VTRでよく見かける「うっ」って唸って倒れる芝居と違って病状に耐えられなくなる下りがすごくリアルでした。奥さん役のフランソワーズ・ルブランの徘徊シーンもリアルさが際立っていた。

*スローシネマ2.0

2.0としたの個人的見解ですが、長回しを多用してるので各シーンは結構長い。1画面だけで構成していたらアピチャッポンやラヴ・ディアス作品のようなスローシネマに分類されるような感じもしますが、2画面構成なので情報量が多め。スローシネマの新しい見せ方じゃないかなと思いました。

という感じで随所に見どころのある作品でした。
本作もブノア・デビエが撮影を担当してた。G・ノエやH・コリン等、曲者監督の作品にこの人は欠かせないですね。逆にこの人が撮影をしてたらトリッキーな映像美を楽しめるんじゃないかと思います。
そして、今回もワイルドバンチが製作に関わっていた。
前々からチェックしてましたが個性的な映画を観たい方はワイルドバンチが配給、製作してる作品はオススメです。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?