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サンタクロース~14.子供たちと一緒

14 子供たちと一緒

 トトはオモチャ屋さんを開きました。幼いころに祖父から習った木工品づくりの技術は覚えています。祖父が自分たちにしてくれたように、子供たちへ木で様々なオモチャを作りました。
 トトは、ここのオモチャ屋さんに居ると、子供たちが欲しい物を調べる事も出来たし、いつも子供たちの側にいられたから幸せでした。何よりも今のトトは子供たちが好きだったから。
 今日はアンが友達と店にやって来ました。トトは笑ってうなずくとアンを見つめました。  
「すべては、この優しい子が居たからだ……」
 アンが楽しそうに友達と話しています。そこへ、老人が店へとやって来ました。店の中では色んな子供たちが騒いでいます。
「楽しそうじゃな」
「はい。おかげさまで」
 トトが丁寧にお礼を言いました。そして、ずっと聞きたかった事を口にしました。
「あの、女性でもサンタクロースになれるのでしょうか?」
 すると、老人は笑顔で答えたのです。
「あぁ、もちろんじゃよ。誰か、次の候補が居るのかい?」
 トトは店の奥で笑って友達と話しているアンを見つめました。
「はい、とても優しい子が。その子のおかげで、わたしは幸せになれたのです」
 トトが老人に精一杯、明るい顔をしてみました。店の奥でアンがトトを見て不思議そうな顔をしています。老人は優しい顔で笑うと、大きくうなずきました。
「そうか。女のサンタなんて初めてじゃな! だが、まだまだがんばれよ。わしなんか何十年もやってきたのだぞ」
「はい」
 トトが自信に満ちた顔をすると、老人は笑って店を出て行ってしまいました。トトが店先に出ると老人のうしろ姿を見送ります。
 もうすぐ、トトにとって二回目のクリスマスがやって来ます。トトが空を見上げると、雪が降ってきました。
 あと一ヶ月もすると、この街は真っ白な銀世界になります。 

 おしまい

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。貴方へ素敵なクリスマスが訪れますように!

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