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短編小説

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記事一覧

賭けと悔過【短編小説】

 許せないほどのダニが湧いた。はじめは数も少なかったし、糸くずのそのまたくずかと思って気…

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あらち【短編小説】

 たとえば血が噴き出たときに何を感じるかっていうと、痛いとか、赤いとか、鉄臭いとかそんな…

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雪老人【短編小説】

 連峰に獣の声も人の気配もなくなった。寒気にもびくともしない深緑の木々も白く染まっていっ…

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身の代わり【短編小説】

 Aさんが怒鳴っている。私をグズだと言っている。私は私の少し斜め後ろでゆらりゆらりと揺れ…

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仕草【短編小説】

 わたしは二週間ほど前から犬の観察を日課としてきました。我が飼い犬であるところのむくつけ…

9

祈りとかまきり【短編小説】

そのやさしい子どもは駐輪場でカマキリを見つけた。 虫は苦手だった。アパートの二階から階段…

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市島は鯖が苦手【短編小説】

 久しぶりに大学時代の仲間が集まった。第三ビルの地下、せまい中華料理屋での小さな会合だった。いつかの晩に後輩から電話がかかってきて、いま近くに住んでいる。特に用事もないが、久しぶりに先輩たちの顔が見たい、とのことだったので、昔バイトをしていた時に連れてきてもらい、おいしかったという記憶のある店を予約した。注文を通し、生が四つ来た。中華料理屋はあまりにやかましくて、サークルの仲間たちと異質なのがよかった。  だからといって面々はしゃべらないというわけではなくて、現況をぽつぽつと