マガジンのカバー画像

【八人のアダム】一章 ギャランシティ

16
ギャランシティのスターエンジニアであるピップは、軍のために働くことに疑問を感じながら、スターズの整備をする日々を送っていた。しかし、ラムダという不思議なこどもとの出会いが、ピップ…
運営しているクリエイター

#イラスト

【八人のアダム】 1-15 決断

【八人のアダム】 1-15 決断

対象が完全に沈黙したことを確認したラムダは、ピップのモルゴンのそばに歩み寄った。
「ピップ、無事ですか?」
ラムダは変わらぬあどけない表情で尋ねた。
「ラムダ……きみは……」
モルゴンのハッチを開き、ピップは顔を出した。
「ぴーーーーーっっぷ!!」
そんなピップの声を遮るように、ギャランの声が第三格納庫に響き渡った。
ギャランはメタルギャランのハッチを開けて、ピップとラムダの方に向かって来ようとし

もっとみる
【八人のアダム】 1-14 <回想>

【八人のアダム】 1-14 <回想>

ギャラン=ドゥはそのときの様子を、のちにこう語った。

「あの時、でかいスターズの主砲から発射されたのはぶっといレーザー砲だったわね。それは、あのちびガキとピップのモルゴンを容赦なく焼き切るだろうと思ったわ」
ギャランは手に持ったワイングラスをかろやかに横回転させた。
赤ワインの芳醇な香りがあたりに漂う。
「でもあのちびガキ……いいえ、ラムダと呼ぶわ。ラムダにレーザーが当たると思われた瞬間、レーザ

もっとみる
【八人のアダム】 1-13 自律式スターズ

【八人のアダム】 1-13 自律式スターズ

事情は不明だが、上官であるサイモンからの召集がかかった以上、仮にも軍人の立場であるピップはすぐに行かなければならない。
(第三格納庫か)
そう言われてピップの頭を真っ先によぎったのは、先ほどの巨大な自律式スターズだった。
おそらく、あのスターズを巡って何かが起きた可能性が高いだろう。
ピップは片膝をついて、ラムダに目を合わせて言った。
「ラムダ、きみはここにいてくれ。外は危険かもしれないから、なる

もっとみる
【八人のアダム】 1-12 どうしよう!?

【八人のアダム】 1-12 どうしよう!?

ラムダがスターズであると聞き、ピップは驚愕した。
驚愕したが、同時に、
(じいちゃんなら可能かもしれない)
とも思った。

アダム博士の会社、アダムカンパニーは、主に医療用のスターズを製作している世界的な大企業であった。
その商品群の中には、人間や動物に近い動作をするものもあったし、医療メーカーである以上は、人間の構造についても十分すぎるほどの研究がされていただろう。
そのアダムカンパニーの技術を

もっとみる
【八人のアダム】 1-11 はじめまして

【八人のアダム】 1-11 はじめまして

「はじめまして。ぼくの名前はラムダです」

その子どもは満面の笑顔でピップに挨拶をした。
その挨拶があまりに明るく屈託ないため、はじめ、ピップは自分が部屋を間違えて入ってしまったのかと思った。だが、この寝室は間違いなくピップの寝室だった。
そもそも、このアパートの部屋にはカードキーのロックがかかっていて、他人の部屋に入れるわけがないのだ。

「えーと、その、ラムダくんといったかな? きみは、なんで

もっとみる
【八人のアダム】 1-10 アダムとの思い出

【八人のアダム】 1-10 アダムとの思い出

シティで爆発音がした時から、数時間前。
ピップが第三格納庫を後にした時のことである。

まだ時刻は昼過ぎであり、ピップはこのまま真っ直ぐ家に帰る気にもなれなかった。気分が晴れないのを感じたが、その正体が掴めない。
(そういえば、気分が落ち着かない時はひとまず掃除をしなさい、というのがアダムじいちゃんの教えだったな)
そこで、ピップは当初の目的通り、自分のモルゴンの整備をすることに決めた。ピップは徒

もっとみる