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【読書感想】七十歳死亡法案、可決

【あらすじ】

高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。施行まであと二年、宝田東洋子は喜びを嚙み締めていた。我儘放題の義母の介護に追われた十五年間。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘と家族はみな勝手ばかり。「やっとお義母さんが死んでくれる……」東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて……。すぐそこに迫る日本の危機を生々しく描いた衝撃作!


【感想】

すごく心に刺さる物語でした。他人事とは思えないくらい。私の両親も、もうすぐ65歳なので、「介護」というワードが身近なものに感じてきている昨今。

家族の介護をしている方々は、こんな思いで介護しているのか

もし、70歳で安楽死が決まってしまったら人はどう生きるのだろう

生死、安楽死という重い背景を設定しながらも、笑いあり、涙ありの場面もあり、読みやすい作品です。


【心に残った名言3選】

卒業してしまえば、自分にはなにひとつ武器がない。それどころか面接に行くたびにコミュニケーション能力の不足を思い知る。緊張していると、どうやら他人からは不機嫌に見えるらしい。逆にハキハキ答えると、居丈高に見えるらしい。これではいけないと愛想笑いをすれば、人を小馬鹿にしたニヤニヤ笑いだと受け取られてしまう。人事担当者の顔色がさっと変わったのを見てから慌てても遅い。だからといって慎重に言葉を選んでいると鈍いと思われる。 いったいどうすれば〈潑剌とした好青年〉といった印象を与えることができるのだろう。難題だった。とても克服できそうにない。

面接って難しいですよね。「今回の面接は上手く行った!」と思ったら、お見送りの連絡が来たり…泣

素の自分を見せたほうが、「思ってた人と違った」という採用のミスマッチを防ぎやすいと思うのですが、ある程度は、自分を偽らなきゃならないだろうし。。。

結局、職場には「素の自分」を出してはいけないんだろうな(゜-゜)


「それは子供が小さいときの話よ。会社勤めより子育ての方が何倍も大変だという確信があったもの。でもね、子育てを終えてみると、いきなり楽チンな生活になったのよ。そうなると、働きもせずに食べさせてもらっているという惨めな感覚になるの」

子育て中は、やることが多くて、「もう休みたい!」なんて思うこともしばしばでしょう。

でもいざ、子供が独立すると、「あ、自分って、子供いなかったら、やることがかなり少ないかも」って気付きそうですね。

結局、Todoって、自分で作っていると思うんですよ。本当はやらなくても、いいことをやってしまって、「忙しい」と思い込んでるだけなのかもしれません。

そうゆう意味で、本当に大切なものを厳選した、ミニマムな生活って大切ですね。


「引きこもりになった原因なんて、誰にもわからないんじゃない? 原因は友だちや学校の先生かもしれないし、社会人になると、いやな上司もいる。今まで東洋子の息子にかかわって影響を与えた人なんて数え上げたらきりがないよ。それに、本人の生まれ持った潔癖さや繊細さが行く手を阻んでるのかもしれない。たぶん、そういうこと全部が複雑に絡み合っているんじゃないかな。こうなったら荒療治しかないんじゃないの?」

人の気持ちって、本当に分からないからこそ難しい。特に子供の気持ちを理解するのって難しいと思います。

子供が小さいうちは、親が子供の行動を見ていられるけど、ある程度大きくなると、親の管理下から子供は離れていきます。

そうなると、何が原因で子供が悲しんでいるのかなんて分からないですよね。親が知らないところで、子供は新しい友達を作ったり、新しい経験をして、色々なことを学んでいくんです。

親としてはとても心配だけど、そんな子供の行動に余計な口出しをせず、見守っていくのがいいんじゃないかなと思いました。


【終わりに】

介護に興味がある方におすすめした一冊です。

私自身、介護は経験したことないのですが、一人っ子なので、親に何かあった場合、介護の可能性が出てきます。

なので以前から、介護に関する本は読んでみたいなと思っていました。介護テーマだと重い話になりそうですが、垣谷さんの本は読みやすいので、コミカルにも描いてくれています。

ぜひ読んでみてください(^^)


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