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足の短い猫の散歩はこんな感じ。

僕は散歩が大好きな猫。
猫の散歩は珍しがられるのに、僕が散歩していても、なぜかみんな気がつかない。

でも兄貴は、通りががる人たちの視線を一身に集めている。
僕の兄貴は、お散歩が大好きなノルウェージャンフォレストキャット。
フサフサの尻尾をピンと立てて歩くと「優雅ねぇ~」と声がかかる。

僕はというと、歩いていても振り向かれることはあまりない。
公園の道をダッシュしても、誰も僕に気がつかない。
ルンルン気分で、尻尾をアンテナみたいに立てて歩いても、みんな知らん顔して通り過ぎていく。
僕は見えていないみたいだ。

「君は足の短いマンチカンだから、みんなの視界に入らないんだね」
これを書いているトナはそう言う。
僕は短足のマンチカン、足が短くて胴が長い。
人間の高さでいうと、くるぶしぐらい。
警戒しながらほふく前進すれば、スニーカーの高さぐらい。
背が低いってことだ。

ミニチュアダックスフンドみたいな体型らしい。
それって公園でよく見るやつらだよな。
黒や茶色や白黒ブチやクリーム色で、耳の長く垂れて、鼻も長いやつらだ。
似ていると言われても、親近感は湧いてこない。

だってダックスフンドの飼い主さんは、僕にすぐ気がついて「可愛いね~」って言ってくれるけれど、ダックスフンドはどいつもこいつなぜか友好的じゃないんだ。                               

まあ、僕は兄貴より足がだいぶ短いってことは、理解している。
高い所には飛び上がれないし、公園の階段はちょっと苦手、時々お腹がぶつかっちゃうんだ。

公園を歩いていても、僕の姿は植木に隠れてしまう。
原っぱを歩くと、草の中に入り込んで前が見えない。
地面に近すぎて、前を向いて歩いて行く人には僕が見えていない。
だから夜、お散歩する時は、背中にLEDライトをつけてもらう。
そうするとホタルみたいだって。

兄貴はスズメやトンボを追いかけるのが大好きだけど、僕は原っぱで虫を追いかけたり、植木の所で虫を待ち伏せしているのが好きだ。
なにせ背伸びしても足が短いから、高い所にいる止まっているトンボには手が届かない。
地面すれすれに飛んでくるシジミチョウとか、小さなクソバッタは僕のカッコウの獲物さ。
地面に落ちてひっくり返っているセミをちょんちょんと触ったら、ミンミンジージー叫びながらグルグル回るられて驚いたよ。            こないだは枯葉の間で、何かがごそごそ動いているから、上から抑えたら、でっかいヒキガエルがピョンと飛び出てきて、思わずず~っと後まで後ずさっちゃった。
足が短くたって、運動神経は抜群なんだぜ。

地面に近い僕は、道が日差しで熱くなっていたり、冬の寒さで冷えていたりするのが大の苦手だ。
夏はプニプニの肉球だけでなく、お腹がすぐにポカポカを取り越して熱くなっちゃうから、日陰の石段で腹這いになってお腹を冷やさなくちゃいけない。冬はあまりの冷たさに身体がブルブルガタガタと震えてきちゃうんだ。
そういう時は、トナに抱っこしてもらって公園を散歩する。

抱っこされていると、「猫だ」ってみんな僕に気がつくんだ。
シルバーとグレーのシマシマ模様、そこにちょっと茶色が混じっている。 まん丸の目はグリーン。それが僕。
シルバータビーとかいう毛色で、アメリカンショートと同じなのさ。

お散歩に話を戻そう。
とにかく僕は、あんまり人に気がつかれない。
おかげてノルウェージャンの兄貴みたいに、叫ばれたり、追っかけられたり、写真を撮られたりはしない。自由気ままに散歩ができる。

外の空気を吸って、季節によって変わる風の匂いをかいでいる。

最初のうちは一緒に散歩していた兄貴と僕。
たまに一緒に出かけるけれど、今はほとんど別々だ。
だって兄貴の歩調と僕の歩調は合わないし、兄貴が登る木に僕は登れない。
僕も木登りは大好きだけど、兄貴みたいに高い木は無理だ。
兄貴はスズメを追いかけたいが、僕は虫を捕まえたい。
あっちとこっち、同じ方向には歩かない。
僕たちのリードを握るトナは右と左に引っ張られて、「戻って!」と言って動けなくなる。
だから別々に散歩することになったんだ。

知らない所は兄貴がいないと怖いけど、慣れた公園なら、別々でも大丈夫、1人でも怖くない。
公園の中は、どこに行ってもへっちゃらさ。

みんな僕に気がつかないけど、僕はみんなに気がついている。
僕はみんなを下から観察してるのさ。



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