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『赤と青のガウン オックスフォード留学記』

久しぶりに読んだ本のことを書きます。

10代の頃から、「外国旅行記」とか「滞在記」といったジャンルの本が好きだった。

いちばん最初に繰り返し読んだのは、家にあった『天国にいちばん近い島』だったと思う。中学生向けの30冊くらいある選集(全集?)に入っていて、物語の前にニューカレドニアの写真が何枚もカラーで載っており、文中は洗練された線画のイラストの挿絵があって、内容もイラストも気に入っていた。

その後も、藤原正彦の『若き数学者のアメリカ』を読んで「ストリーキングとは何か」を学んだり(それしか覚えていない)、
石井好子の『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』を読み込んで出かけた初めてのパリで、(それしか読んでいかなかったために)本に出てきた「グラティネ(オニオングラタンスープ)」ばっかりあちこちで頼むことになったり、
その反省をもとに2回目のパリに行く前には、玉村豊男の『パリ 旅の雑学ノート』を読んで、ようやく落ち着いた気持ちでカフェで飲み物など頼めるようになったり、
小西章子の『スペイン子連れ留学』を読んで「ジャガイモ入りのオムレツ」を見様見真似で作ってみたりし、
沢木耕太郎の『深夜特急』に影響されてポルトガルの岬まで行った、という人と意気投合して結婚をした。

あ、群ようこの「アメリカ居座りひとり旅」なんかもいいですね。
須賀敦子もこのジャンルに含んでも良いのだろうか。
たかのてるこの旅行記の数々に一番ハマっていた頃には、何度か銀座の担々麺屋さんでお見かけし、一度はお互い食事中にカウンター越しに目が合って、気さくに頷いて下さったのにドギマギして、きちんと反応できなかったのは今でももったいなかったと思う。

他にも・・・旅行記、滞在記、あと「定住記」?かな、とにかく誰かが外国に行ったり住んだりし、そこであった色々な経験を記したり、その国のことを紹介する・・・と言う本が、挙げればキリがないけれども、好きで、好きで、読んで、生きてきました。

20数年くらい前からは、Blogがメジャーになって、さらに接しやすい形で読めるようになり、いくつか、毎日チェックして更新されたら必ず読んでいるページがある。
こちらは基本的に同時進行なので、読んでいるうちに書き手も読み手も年齢を重ねて行くし、小さかったお子さんが大学生になっていたりして、(あちらはこちらのことを全くご存知ないわけですが)、伴走しながら見守るみたいな楽しさがある。

さて、そんな中、最近読んだ本の中でとても良かったと思う本の1冊。

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『赤と青のガウン オックスフォード留学記』
ISBN:978-4569904009
作:彬子女王
出版社:PHP文庫(PHP研究所)
発行日:2024年04月03日
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です。
このところ話題になっている本で、読みたいなぁと思いつつ、文庫にして1,200円と言う価格に怯んで手を出せずにいたのですが、先日久しぶりに行った大きな書店で、平積みになっていたのを手に取ってパラパラとめくってみて、コレは!と思って購入。
とてもとても、面白く読み応えある、良い本でした。

彬子女王殿下は私よりもずっとお若い方ですが、読んだ印象は、自分が昔に読んだ、1970年代くらいの留学記のような感じ。
これはオックスフォード大学大学院や大英博物館といった、伝統ある環境での学びの様子を書かれたものであることと、書き手の個性や、文章力によるものかと思います。

勢いのある筆致というよりは、丁寧に言葉を選んで組み立てられた文章で、書かれているのは、若い人が誠実に、がむしゃらに、学問に取り組んでいく姿。

普通の学生と同じように、慎ましい生活をして、迷いもがきながら、周りの信頼を得て、生涯の友人を作り、大学でいちばん厳しいと言われる指導教授から、「自分のゼミの課題提出を一度も落とさなかったのは歴代の学生の中であなただけ」と言われるくらい努力して、新発見もして、英語で学術論文を書き上げ、博士号を取得する・・・。
失礼ながら皇族の「ご留学」はみんな遊学みたいなものだと思い込んでいた、自分の偏見を恥じました。

お付きの人なしに、初めてお一人で街を歩く時の気持ち、外交パスポートしか持たないため、地方の空港の入国審査で一度ならず足止めされたこと、出かけた先の施設にご自分のお祖母様(三笠宮妃)の写真が展示されているのを見つけたこと、エリザベス2世女王にお茶のご招待を受けたこと・・・と、プリンセスらしいご経験が散りばめられているのも、もちろん、読み手にとっては魅力的。
(個人的にはお父上のことを説明される時の「父ご自身」というような言葉の使い方が、このお立場ならでは・・・!とトキメキを覚えました)

とても清々しい印象の本で、すっかり著者のファンになってしまいました。
今後も再読すると同時に、著者の他の本も探して読んでみようと思います。

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