最近の記事

仏教経済学を読んで

【仏教経済学の思想】 ◯仏教経済学は、全世界の人々の全体としての厚生を向上させることを軸とし、その前提条件として、利己心の極大化を志向するエゴの克服と、自然環境と諸個人の間の相互作用や他者や共同体と諸個人の相互作用を意識することの必要性を説いている。 ◯仏教経済学は、全体の厚生を向上させる方法として、足もとで自由市場主義の犠牲となっている貧しい人々や、自然環境の深刻な悪化に生活を脅かされている人々の厚生を向上させ、格差を縮小させることが、最も効果的と考える。 ◯その具体的

    • IMF World Economic Outlook 第3章(2024/4/16)のメモ

      ◯ 第1章で示されていたような、中長期的な経済成長ペースの鈍化は、労働投入量の減少と資本投入量の減少のほか、全要素生産性(TFP)の減少によってもたらされると分析している。(図表3-4)  ーー GDPの成長率を分解してみると、先進国ではその鈍化の半分が全要素生産性の伸びの鈍化によって説明できるとしている。 ◯ 労働投入量の減少は、①高齢化による生産年齢人口の減少、②労働参加率の減少、③労働時間の減少によって説明される。高齢化と男性の労働参加率、女性の労働参加率の3つの要素

      • IMF World Economic Outlook 第1章(2024/4/16)のメモ

        ◯ 2023年度の経済成長は、2022年10月時点の予想に対して、米国やその他の先進国では、GDP成長、政府と民間の支出、固定資本投資、雇用、労働参加率において上回ったのに対し、低所得国では全てが予想よりも悪い状況になっており、二極化が進んでいる。(図表1-2)   ーー インフレ率については、世界全体のコアインフレは引き締め的な金融環境と労働需給の小幅な緩和、エネルギー価格の低下等に伴うパススルー効果の希薄化によって、見通し通り低下してきている。(図表1-16) ◯ 労働

        • 『なぜ脱成長なのか』を読んで

          ヨルゴス・カリスら著・上原裕美子ら訳の『なぜ脱成長なのか』(2021年)の要約と私の感想を書いていく(敬称略)。 【要約】 ◯ 本書は脱成長を経済成長を求めることをやめ、生活と社会の視点をウェルビーイングに置き直すことを主張する考えと定義している。具体的には、より少ない生産とより少ない消費を実現し、公正な分配を達成する社会や愛情等を実感するほか、自他のケアにエネルギーを注げる共助が実践されている社会を挙げている。 ◯ 経済成長を追求することによる弊害としては二点ある;①自

        仏教経済学を読んで

          岩手旅行

          2024/3/29~3/31の岩手旅行で感じたことを駄文で書いていこうと思う。 【盛岡神子田朝市】 ◯年間310日程度、6:30~9:00頃まで開催している朝市で、地元の人を中心に一部観光客で賑わうスポット。果物や野菜からお茶屋さんやラーメン屋さん、美容院まで何でも揃う朝市だった(ひっつみという郷土料理が美味しかった)。生産者の顔が直接見えるスタイルが基本で、中にはコインロッカーに商品が入っており、お金を入れると買えるという面白い無人販売のシステムもあった。来ている人は、子

          PEファンドのビジネスモデルの倫理的評価

          イギリスが植民地支配を通じて資産を蓄積していた時代に生きたアダム・スミスによれば、海外でたくさんの収益を上げることを進める重商主義的政策に疑問を持ち、豊かさの定義について考えた結果、国内の労働生産性が高いことが豊かな国であると考えた。社会の需要がある商品を作れなければそれは欲望が満たされないという点で豊かとは言えないであろうし、仮に需要を満たせたとしてもそこに多くの時間と労働が投入されていたら、人々の余暇を圧迫してしまう。したがって、社会の需要が満たされる数量を少ない時間と労

          PEファンドのビジネスモデルの倫理的評価