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IMF World Economic Outlook 第3章(2024/4/16)のメモ

◯ 第1章で示されていたような、中長期的な経済成長ペースの鈍化は、労働投入量の減少と資本投入量の減少のほか、全要素生産性(TFP)の減少によってもたらされると分析している。(図表3-4)
 ーー GDPの成長率を分解してみると、先進国ではその鈍化の半分が全要素生産性の伸びの鈍化によって説明できるとしている。

◯ 労働投入量の減少は、①高齢化による生産年齢人口の減少、②労働参加率の減少、③労働時間の減少によって説明される。高齢化と男性の労働参加率、女性の労働参加率の3つの要素に分解すると、先進国では高齢化による労働力の減少幅をを女性の労働参加率の上昇が抑えている状態。(図表3-6)
 ーー 対応策として様々な政策が、労働参加率を刺激すると推計されている。(図表3-7)

◯ 資本投入量は、過去のトレンドからの乖離が進んでいる状態。(図表3-8、3-9 )
 ーー 政府の財政緊縮による1%GDP減少に対する企業の投資減少幅は2%と、経済成長の鈍化が企業投資を一層冷やす姿が確認されたほか、ネット投資額(減価償却後の残存価値/投資額)も減少トレンドにある。

◯ 資本投入量の減少は、トービンのq(企業価値を資本ストックで割り込んだ値、値がqが1以上であれば資本ストック以上に企業価値があることから資本ストックを活用して財を生み出すことが更なる利益の獲得につながる)が減少していることが主因と分析されている。(図表3-10)

◯ 全要素生産性は、もちろん産業間の成長速度によっても低下するが、その影響は3割程度で、残りの7割は産業内の分配の非効率に由来している。そして、産業間の非効率な配分は、財市場よりもサービス市場で大きい。(図表3-11、3-12)

◯ 企業の配分の非効率性は引き続き高い水準に止まっている。もっとも、資本と労働生産性の高い企業に労働力と資本が移動するのには時間的摩擦が生じる。従って生産性の高い企業の勃興当初は、分配効率性の低下が発生する傾向にある。その後、生産性をより早く高めた企業は時の経過とともに資本と労働の移動が起こることでインプットがscale upし、再び生産性は向上する。結果として、配分効率性が長期的なトレンドに戻るまでには9〜11年かかる。(図表3-14)
 ーー ショックに対する一過性的な調整(当初の下落)と、その調整から市場効率性と機関構造の質に対して決まる長期的なファンダメンタルに沿う再配分への回復(下落からの回復速度の鈍さ)までに時間を要するという長期的な構造要因がある。そして前者は1/3、後者は2/3だけ配分効率性の悪化に寄与している。
 ーー 米国はTFPの減少は起こらなかった。その背景には、労働力と資本の流動性が高いので、TFPが増加した。


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