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#48 自信を持って人前で話せる〝メモ活用術〟コトバの選び方の秘訣

今回のテーマは「メモ活用術」です。特に人前で話すときにどのようにメモを活用したらいいのか。

まずは失敗談から。

アナウンサーとして入社して間もないとき、千葉県房総半島から台風中継をしました。中継のときの原稿は、現場で僕が書いて、それを東京の本社にメールで送って(今はもう携帯でささっとLINEとかでもやっていますが)、そのチェックを受けた原稿がまた現場に戻ってきて、で、それを読む、というのが通常のパターンになります。

しかし、現場がわちゃわちゃ動いてるときは、そこまで落ち着いて原稿の往復なんてできないので、ある程度現場の裁量に任されることがあります。

特に台風の場合は、目の前で暴風が吹き荒れ、さらに自分がそこに巻き込まれていると、いちいち書いて送ったりする時間がないんですね。しゃべりのプロのアナウンサーが行ってるのだから、情景描写などは任せた!となるわけです。

ある日の台風中継で、僕は新宿の駅前から中継をすることになりました。その中継の直前に、友達から西新宿の高層ビルのエレベーターが強風のために止まっているという話を聞いたんですね。

これは表に出てないリアルな情報だと、原稿に盛り込もうと思ったのですが、もう中継が始まる。5分前とか10分前とかだったんです。しかも雨もすごいからいちいち原稿を書き直してられないわけです。だから、自分が最も話したいことだから大丈夫だろう、と思って原稿に書かなかったんですね。

そして中継が始まりました。

まるで放送事故な事態に

自分が話したいことは時間がなくて書けなくて空白にしておいたのですが、あんなに話したかったことなのに、頭が真っ白なってしまったんです。もう放送事故です。全然思い出せない

自分が「そして、そしてですね」みたいに話を繋げてしまっているものだから、スタジオも割り込めないわけです。例えば、キリのいいところで切れていればスタジオが「はい、ありがとうございました」みたいにひきとってしまうのですが、何か僕が話そうとしてる、しかし何を話したいのかもわからない、だから、ずっとそのまま沈黙の時間が流れてしまいました。
その後思い出して話したものの、だいぶ長い時間沈黙でした。

お台場に戻ってから中継を見直してみたら、1分弱黙ってしまっていました。

その放送を受けて先輩のアナウンサーに言われました。とにかく時間がなくて、原稿が用意できなかったときは箇条書きでもいいから話したいポイントをきちんと書いておきなさい、と。どんなに大ベテランのアナウンサーでも中継でカメラの前に立つときはそうしているのよ、と言われました。

すなわちどういう教訓かというと、原稿を一言一句びっしりと書いて、きちんとしたものを覚えて話そうとすると、どこかが飛んでしまったときに繋がらなくなります。そして自分自身も混乱してしまう。ぐちゃぐちゃになってしまう。

ただ、ポイントをきちんと押さえておけば、その後の間の話は意外とどうにかなるんですよね。まず自分が練りに練って考えていた原稿だったら、逆にポイントさえきちんとメモに取って見るようにすれば話せるようになるんです。

ポイントさえ押さえておけば伝わる

voicyを始めたとき、初めの頃は原稿を書いてしまっていました。「元アナウンサー」なんて自分でタイトルにとってしまってる以上、下手な配信はできないな、なんて思って。でも近しい人から「つまらない」って言われたんです。「伝わってこない」と。結構手厳しいご意見をいただいて「もっと自然にラジオっぽくやってみたら」って言われて、ここで思い出したわけです。そっか、ポイントさえ押さえておけば話せるな、と。

その後「箇条書き」のスタイルをとって、メモ活用術と言っておきながら、実際はいまは何も手元なしで話していますが、話す前に、こういう順序で話そう、これだけはきちんと話そうということを頭の中できちんとメモとして用意してあります。ポイントをきちんと押さえているんです。

すると、自分の中でこの筋道立てて考えてた内容で言葉は意外と出てくるものなんです。ポイントは、話したいことをきちんとポイント、ポイント、これらを箇条書きで書いておく。

お仕事でプレゼンとか話されている方も多いと思いますが、一言一句原稿として書いてしまうと、どうしても棒読みになってしまいます。しかし、伝えたいポイントのみをちゃんと書き出しておけば、あとはどうにか繋がっていきます。

たとえちょっとつまずいたり、滑舌が悪かったりしたとしてもきちんと相手の心に届きます。

それを繰り返していくうちに、今度はもう書かなくても頭の中でちゃんとそうしたメモ的要素が残るようになるんです。

そして、ちょっとメモ活用術から離れますが、緊張しちゃったりすることありますよね。でも緊張するのは当たり前なんです。僕だっていまだに人前で話すときは緊張します。失敗してしまったら…など、いろいろ考えます。でも、詰まったりしても、例えばはたからどう見ても緊張してるように見えても、「伝えよう」という意志さえあれば伝わるし、要点をきちんと押さえた話ならば、より心に残るので大丈夫なんです。

(voicy 2022年6月30日配信)


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