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「コンビニ人間」 村田沙耶香著

Audibleで2022年の売り上げランキングに掲載されていた。芥川賞受賞ということで気になりライブラ追加してダウンロード。移動中に聞き終えた。

主人公である恵子は生活リズムの全てがコンビニ中心に考えている。そんな恵子は、白羽の提案で18年間アルバイトとして働いたコンビニを辞めることになるのだが、何のために食事をするのか、何のために眠るのか、何のために身だしなみを整えるのか、全てを見失ってしまい、いつ寝ているのか、いつ起きているのか、何も分からない状態になってしまう。
ここまでくると極端かもしれないが、しかし我々自身に置き換えてみると、意外にも恵子と似ている部分があるのではないか、という視点も出てくる。例えばサラリーマンであれば、コロナ禍により多少の柔軟性は生まれたものの、日本においては、決まった時間に職場に行き、残業がなければ決まった時間に退社し、決まった時間に食事を摂り、週末は余暇などを楽しみ、お盆や年末年始は長期休暇があり、など、ほぼ決まったルーチンである。何のために働くのか、などをあまり考えることはないだろうし、考えもしない。そう考えると、程度の差はあれ、我々も恵子と同じなのではないか、というふうにも思えてくる。

恵子はコンビニを中心とした生活でしか世の中を見られないため、その視点から見る世の中は非常に新鮮に見える。恵子は18年間コンビニでバイトをして生計を立てている。未婚であり、恋愛経験もない。恵子の妹や恵子の昔からの友人たちは恵子の状況を奇異な目で見る。妹に至っては、姉は病気か何かであるから、カウセリングに行こう、などの提案もする。しかし、冷静に考えると、なぜなのか? とふと考えさせられる。
なぜずっとコンビニでアルバイトをして生きていくことがそれほどまでに奇妙なことなのか。なぜ恋愛経験のあるなしがそれほど重要なのか。結婚は義務ではないのに、未婚であることがなぜこれほどまで問題視されるのか。白羽が言う「現代は機能不全世界なんですよ。生き方の多様性だなんだと綺麗ごとをほざいているわりに、結局縄文時代から何も変わってない。少子化が進んで、どんどん縄文に回帰している、生きづらい、どころではない。ムラにとっての役立たずは、生きていることを糾弾されるような世界になってきてるんですよ」

コンビニという非常に身近な存在を中心として描かれる物語は、活動範囲こそ狭いものの、我々の日常を恵子と白羽の視点で見ることで、普段は何気なく思っていることに疑問を投げかけてくれている。

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