なぜ灯す屋が『ちゃわん最中』をやるのか
おかげさまで「ちゃわん最中」は灯す屋の商品として、地域のまちづくり界隈の方たちに少しずつ認知されてきたように思います。また一般のお客様の間では、お土産品や贈答品というだけでなく、茶碗型の最中の中に自分で餡を詰めて、好きなアレンジを加えられる、作る過程も楽しんでいただける商品になってきました。
ご存じの方もいるかと思いますが、ちゃわん最中は昭和から平成の初めまで、佐賀県有田町の「春陽堂」という菓子屋で製造・販売されていた同名の銘菓を復刻した商品です。菓子屋ではない灯す屋がこの商品を復活させたことは色々な意味で意義のあることだと思いますし、これをこの先どのような形で展開していくのかがこれから重要になってくるのかなと思っています。
さて、今日はなぜ灯す屋がちゃわん最中をやるのか、という話です。
ちゃわん最中との出会いは、春陽堂の空き家をオフィスとして使ったことがきっかけですが、一度途絶えた幻のお菓子を現代に蘇らせるって、考えただけでワクワクしますよね。そしてめちゃくちゃチャレンジングなことでもある。おもしろそう!というのが最初のスタートでした。
ちゃわん最中が途絶えてしまった理由は、時代の流れからも様々なことが想像されますが、復活させるにあたって、昔のものと同じ味や形で作り直すことは全く考えませんでした。見た目も華やかで口当たりの良い洋菓子が身近になった今、ただでさえ手に取る機会が減ってしまった和菓子の最中。そのままあんこを詰めて売れるだろうか?どうしたら手に取りたくなる商品になるのか?頭を絞りました。
最終的に商品を魅力的なものにするためには、リアルな茶碗型の最中と洗練されたパッケージデザインが必須で、さらに私たちが何か美味しい中身を詰めるのではなく、手に取った人が自分で好きなものを入れられたり、中身を詰める過程を誰かと一緒に楽しめる、そうした余白や機会を作ることだ、と思い至りました。こうして餡と皮を別包装にして、「中に何でもお好きなものを入れられます」というコンセプトで売り出すことにしたのです。
ちゃわん最中という商品を唯一無二の存在にしているのが、ちゃわん最中が有田で生み出され、販売されていたという歴史的背景。茶碗の形をした最中は他でも作ることができるかもしれませんが、灯す屋のちゃわん最中は、昭和期に有田に存在したお菓子を受け継いだもの。そうしたストーリーを持つ商品はほかにありません。そしてこうした背景があったからこそ、町のひとたちも復活を喜んでくれたのだと思います。
ちゃわん最中プロジェクトは、次の3つを基本方針にしています。
① 地域を愛し、地域に愛される
地域の文脈を読み解き、その土地の文化や歴史を尊重した上で、現在と未来を見つめる
② 驚きとワクワクを与える
既存の概念にとらわれず、多様な視点をもって未来につながる新たな価値を生み出す
③ 誰もが関わることができる
買う、売る、贈る、受け取る、作る、食べる、コラボレーションする、商品を作るなど、様々な関係性を作る
ちゃわん最中は、灯す屋の考える「まちづくり」を体現している商品でもあります。
誰もがおもしろい未来を描ける社会をつくりたい。
おもしろい未来を描きたいと思っている人たちの背中をそっと押したい。
そのために灯す屋はちゃわん最中をやっているのだと思います。
【ちゃわん最中について】
https://tomosuya.com/chawanmonaka/