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ウルトラマンブレーザーがそれでも「男臭く」ならない理由

*ウルトラマンブレーザーはいいぞノ

仮面ライダーや戦隊シリーズと並ぶ、特撮ヒーローものとして長らく続いているシリーズといえば、やはりウルトラマンですね。
そのウルトラマンシリーズ、今年度の最新作『ウルトラマンブレーザー』が、この2023年7月から放送されています。

→ テレビ東京番組サイトより
 https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/ultraman_blazar/
→ 円谷プロ公式サイトより
 https://m-78.jp/videoworks/ultraman-blazar/

そして端的に言ってこの『ウルトラマンブレーザー』、ものすごくよくできていてオモシロイです。
特撮は精緻に工夫されていて見応えがあるし、非特撮パートの演出もまた趣向が凝らされています。物語も丁寧に練られていて捻りも効いており、キャスト陣の演技もそれとの相乗効果で光っており、じつに深いドラマが展開されることとなっています。

まさにゴールデンタイムのドラマにもまったく引けを取ることはない、大人の視聴者を飽きさせない地力に溢れた作品です。
むろんマーケティング上のメインターゲットである子どもたちの心もガッチリ掴んでいると見受けられます。

さて、そんな『ウルトラマンブレーザー』なのですが、それではジェンダー観点から評価した場合には、はたしてどのような具合となるのでしょうか
(当記事は2023年9月16日放送の第10話までの視聴に基づいて執筆しています)。


*ウルトラマンは「相撲」

ヒーローものの男女共同参画の度合いということで言うと、ウルトラマンシリーズは、元よりかなり困難な構造を抱えています。

例えば戦隊シリーズならチームであるので女性メンバーを増やすハードルは低いです。
かつては「紅一点問題」も指摘されましたが、近年は質量ともにそのあたりの工夫が行き届いたつくりになっています
(その最新の到達点が、前記事で紹介したキングオージャーだということになりましょう)。

その点、仮面ライダーは基本的に1人。
いわゆる平成ライダーシリーズ以降の各作では主人公が変身するメインのライダー以外にも複数の仮面ライダーが登場するのが常道にはなっていますが、いわば「メンバーが1人のチームが複数」という位置づけであり、そのあたりは戦隊ヒーローとのニュアンスの差は大きいです。
ただ、それでもここ数年は女性変身者の仮面ライダーもきわめてナチュラルに登場するようになりました。
主人公ライダーである『ストロンガー』とともに戦う仲間であるはずの「電波人間タックル」が仮面ライダー扱いされず名実ともに一段低い位置に置かれていたのも、もはや昭和のいにしえ。
平成シリーズの『龍騎』に登場した「仮面ライダー ファム」が、その名のとおり「女性であること」が殊更にフィーチャーされ、いわば女性であることが最大の特徴であるかのようにも見える扱いだったのさえ、令和の今日となってはいささか古い感じが漂うようになっていたりします。
もはや女性変身者であっても別段の特別感はない。作中で誰かが仮面ライダーに変身することになったとして、ソコに性別は関係ない。そういう世界観がスタンダードになってきたと解せます。いちおうマーケティングの事情でメイン主人公変身のライダーだけは男性になってはいても、作中ではもう「男女」にかかわらず仮面ライダーになりうるのがフツーなわけです。

と、なると、ウルトラマンでも同様にできるのではないか……?
理屈の上ではそうかもしれません。しかし、仮面ライダーと違って巨大ヒーローであり、設定的には遠い星からやってきた宇宙人。その姿形の基本フォーマットゆえか「女性のウルトラマン」をヒーローとしてカッコよくデザインするのはなかなか困難を極めます。
実際、今までにも女性のウルトラマンという設定で登場したケースはいくつかあるものの、例外的な存在という雰囲気は濃厚でした。
近例である『ウルトラマンルーブ』での「ウルトラ(ウー)マングリージョ」にしても、作品全体としてはいろいろ画期的な取り組みで、なかなかの平成クォリティだったと評価できるところは多いのですが、それでもグリージョを「女性のウルトラマン」についての最新解答として採点するなら、公平に見て「やっぱり難しいかナぁ;」という印象を再確認する結果になったというコメントが出ても致し方ないところは大きいでしょう。

※劇場版『ウルトラマンデッカー最終章』に登場の
「ウルトラマンディナス」などについては後述

そんなわけなので、各シリーズの男女共同参画の困難度をスポーツに例えるとしたら、戦隊シリーズはバスケットやバレーボールなど。
まぁ男女ともに各々競技は広くおこなわれています。

それに比べると仮面ライダーは野球。
野球も「男のスポーツ」というイメージは根強いです。
が、そんな中で、最近はようやく女子硬式野球も盛んになってきて、高校生の全国大会が甲子園球場で開かれたりしています。そういう現状とも上手いこと照応しているかもしれません。

そしてそのデンで行くとウルトラマンは相撲。
まさにいくつもの因習的なしきたりが絡み合い、女性の参画は多くの障壁によって妨げられているのですね。
思えば、そもそもウルトラ「マン」と最初にしてしまったのが、この観点から往時を振り返ったときの第一のボタンの掛け違いな気もしてきます。

ちなみに、女の子がカッコよく変身してヒーローとして爽快なアクションで戦うのに最適なフォーマットとして発明されたものをこの20年発展させてきたのが「プリキュア」だと言えたりもするでしょう。
スポーツに例えれば女性性にアドバンテージがあるフィギュアスケートとかアーティスティックスイミングあたりに当てはまることになるのでしょうか。

 → 『劇場版 ウルトラマンルーブ セレクト!絆のクリスタル』最新公式PV
 https://youtu.be/idRdo06uTl8?si=S15DGHAmzr7CnqdP&t=58

*しかし工夫はされているウルトラマンシリーズ

そんなわけでウルトラマンシリーズは、うっかり作ってしまうとジェンダー的にいろいろ問題含みになってしまう、いわば「男臭く」なってしまい易い、そういう基本構造を抱えていることになります。
しかし、近年の制作側がその点を認識していないわけでも、決してありません。
そうした基本構造に加えて、マーケティングの都合上のスポンサーからの要求などがせめぎ合う中でも、可能な工夫はさまざまにおこなわれてきました。

ウルトラマンシリーズの作中には、遠い星からやって来た巨大ヒーローのウルトラマンとは別に、怪獣や異星人の侵略に対処するために地球人が組織したチーム、つまり初代『ウルトラマン』での「科学特捜隊」を筆頭とする、いわゆる怪獣防衛隊が設定されるのが定石です。
この防衛隊のチームの中で女性隊員を活躍させることは、すでに当たり前になって久しいでしょう。

近作では戦闘機やロボットといった対怪獣メカの操縦の主担であるケースも見受けられます。
各種の特殊技能を活かして任務にあたる展開も然り。
生身の戦闘力でも、例えば格闘技の有段者だという設定になっていて、それが必要なシチュエーションへの対処にも支障がないように描写されることは珍しくないでしょう。
しこうして、なにがしかの公的組織の中で女性メンバーがその個々の特性を評価され適切に能力を発揮する場を確保されている様子が、現実世界にはまだまだ保守的な因習も残っている中では、今後の社会のありようについての望ましいモデルケースを描き出して見せる予示的政治として機能しているとも言えましょう。
防衛隊の隊長として女性リーダーが登場した事例なら1990年代まで遡ることができるくらいなので、この点は相当に意識して制作されているのは疑いありません。

ただ、この防衛チームの存在は両刃の剣でもあります。
なんといっても公的機関。公の使命を遂行するために設置された組織です。
現実世界ではまだまだそうした公的組織というのは「男社会」であり「男性ホモソーシャル」な特徴を脱しきれていません。
なので、作中にそうした公の機関を設けることは、どうしてもそれら現実の「男臭く」なりうる要素を呼び込んでしまうリスクとも背中合わせなわけです。

※本記事では、そうした「男社会」「男性ホモソーシャル」的な特色を醸し出してしまうことを、便宜上[「男臭く」なる]と表現しています。普遍的な言い回しではありません。ご留意ください。

実際、おおむね平成以降の各作は上述したとおりですが、昭和の作中だと女性メンバーは通信などの補助業務、あるいはお茶くみといったケア役割が主たる任務であるという気配が相当に色濃いつくりでした。
当時は、現実の会社社会における女性社員の扱いがそういうものであり、それが当然という通念も卓越的だったでしょうから、そうした現実がイノセントに反映されてしまったのでしょうか。
他にもかつては男性主体の物語の中に少数配置される女性キャラのメタ的な役割として「敵に捕まって人質になり主人公らの足手まといになる」があてがわれるケースなど当時のいろいろな作品でままあったでしょう。あと男性主人公らにとっての恋愛対象とか、もっと直截的に言えば作中でもメタ的にも「お色気担当」とか(この場合、作中での男性陣によるセクハラ的な言動も肯定的に描かれてしまったり)。
かくして、女性が男性中心主義の中で周縁化されてしまう様子が描かれた作品がひとつまたひとつ出来上がる……。
ウルトラマンシリーズでジェンダー的に気になるポイントが何かといえば、女性主人公・女性変身者がいないことよりも、むしろこっちのほうだった、というのも一面の真理です。

そこで、ここ10年ほどは、この怪獣防衛隊を作中に設定しない(もしくは大きく前景化しない)という方策をとる作品も現れました。
これにより、高校生が主人公の学園モノ風のウルトラマン作品が実現するなど、斬新な路線が可能にもなりました。
このことは、どうしても任務遂行の建前に縛られる公的組織と異なり、主人公らが大切な仲間とともに暮らす日常を守るという行動原理とも親和的です。結果、いわゆる男性的な正義の論理ではない、女性的とされる「ケアの倫理」による問題解決も描かれやすくなったことでしょう。
前述の『ウルトラマンルーブ』も、ストーリーは家族の絆にフォーカスしたもので、主人公兄弟はあくまでも民間人でした。そして、敵として登場する謎の少女と主人公兄弟の妹との交流という、女性どうしの関係性の進展が物語の重要な主軸ともなっていました(そこで育まれた友情が劇場版でのウルトラマングリージョへの変身にも繋がる流れ)。
このように、社会の私的領域に軸足を置いた生活者主体のドラマが重んじられるようになったというのもまた、ウルトラマンシリーズの時宜に合わせた適切な進化と言うべきです。

このあたり、以前にも述べたコチラなども参照していただけると幸いです。

 → ウルトラQはウルトラマンよりも新しい!
 [佐倉智美のジェンダーあるある研究ノート]
 https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2016-07-03_QthanMan

 → [4:ウルトラマンの斜陽とギンガの挑戦]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難
 [佐倉智美のジェンダーあるある研究ノート]
 https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2014-05-04_PC4-UltraGinga


*大丈夫か『ブレーザー』!?

と、いうことで、2023年度のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンブレーザー』です。

ここ3年ほどは怪獣防衛チームがガッツリ登場する路線が復活してきてはいたのですが、それは、上述のような、たとえそうしたとしても「男臭く」ならないためのノウハウが、以前にも増して充実し盤石となってきたからという理由がひとつ大きいです
(まぁそのほうがウルトラマンらしいという声も無碍にはできませんし、ぶっちゃけ防衛隊描写に予算がかけられるようになったという制作事情なんかもあるのでしょうが…;)。

とはいえ『ブレーザー』の事前情報をチェックした際には、いささかの不安も禁じ得ませんでした。
『ブレーザー』における怪獣防衛隊は、まずは元締めとして「GGF(Global Guardian Force)」という国際的な地球防衛隊の組織があり、主人公らが活躍する前線となるチーム「特殊怪獣対応分遣隊・SKaRD(スカード / Special Kaiju Reaction Detachment)」は、その日本支部の下に設立された特殊部隊だという位置付けです。

これは近年の3作に比しても、組織の規模感が並々ならぬ大きな印象です。
大きさだけではなく雰囲気も、その佇まいにどことなく厳格な雰囲気が醸し出されています。
「SKaRD(スカード)」にしても、組織の中で忠実に使命を果たすべき精鋭部隊という色彩が増しているのではないでしょうか。
そして物語はこの「SKaRD(スカード)」を主軸に展開していくらしい……。

これではどちらかと言えば、明るく楽しいヒーローものと言うよりは、なんというかすこぶるシリアスな難プロジェクトに対峙する組織マネジメントドラマっぽい。
事前に公開されたPVでも、そういうテイストが前面に打ち出されてアピールされていると受け取れます。
これは、一歩まちがうとものすごく「男臭く」なってしまいかねない、そういうルートに振れているように思えます。
はたして大丈夫なのでしょうか!?

 → 新番組『ウルトラマンブレーザー』本篇映像先行ダイジェストPV
 https://www.youtube.com/watch?v=EF0H6sCUCWE


*『ブレーザー』大丈夫だった!

しかし杞憂でした。
蓋を開けてみれば上述したような点もまったく視聴していて気になるような演出にはなっていません。全体としてしっかりバランスが調整された構成になっています。
いわば、ここまで公的組織を前景化したとしても、それでも「男臭く」はならないように作劇できる、その自信がある、確証があるがゆえの舞台設定だったのでしょう。

「SKaRD(スカード)」のメンバーは5人で、一般的な通念に即して男女比を見ると、女性隊員は2人です。
なのでまず数の上での紅一点問題は、少なくとも最低ラインはクリアできている形です。
そして質の面。これがじつに周到に練られていて、盤石な態勢となっています。

[ミナミ アンリ]隊員は空手の有段者であり徒手格闘を要する任務にも難はありません。
工学系の学歴を持ち、メカに強く、クルマ関連もお任せあれ。SKaRDの対怪獣装備である怪獣型巨大ロボットの操縦だって担います。

[アオベ エミ]隊員であれば、諜報のスペシャリストという専門技能持ちであり、危険な潜入捜査を巧みにこなすエピソードも描かれます。
それゆえにイザというときの対人戦闘にも遺漏はなく、銃火器の扱いも手慣れたものです。てゆかアクションシーンがめっちゃシブくてカッコよすぎ!!
さらにはこともなげに怪獣の至近から対怪獣バズーカを撃って急所へ命中させる姿も。

このあたりに鑑みると、女性隊員だからと男性隊員よりも劣った存在として一段低い地位で取り扱われているようなことが全然ないのは明白です。
……いゃ、それはもうわかっていました。
もはや女性だというだけで通信やお茶くみという補助・ケア役割しか回ってこないのがOKな時代ではなくなって久しいのです。
ただ『ウルトラマンブレーザー』での描写は、それよりもさらに一皮むけた感じなのです。
そういう小難しいことを考えさせられるきっかけすら感じさせない、きわめてサクっとナチュラルに提示されている。それだけ、もう「そんなん当たり前やん」というコンセプトに則られている。そんなところでしょう。
なるほど。まさに令和クォリティ!

もっと言えば、性別なんてものは各キャラの特性として第二義的なものでしかない。
誰が女性で、男性は誰か、なんてことがあまり問題にならない、関係ない。
そういう世界観が敷かれている。
このように捉えることも可能でしょう。

ですから、「SKaRD(スカード)」の男性メンバーにあっても、いかにも昭和のステレオタイプに準拠したような男らしさを纏わせたキャラ付けはきちんと避けられています。
当然、女性メンバーへのセクハラ行為なんてのも皆無です。

頼れる副隊長でもある[ナグラ テルアキ]氏は、意外なところでギャグ担当になったりしています。

[バンドウ ヤスノブ]隊員もまた、関西弁をまじえた柔らかな物腰の好青年であるばかりか、ある種の「ぬいぐるみとしゃべる人」属性を隠し持っていたりする、なかなか絶妙な塩梅の濃さのキャラです。

そして[ヒルマ ゲント]隊長。
こちらが本作での「ウルトラマンブレーザー」への変身者なのですが、従来は怪獣防衛隊の中でも若手のメンバーが主人公にしてウルトラマンへの変身者なのがシリーズの定石だったところを、今般はかように隊長を持ってきたのが新機軸だという点は、すでにほうぼうで指摘されています。年齢は30代。
しかして家族として妻と子がいるという設定も良い味を出すことになります。
オフの日には家族サービスを怠らない。子どもとも意識的に係るように努めていたり、家事を分担している様子なども登場します。
きちんと「守るべき日常」があり、決して組織の論理だけに染まって任務を粛々と遂行する人ではないというのは、やはり今どき重要なキャラ付けとなるでしょう。物語に深みが出ますし、怪獣防衛組織の正義の論理と、誰も犠牲にせずに大切なものをすべて守らんとする「ケアの倫理」との葛藤をつうじたドラマトゥルギーは、今日の視聴者が求めるところでもあるでしょう。
その意味でも隊長さん、期待の主人公ですね。

*やっぱり時代は「ケアの倫理」

実際、こうしたメンバーをメインにした物語は、防衛隊の方針を絶対化することを避け、「正義とは何か?」「ヒーローは何をなすべきか??」といったテーマを問うものとなっている場面も多いです。

例えば第10話の「防衛隊はあくまでも出現した怪獣を脅威とみなして殲滅しようとしているが、じつは怪獣は自分の赤ちゃん怪獣を防衛隊の攻撃から守ろうとしているだけではないのか」というエピソードは、その真骨頂のひとつでした。
あるいは第5話の、防衛隊が新兵器の実験・演習場を、地元の山の守り神として信仰の対象だった怪獣が眠っている場所の真上に設けてしまったために、その怪獣が覚醒して暴れ出してしまう、なども同様でしょう(第5話はミナミアンリ隊員の出身地を舞台に幼馴染との再会が描かれる「女どうしの友情」の再確認回、いわばプチ「百合」回でもありました。このあたりも意義深い)。

かつての『ウルトラセブン』の中でも、いろいろ考えさせられる内容であるがゆえに名エピソードと評価されているのが、いずれも「後味悪い回」である(「超兵器R1号」とか「ノンマルトの使者」とか)のは、往時は「人類の危機を未然に防ぐためにも脅威は排除するしかないという地球防衛軍の論理」以外の選択肢を可能にする作劇が発明されていなかったからなわけです。
しかし今日ではプリキュアシリーズなどの取り組みによって、「ケアの倫理」的な解決のバリエーションも増えました。
そんな令和クォリティの時代の最前線のウルトラマンシリーズ『ウルトラマンブレーザー』は、さて、この後どのように明日を導いていってくれるのでしょう。
刮目して見届けたいところですね
(「ケアの倫理」をめぐっては以下なども参考にしてください)。

 → 正義の怒りをぶつけろガンダム!? からの「必要なのは剣じゃない」
 [佐倉智美のジェンダーあるある研究ノート]
 https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2019-04-27_Gundam40J

*余話:本当に「ウルトラマンは相撲」なのか?

ところで、女性主人公・女性変身者のウルトラマンが難しいという件、本当にそうなのでしょうか。
じつは特定のレギュレーションに囚われているだけだったりはしないでしょうか。

例えば「機動戦士ガンダム」シリーズであれば、たしかに「女性的」なイメージのデザインのモビルスーツも存在しないではないですが、女性パイロットの搭乗機が必ずそうでなければならないなんていう制約・お約束はありません。
実際、「初の女性主人公ガンダム」として話題になった『水星の魔女』の主人公であるスレッタ・マーキュリーの愛機「ガンダム・エアリアル」も、殊更に「女性的」っぽいものではまったくなかったです
(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』については、こちらもご一読を)。

 → 偉いフェミニストの先生、水星の魔女を観ましょう
 [佐倉智美のジェンダーあるある研究ノート]
 https://stream-tomorine3908.blog.ss-blog.jp/2022-12-05_GundamMercury

このことは、女性仮面ライダーのデザインでいろいろ試行錯誤してきたであろう仮面ライダーシリーズでも、ある段階で思い至ったようで、特に令和以降は女性ライダーのデザインメソッドが洗練されてきている印象です。

となれば、ウルトラマンシリーズにおいても、その発想に則ることはできるでしょう。
特に「ウルトラマン」とは、シリーズ各作で若干の違いはあるにしても、遠い星からやってきた「光の巨人」と地球人の若者が融合した存在だという設定が多数派です。
つまり[ M-78星雲の彼方から飛来した光の巨人・ウルトラマンは地球上では3分間しかその姿を維持できず平常時は科学特捜隊ハヤタ隊員と一心同体となって地球人の姿で暮らしている・イザというときだけベータカプセルの輝きによって巨人の姿に「変身」する]というアレですね。
となれば、主人公となる地球人の側が「女性」であったとしても、ウルトラマンのほうは「男性」だというのもアリでしょう。この方式が使用可能という視点に立てば、むしろ仮面ライダーよりもウルトラマンのほうが女性変身者を設定するうえでアドバンテージがあることにもなります。
思えば『ウルトラマンエース』で男女2人のペアが1人のウルトラマンに変身していたのはこの方式の嚆矢だったと言えなくもないですね。今にして思えば、あの時代には早すぎる設定だったのかもしれません。
逆に言えば、令和ならゼンゼンOKとも考えられます。

ともあれ、設定の細部はさておいても、「変身者は女性だが、変身後のウルトラマンは特段の女性っぽいスタイルではない」でもイイじゃん! となれば、可能性はいろいろ広がります。

そして、現に劇場版限定であれば、その実例、なんとすでにあったのです。
それが劇場版『ウルトラマンデッカー最終章』に登場した「ウルトラマンディナス」。
変身者はラヴィー星人の女性・ディナス(ラヴィー星人なんていう異星人に地球人と同じジェンダー観を適用できるのかどうかってのもありますが、まぁココは便宜上; てゆかソレ言い出したら全部そうなので)。演ずるのは中村加弥乃さん。
で、変身後のウルトラマンディナスの姿形を見ると、これはもぅ端的に言って「普通のウルトラマン」ですね。変身者が女性だという点は特に考慮されていないデザインです。
ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので。

しかもこのウルトラマンディナス、いちおう主役はウルトラマンデッカーのほうなので見せ場を譲る意味もあって、若干は戦闘力を低めに描かれているものの、その理由がラヴィー星人はそもそも(性別にかかわらず)格闘などが苦手な種族だからという設定になっているとのこと。
変身者が女性だから弱い、というミスリードを避ける工夫も織り込まれているのは非常に行き届いていると評価できます(「グリージョ反省会」の結果が余さず反映されている??)。

というわけで、このウルトラマンディナスの前例は、今後へ向けての大いなる橋頭堡だと言えましょう。
女性変身者・女性主人公のウルトラマン、将来のテレビシリーズでの登場を期待して待ちましょう。

 → 最新予告篇『ウルトラマンデッカー最終章』
  新たな姿の巨人は「ウルトラマンディナス」!
 https://www.youtube.com/watch?v=HV332w_1yZE

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