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SNSカウンセリングの専門家と対談──遠慮なく思いを話せる関係性が不安・孤独を解消する



Tomopiia(トモピィア)は、がんで不安や悩みを抱える方が看護師と個別対話できるサービスです。不安や孤独を解消する一助になるべく、日々活動を続けています。

今回お越しいただいたのは、SNSカウンセリング及び心理療法の専門家である宮田先生。Tomopiiaが「SNS看護」という新たな領域でのチャレンジを進める中で、これまで数多くのアドバイスをくださりました。

本記事では看護師の統括を務める十枝内綾乃が、「看護師がSNSをつかった対話でサポートすることの意義」について宮田先生と語り合いました。

不安や孤独を抱える方にとって、Tomopiiaが果たす役割とは何なのか。ぜひ対談の様子をご覧ください。

プロフィール
宮田 智基(みやた ともき)
帝塚山学院大学大学院 教授
(公財)関西カウンセリングセンター講師
公認心理師 臨床心理士
精神科臨床、学校臨床(中学校・高等学校)、学生相談臨床(大学生)、産業臨床(企業のメンタルヘルス)に従事し、様々な年齢層のクライエントのカウンセリングを行ってきた。対人関係精神分析、統合的心理療法、SNSカウンセリングを専門としている。現在は、帝塚山学院大学大学院にて、公認心理師・臨床心理士を目指す大学院生の教育に携わっている。また、関西カウンセリングセンターにて、社会人向けのカウンセリング教育を行っている。
著書:「SNSカウンセリング・ハンドブック」(共著)、「SNSカウンセリング・ケースドブック」(共著)、「SNSカウンセリング・トレーニングブック」(共著)、「対人関係精神分析の心理臨床」(共著)

Tomopiiaで採用する「SNSカウンセリング」の特徴

十枝内:先生にTomopiiaへのアドバイスをお願いしたきっかけは、宮田先生の書かれた書籍でした。SNSを活用したカウンセリングの専門家を探していた時、最初に目に飛び込んできたのが宮田先生だったんですよね。それを見て熱烈なメールを送らせていただきました。

宮田:十枝内さんからのメール内容はもちろん、実際にお会いした際もその熱量が伝わってきました。しっかりとした想いを持って相談者に接しておられることがわかったので、喜んでTomopiiaの活動に関わりたいと思いました。

十枝内:私も宮田先生の姿をお写真で見た時に「絶対にいい人だ!」と感じました(笑)。今日はTomopiiaが提供するサービスとSNSカウンセリングの共通点に触れながら、SNSを使ったコミュニケーションの価値を考えたいと思います。まずは、SNSカウンセリングとは何か? の説明をお願いしてもいいですか?

宮田:SNSカウンセリングは、LINEなどのSNSを用いたカウンセリングの総称です。SNSという多くの人達が慣れ親しんでいるツールで相談を受けつけたことで、相談への敷居が下がり、相談件数が大幅に増加しました。スマートフォンから気軽に相談ができるというアクセスのしやすさが、最大の魅力だと感じています。

十枝内:LINEのチャット機能を使う以外、対面カウンセリングとの違いはありますか?

宮田:カウンセラーの基本姿勢は、対面でもLINEでも変わりはありません。相談者の心情に共感的に寄り添い、相手の状況や心情を少しでも理解したいと願って話を聴きます。ですが、LINEでは、文字によるやりとりのみになりますので、お互いに、相手の心情がつかみにくくなります。相手がどのような気持ちでいるのか、どのような表情や口調でこの言葉を発しているのか、より想像力を働かせる必要があります。

十枝内:対面の場合も同じだと思いますが、最初の関係性作りは工夫が必要ですよね。Tomopiiaでは看護師が自己紹介をする時に人となりが伝わる内容を入れ、『この看護師さんと話したい』と、まず思っていただくこと、そして、相手のメッセージの中から相手が興味を持っていることや、話したいと思っているであろう言葉のポイントを見つけるようにしています。

言葉の蛇口をひねる、と私はよく説明するのですが、そこで相手が一気に話し始めて会話がスムーズになると最初の心の扉は開けたような感覚です。

宮田:相手の関心事に関心をよせること、相手が話したいと思っていることを遠慮なく話せるようにサポートすること、そうした関わりの中で信頼関係を形成することは、SNSカウンセリングとTomopiiaのサービスでも共通していますね。ではどこが違うのかというと、対話する相手がカウンセラーではなく、看護師という点です。このテーマをもう少し掘り下げていきましょうか。

病院でのフォローを難しくする「枠組み」の問題

宮田:Tomopiiaのサービスは、LINEを使って看護師と対話ができる点が魅力です。闘病中の方だけでなく、寛解したものの不安が尽きないという方は多くいらっしゃいます。十枝内さんは過去の看護師経験から、がん治療を経験された方は、どのような悩みを抱えることが多いと感じていますか?

十枝内:がんの痛みは身体的なものもあれば、仕事やお金に関する悩み、人間関係の悩みもあります。また、スピリチュアルペインと呼ばれる痛みに悩まされる方も多いと思います。具体的な症状については説明ができても、漠然とした不安を言葉にするのは難しいのかもしれません。

宮田:そういった悩みを和らげるために、病院で働く看護師も現場で心理面の相談にのることも多いのでしょうか?

十枝内:もちろんその点は非常に大切にしています。ただ、現実的に難しい場面も多いのが実際のところです。適切な治療を受ける事が、患者さんにとっては一番大切な事ですから、病院での看護はどうしても「治療」が優先されますし、それが求められています。

また、限られた時間の中でお話を伺うので「この人が伝えたいことは何だろう?」「どうすれば解決できる?」という視点を持つように訓練されています。全ての患者さんとカウンセリング的なかかわりをするのはなかなか難しいと思います。ただ、いつも、そうありたいと思ってみんな看護をしていると思います。

宮田:お話を聞く中で、これは「枠組み」の問題かなと感じました。病院での「治療」という枠組みの中では、患者さんは治療に関わる「症状」について相談はできても、闘病生活に伴う不安などの心理的なことは、看護師にも話しにくいかもしれません。また、こうした不安は、家族や友人にも心配をかけるまいとして、言葉にしにくいかもしれません。

闘病生活に伴う不安や葛藤を、遠慮なく話せる「枠組み」がないように感じました。そうした思いを遠慮なく表現できる場が、病院や家族、友人関係をはじめとした社会システムから抜け落ちてしまっている。そこをTomopiiaが補完するイメージなのかなと思いました。

十枝内:色々な相談窓口が世の中にはありますが、具体的な課題が明確でなければなかなか使われない現実があると思うんです。例えば、がんの治療が終わって3ヶ月後に検査があるとします。その検査までの期間が不安なので病院に相談に行く、とはなりませんよね。

家族にも心配をかけたくないので、結局は誰にも相談できず、自分の中に押さえこんでしまう方が多いように思います。

宮田:不安な気持ちを遠慮なく話せる場所があるって、とても大切だと思うんです。話すことで何かが解決するわけではないかもしれない。でも、そのひと時は、不安や孤独が軽減される。看護の専門家が話を聴いてくれて、大変な闘病生活を伴走してくれるとしたら、それは大きな心の支えになると思います。その役割をTomopiiaが担うことができれば、社会的にも大きな意義があると思います。

話し相手が看護師。そこにある大きな意義とは

宮田: Tomopiiaでは、カウンセラーではなく看護師が担当するわけですが、そこにはどんな効果が期待できると考えておられますか?

十枝内:LINEでチャットをする相手が看護師ということは、治療の苦しさや薬の副作用の辛さを一般の方よりも知っている、もしくは理解しやすいという点が強みになると思います。臨床経験が豊富であればあるほど、どんな不安や悩みが生まれるかを想像できる。

宮田:そこは確かに、看護師ならではの強みですね。

十枝内:ただ、一点誤解してほしくないポイントがあります。これは大前提にあるTomopiiaの考え方なのですが、みんながみんな、病気の辛さを話したいわけじゃないんです。

「どんな動物を飼ってるの?」という他愛もない会話をしたい人もいて、看護師側もそれに対してフラットな立場でカジュアルに言葉を返す。

仲のいい友だちが看護師をしていたとか、気軽に相談できる母親が看護師だったとか。そういう距離感がTomopiiaなんですよね、看護師が前面にくるのではなく、たまたま何でも話せる相手が看護師だった、という。

Tomopiiaは社会システムの隙間を埋める役割

宮田:Tomopiiaのサービスは、「SNS看護」という新たな枠組みへの挑戦でもありますね。今回の対談を通して、私もTomopiiaのサービスの意義がより理解できたように思います。

十枝内:先ほどの続きになってしまいますが、「今日は何を話そうかな〜」ぐらいの気軽な感覚でTomopiiaを使ってもらえたらと考えています。

これはユーザーの方が良くおっしゃることなんですが、LINEのチャットでやりとりをすることは、心の中で思っていることを書き出す作業でもあるわけで、それ自体が自分自身を振り返る時間になることもあるようです。

宮田:自分の心の中にあるものを、文字にして外に書きだすことで、「あぁ、自分はこう感じているんだな」と改めて自分の思いに出会ったり、整理したりしやすくなる面がありますね。Tomopiiaでは、LINEの対話相手が「看護師」という特徴があります。それでいて、「治療」という枠組みでは話せないような、日々の不安や日常の他愛もない事柄も共有できる。

社会システムの隙間で抜け落ちてしまうものを、Tomopiiaが埋めていく。これから、より多くの人達にこのサービスが届くことを願います。

十枝内:がんに関しては、サポート体制や保健サービスなど様々な枠組みが用意されているのですが、それでも隙間は生まれてしまう。Tomopiiaはこれからもその隙間を埋めていく役割を担っていくサービスを目指します。

宮田先生には今後もご助力を仰ぐことになると思います。これからもどうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。


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