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「〜と思う」が多用される作文をどう添削する?

中学受験を控えたお子さんから、志望理由書を見て欲しいとの依頼。一読して、

"やさしい人だなあ"。

というのが第一印象。考えもしっかりしていて、自分を持っている。穏やかに周りを見ているような表現方法には、競争や人より抜きんでようしている感覚が感じられず、かえって好印象を持った。

こうやって、子どもの作文を読んでエネルギーチャージ♪ いつもありがとうございます。


ただ一つ特徴的だったのは、「〜と思います」がやたらと多用されていたことだ。

「〜と思います」「〜と感じます」

が全体を通して少し多いような気がした。

「と思います」が繰り返されると、文章は確かに「柔らかく」「優しく」「穏やか」になる。一歩引いて、自分なりに考えたり、感じたりしたことを伝えることはそう悪い方法ではないはず。

でも一方で、それが続くと、ネガティブに「弱さ」と捉えられる場合もある。

「〜と思う」だけでは「主観的すぎる」ととる人もいるだろうし、「説得力にかける」と思う人もいるだろうし、「個性がない」と考える人もいるだろう。

あなたは、どうしたいんですか? 

志望理由書というのは、はっきりとその「意志」を尋ねる作文であることを踏まえると、彼女の「優しさ」がうまく伝わらない気がした。

志望理由書でなかったら、このままでいい、と私なら言ったかもしれない。だって、本人は本当にそういう人だったし、それが彼女の良さでもあると思ったから。

本当に優しくて、冷静に、とてもしっかり自分と、周りとの関係をつかんでいる。全体と調和しながら、自分の軸を内向きにしっかり育てている人、という印象があった。


添削で、彼女に何を伝えよう?と思ったとき、「志望理由書とは、そういう自分のベースから一歩踏み出すことなんだな」と、今日は改めてそれを教えてもらったような気持ちである。

もし、この作文に1箇所でも

「〜したいです」

という自分の真っ直ぐな意志が入ってきたら。

優しく穏やかで、もしかしたら控えめな印象を与えたかもしれない人格の中に、たった一言で、真っ直ぐで純粋な意志を宿らせることができる。

踏み出そうとする、小さくて大きな一歩を感じることができるのではないか。

そこで私はこう言った。

「どこか、ここだけは!というところに、”〜たい”を使ってみて。全部にそれを使うとあなたらしくなくなっちゃうし、逆に暑苦しい作文になっちゃう。ここだけは、という1箇所だけでもいいので、使ってみて」

彼女はウンウンとうなづいてくれた。たとえ、それが表面上の愛想笑いでも良いのだ。

穏やかでやさしい人ほど、自分を表現するとき、「控え目」に写ってしまうことがある。「控え目」と「暑苦しさ」の境目って、文章で表現しようとすると案外難しかったりするのだけれど(誰かに読んでもらう、っていうのが一番いい方法だと思う)、

わざわざ、自分の、本来のありようを、変える必要はないんだよね。もともと持っている「優しさ」をベースに、ちょっとだけ一歩踏み出したいと思っているんだ、というのをにじませる。

もっと前へ! なんて自分に負荷をかけなくていい。志望理由書だろうが、そんなふうに自分を大きく見せる、必要ないと思うのだ。

大股でなくても、たった一歩分の、その歩幅をちょっと広げるだけでいい。伝わって欲しいのは、彼女の本来の優しさであり、その目で見ている世界の捉え方のなのだから。


「こども表現の教室」という小さな作文教室を主催。年内はグループワークなどのクラスはお休みしていますが、作文添削はいつでも承っております。


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