2016年に形作った「私のスタートライン」。

大学生を過ぎて、22歳、23歳、24歳。過ぎていく重ねていく日々を見つめて、ひとつ気付いたことがあった。

「あぁそうか、ここからの人生、自分から何かアクションを起こさなければ、肩書が変わっていくことはない」。

中学生、高校生、大学生。「学生」というラベルに守られていた私たちは、春夏秋冬、1年、2年経つごとに、3年生、4年生と肩書が変わっていく。

毎日、まいにち。同じ景色を見ていても、必ず次の年には変わってくれる、学年、友だち、クラス、授業。

「あぁそうか、ここからの人生。自動的に変わっていくことは、決して」。

25歳で結婚することを決めて、入籍、引っ越し、退職、転職。

うんうん、うんうん。こうやって、こうやって。

気付いたら2度の転職、旅、離婚、新しい出会い、2017年の、手前。

ふぅ、とひとつため息をつく。2016年に6割、7割、いえそれ以上の力と時間、神経を使っていた仕事が、昨日きっとひとつ、おしまいに。

日本に少しだけ帰ってきた私は、もう明日からの宿を可及的速やかに探す必要はなくなったし、ご飯の心配も、国際キャッシュカードが使えなくなったらどうしようという心配も、体調を崩したら、スリに遭ったら、道に迷ったら。

そんな日常の少しずつの心配たちから解き放たれて、朝起きて、お湯を沸かして、暖かいお茶を淹れ。こたつで、お風呂で。ふぅ、とふたつ、深呼吸を続ける。

2016年、旅に出ることが出来てよかったと、何度も、何度も。思っては繰り返し、ありがとう、と言いたくなって、そして伝えて、またはぁ、と深呼吸。

駆け抜けてきたな、と思っていいかしら。ふと周りを見渡すと、随分と景色は変わっていて。

見えるものが、目指すものが、欲しいものが。みんなみんな、変わっていって、手のひらの中には、シンプルな希望と現実が、ころり。

いつだって「やっとスタートラインに立てた」と思ってきた。そして今日も、「やっとスタートラインまで来た」と思う。

何かが、始まる。何かを始められそうな、準備が整いつつある音がする。

けれどもう少しだけ、深呼吸を続けていていいかしら。立ち止まって、手のひらを見つめて、肩に、背に、頭に。

乗っかっていた何もかもをもう一度足元から遠くに並べて、ひらり、じっと。

取り上げてもう一度背負い直して、ずしりと重いよりももう少し軽めの。そのままどこか遠くへ走れそうなサイズの荷物だけ持って、2017年はもっと遠くへ。もっともっと、望みに重なる、遠くへ行きたい。

描いてきた夢が、カラーになって、おぼろげに姿を見せ始める。夢は、描くものじゃない。叶えるものだと、昔むかし、誰かが小さく言っていた。

さぁやっとここからだ、と、今までやってきたことの総決算のようなひとに出会えて、今とても毎日が、たのしい。

ひとりよりも、ふたりの方が、できることは大きいだろう。2016年の振り返りも、2017年への憧れも、ボーナスタイムのような29日、30日のあと数十時間で、終わっていく。

年末の、このクリスマスが終わったあとの、ゆっくりとした時間流れる透き通った切なさが、もうこの数年ずっと好きだ。みんなが、ふぅ、と肩の力を抜いていく気配がする。「帰る」とは、何と良い言葉だろう。そろそろみんな、「帰り」始める。

もうすぐ、さよなら2016年。今年もみんな、きっとすごく、がんばったんじゃないかしら。