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夏の訪れの気配と雨、「まだ過ぎないで」と焦る心と|7月17日

世界が変わって、7月17日。

「2100年を迎えるまでに、日本の人口はいまの半分くらいにはなるでしょう」という予測が出回った日、私たちはやっぱりマスクをして、それも色とりどりのマスクをして、それでも変わらず街を歩いていた。

あまり大きな声で、胸を張って言っていいのかはわからないままではあったけれども、私はこの間、久しぶりに海を超えた(念の為…仕事です……)。

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といっても、当然、この日本という国を飛び出せない今の状況下であるからして、国内ではあるのだけれど。5ヶ月ぶりに踏んだ空港。

朝、7:50のフライトに乗る。早朝発、といっていいそれ。「本日の最終便です」というアナウンス。前は日に5便は飛んでいたはずの目的地。

世界はどこで、こんなにも大きく変わっていってしまったのだろう?

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「自粛の間、あなたは何をしていたの」と口々に、「ご家族はお元気ですか」くらいのテンションと難易度で、初対面のひとたちは問う。

問われ、「暮らしていました、きちんと。今までできなかった分を、取り戻すかのように」。

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真顔で言ったら、困らせてしまう気がして、少しだけ逡巡するふりをしてから、「小さなスイカを育てていました。いわゆる、家庭菜園、みたいなことの真似事で」と話し始める。

洗濯物を干して、掃除機をかけて、花の水を変えて、ベランダの野菜やハーブたちにまた水をくれてやる。ラジオ体操だかストレッチだかをして、うーん、と伸びをしてからあたたかなお茶を淹れて。

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そうして英語を勉強して、仕事をして、お昼を食べて、また少しだけ勉強をして、仕事をして、日が暮れる前に散歩をして。そうして日々、スイカが育ってゆき、花が枯れてゆき、雨でなんだかやる気が出なかったり、晴れて嬉しくなったり、あなたが家に帰ってきた、おかえりなさい、とか、ただいま、とか。

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なんだか、そんなことをしていたら、数ヶ月が過ぎていたんです。なんて。真顔で言ったら、困らせてしまう気がして。

私は、取り戻していた。多くの人が、一度揺さぶられて、平気な顔をして、平気なふりをして、いや、でもこれはやっぱりおかしいことだなと。気がついたようなリズムと同じ波を刻んで、その中で、私は、私を取り戻していた。

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もう、戻れないのだな、と思う。もとの世界に、とかではなく、もとの私に。いつだったか、変わろう、と決めて、東京は恵比寿の窓の大きなおしゃれなカフェで、初めて会うひとの、コーチングを受けた記憶。たしかあれは、今年のはじめ。

「気がついてしまったら、ひとは戻れない。あなたは、気がついてしまったのですね」と彼女は言う。

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深い意味があるようで、書いてあること、その響き以上でも以下でもない。

そう、私は、もう戻れない。離れる勇気を、この日々から。築き上げた殻から、また抜け出す光に向けて、手を伸ばし始める。

忘れないために、このnoteを。

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