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もう離さない 「嘘つき姫と盲目王子」 二次創作詩12

うかつだった
どうして、ボクは一緒に行かなかったんだ

今日は、
「お買い物だいぶ慣れた!」
と、頼もしく姫が言ってくれたので
「じゃあ、鶏ガラしばらくしていたいから……」
「まかせろー!」
ひとりきりで、街なかへ
市場とパン屋さんを回ってくるだけだ
心配もないだろう

よく言ったものだ
後悔先に立たず

夕刻を過ぎても、姫がまだ帰ってこない
寄り道とかかな?
のんきにボクは、そんなことを思って
だけれどもあまりに遅い
玄関だけカギをかけて
ボクは小走りになりながら、森を出た

切り通しを抜けて、小籔を抜けて
畑の一本道
間違いない、姫のシルエット
安堵感と不吉な思いで
ぐちゃぐちゃになり、ボクはダッシュした

「ひめ!!」
「――おぅ、じ」
姫の涙に汚れた顔と
出かけるときは、真っ白だった
シャツとワイドパンツ
見る影もなく、ボロ布の寸前に成り果てている
それなのに
パンと果物の袋は、とても大切そうにかかえて

「どうしたの!? ケガ!?」
急いでボクは、紙袋を受け取って
小脇に抱えて姫の手を取った
「――った」
「うん?」
よろり、と姫が体重をかけてくる
この際、食材はどうでもいい
袋をできるだけ静かに、道に落とし
ボクはちからいっぱい、抱きとめた

「襲われちった……」
「誰に!?」
「知らない。おじさんぐらいの3人だった」

姫と手をつなぎ、ゆっくりウチへ帰る
道々に姫が話してくれた
あまりにしつこく声をかけられて
用事を終わらせて、おーじのところに帰るんだ
との旨を、強く叩きつけたらしい

逆ギレされた

無理矢理に路地裏へ連れて行かれて
強姦寸前、いや、強姦行為を受けたんだ

姫は元の、バケモノオオカミに姿を戻せば
そんなニンゲンども、簡単に屠れただろう
だけどそれをしなかった
理由はわかる、痛いほどにわかる

ボクを
護ってくれていたんだ
悪評が立っては、ボクが再受験する
薬師(くすし)の試験へと
影響があるかもしれない
だから
抵抗らしい抵抗すら、取らなかったんだ

思いに詰まると、声も言葉も
失われるんだね
ただボクは、姫の手を取り
ふさわしい相づちも打てず
泣くのを我慢して
姫とウチまで帰った

慣れたとは言え、まだまだ
これから実社会で生活を学んでいく、姫
ボクの油断だ
完全に、ボクの選択が誤っていた

あたたかいタオルを、たくさん作って
姫の顔を拭いた
またも泣きそうにボクはなる
だけどここで泣いたら、姫の努力が水泡と帰す
粛々と全身をきれいにしていくことしか
出来なかったよ

どれだけ、恐ろしかっただろう
どれだけ、歯がゆかっただろう
姿を戻せば、その爪と牙で
いとも容易く処理できたはず

「ね?」
「うん?」
「わたしが言えないけど、その」
「うん」
「ニンゲンの生活をもっと知りたいから」
「うん……」
「今度はまた、おーじと一緒に街へ出たい」

思いっきり抱きしめた

愚かだったのは、ボクだ
考えが至らなかったのも、ボクだ
簡単な油断に寄りかかり
姫をひとりで行かせてしまった、ボク

「うん。一緒にまた市場とか回ろう」
「ん!」
涙の跡がまだある姫が
パッと破顔した

ごめんね、もう離さない
チカラがなくたって、ボクは王子だ
姫とともに在る、王子だ

姫が信頼して、浮かべてくれる笑顔
裏切ることなんで
出来るわけ、ないじゃないか

(長くなってごめんなさい)
(サムネイルはスクショです)

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