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行動範囲と世界の広さ
私が自動車の運転免許をとって間もないころ、父に言われたことがある。
「車を運転出来るようになると、世界がひろがるよ」
結局すぐにペーパードライバーになってしまったので、色々なところに行けないまま時が経ってしまった。しかしもしも、車を運転する日々を過ごしていたら、私の世界はもっともっとひろがっていただろう。
行ける場所が増えるということは、自分にとっての世界がひろくなるということ。しかし私の感覚では、自分の世界が「広くなる」というよりも、遠くにあったもの世界がぎゅっと「近くなる」という表現のほうがしっくりくる気がする。スマートフォンの地図画面を2本の指で縮めるような、「ピンチイン」の動作をイメージしているからなのかもしれない。
もしも私がもっと運転免許を有効活用していたならば、北海道も沖縄も、ぎゅっと近くなって、簡単に自分の手元に引き寄せてられていただろう。そんな自分を想像して、「それもいいな」とこっそりニヤけることもある。
しかし自動車を使わなくたって、飛行機やら新幹線やらで、色んな場所に行くことはできる。もちろん実際に行くのがいちばんいいのだけれど、注意深く妄想するだけでも、案外「行った気分」にはなれるものだ。
踏みしめたことのない土地、吸ったことのない空気、会ったことのない人々。遠く遠くにあると思っていたそれらの世界にも、想像力ひとつで、触れられるほどの距離に近づけるのかもしれない。
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