悲劇的なデザインをなくすために。視覚障がい者と考える、「優しいデザイン」について
あなたにとって、「優しいデザイン」とは何ですか?
優れたブランド体験、優れたユーザビリティといった言葉は、ブランディングやデザインの仕事をしていれば当たり前のように使われます。
でも、僕たちのデザインは、本当に多様な人のニーズに応える、優しさに溢れたものになっているのか?
自分たちのまわりには、悲劇的なデザインが溢れている。そして、悲劇的なデザインを自分たちは、無意識なうちに生み出してしまっているかもしれない。
深津さんが悲劇的なデザインの書評をnoteに書かれていました。
@ryo_panさんのnoteにも書評があります
悲劇的なデザインをなくすために
自分は、視覚に障がいをもった友人がいます。彼は見えない(見えにくい)人の立場から考えるデザインについて、大学で勉強していました。
彼からは、Webデザイン、Webサービスがどれだけ見えない人たちに配慮されていないか?を力説され続けてきました。
自分の仕事を振り返ると、確かに配慮はできていない。アクセシビリティという言葉は使っているけど、実装する努力をしていない。
インクルーシブデザインを取り入れ悲劇的なデザインをなくしたい
インクルーシブデザインとは、これまでのサービスや商品のターゲットから除外されていた人々を、サービス開発の初めから巻き込んで、一緒に構想するデザイン手法です。
インクルーシブデザインは、障がい者や高齢者はリードユーザーと呼びます。
リードユーザーと共にデザインを考えるプロセスから、自分たちが当たり前だと考えてしまっているデザイン感を揺さぶり、見直す取り組みを開始しました。
当日のスライドはslideshareにアップしています。
試してみたこと
①観察:リードユーザー(視覚障がい者)にサイトを使ってもらう
②対話:リードユーザー(視覚障がい者)と体験について話す
③批評:リードユーザーから(視覚障がい者)批評をもらう
参加者は、自分がデザインに関わったWebサイトを選定し、あなたがデザインしたサイト(サービス)はどんな人にも使いやすい優しいデザインになっているか?という問いについて�考え、新たな発見を共有していきました。
気づいたこと=恐ろしく配慮ができていないデザイン
実際にアクセシビリティ設定をして、自分たちがデザインしたものを使ってもらいました。
視覚に障がいのある人は、アクセシビリティ設定をします。
白黒反転(画面の色を反転させ見やすくする設定)をすると、自分たちがこだわったデザインは、悲しいほど崩れ、使いにくいものになっているのです・・・
ちなみに、Macだとアイコンも白黒反転するけどWindowsだとしないようです。知らなかった・・
リードユーザーの観察・対話からの気づきを一部ご紹介。※もっとたくさんのダメだしをもらっています(笑)
白黒反転すると画像が表示されなくなっている※リンク埋め込みだと画像が表示されなくなる。こだわりの背景画像は意味をなさない・・
文章と文章の境界線が曖昧になり読みにくい。一般の人が読めれば良いという基準になっている・・・
Googleマップの貼り付けだけだと、ほぼ使えない。店舗来店型のサイトで、誘導導線が適当になってるの多い・・・
情報配置の規則性がないと不安になる。※規則性があると画像やテキストが消えていても想像できる。
優しいWebデザインとは何か?良いデザインとは何か
自分たちがデザインしてきたサイトは、視覚に障がいのある人たちにとっては、全くと言っていいほど配慮ができていないことがわかりました。
では、わかったところでどうすれば良いのか?
障がいのある人のためにテキスト多めのデザインにすれば良いのか?アクセシビリティ設定のガイドラインをプロセスに組み込めば良いのか?
どちらも違うと思います。もちろんアクセシビリティ対策そのものは絶対に必要ですが。
デザインプロセス自体を見直す
僕たちはデザインそのものだけではなく、デザインプロセスを見直す必要があると思うのです。
障がい者や高齢者のためのデザインをするのではなく、障がい者や高齢者をデザインプロセスに巻き込み、共に考え、対話を続けること。
デザインプロセスの中で、多様な人の声に耳を傾け、時には一緒に手を動かしながら考え、想像力を働かせる。
このデザインプロセスを見直したあとに、ガイドライン設定や方法論づくりができれば良いのかと。
先日の記事で、デザイン批評がし合えるコミュニティを形成することの大切さについて書きましたが、この批評が多様な人から行われる環境が整うと、「優しいデザイン」≠悲劇的なデザインが生まれてくると思うのです。
今後も毎月19日はインクルーシブデザインの日とし、多様な人をデザインプロセスに巻き込み、優しいデザインというテーマを掘り下げていきます。
もしご興味がある方は、ぜひメッセージ頂ければと思います!インクルーシブデザインの可能性を、より多くの人と追求していきたいです。
最終的な構想=インクルーシブデザイン×障がい者雇用
まだ個人の構想段階ではありますが、インクルーシブデザインの取り組みと、障がい者雇用を結びつけていきたいと考えています。
障がい者をデザイナーとして雇用して、デザインプロセスに入ってもらい、共に良いデザインを生み出すパートナーとして関わってもらう。
障がい者はできることが限られているから事務作業・・・といった偏見ではなく、共に価値を創るパートナーとして捉えられる組織をデザインしたい。
シニア採用なんかも、この発想でやっていきたいなと思っています。
多様な人が関わり、多様な人が使いやすく、多様な人が喜ぶ、優しいデザインを考えていきたい。
参考にしたい本
「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン
誰のためのデザイン?—認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
インクルーシブHTML+CSS & JavaScript 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン
参考URL
これからのWebクリエイターに欠かせないスキル─アクセシビリティ・インクルーシブデザイン講座
2018/6/2インクルーシブデザインを主題にしたイベントやります!
自分が関わっているNPOでインクルーシブデザインをテーマにしたイベントを6月2日に開催します!