【邦画】「生きたい」

新藤兼人監督の、晩年の作品「生きたい」(1999年)。

“姥捨て山”伝説をベースに、老醜を晒す老人とその娘を描く喜劇的な人間ドラマ。まさに「楢山節考」(原作・深沢七郎)の現代版って感じだ。

三國連太郎が妻に先立たれた70歳の老人・安吉で、一緒に住む躁鬱病を患い婚期を逃した娘・徳子が大竹しのぶという濃ゆい配役。

安吉は、下半身がユルユルとなっており、すぐに糞便を漏らして、地元の飲み屋などでも問題を起こしてしまう。
徳子は、そんな安吉を嫌っており、躁の時は安吉を激しく罵倒する。
老人ホーム行きを嫌がってた安吉だが、病院にあった姥捨て山伝説の本を読んで、ホーム行きを決意する。
最初はホッとした徳子だが、独り残された寂しさに耐えきれずに、ホームに安吉を連れ戻しに行く…。

モノクロで姥捨て山伝説の再現シーンが挿入される。

現代の、老後というテーマを、昔の姥捨て山伝説になぞらえ、風刺を込めて描いたものだと思うけど、それがイマイチわからないね。ホームに入れた父親を無理矢理に連れ戻すけど、最期まで家族で身内で看取ろうということなのか?

確かに風刺を込めたブラックな喜劇風ではあるが、中途半端で描ききれてないと思う。新藤監督は、何を訴えたかったのだろうか?

昔みたく各種儀式やしきたり等が廃れてしまった現代で、基本、死期の近い老人の世話をするのは介護業界であって病院であって施設なのだ。それぞれの家族の事情によって異なるものだ。最期まで世話をしたかったらすれば良いし、それがイヤだったらプロに任せれば良いし、施設に入れれば良いし。人が死に赴くパターンもいろいろと違うだろう。

昔の姥捨て山伝説の再現シーンは、ヌードもあってエロチックで良かったけどね(笑)。長男が、若い嫁(尾上博美)を迎え入れた家で、最初の儀式として、注目の中、嫁とまぐわったりするし。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。