「戦争トラウマ記憶のオーラルヒストリー」

トラウマやPTSDについての学術書みたいだったけど、先の大戦で日本軍の捕虜や抑留者となった人々(戦争被害者、主にイギリス・オランダ・アメリカ人)の、戦後を追ったもの。

オーラル・ヒストリーとは体験者主体の口述記録のこと。

日本軍の連合国捕虜は、日常的な暴力、虐待、食糧不足で、高い死亡率を残している。従って、日本及び日本人を戦後も憎悪してる体験者が多いのだ。

つまりは、戦争というものは、体験者本人はもちろん、その家族、親類縁者に及ぶまで、徹底的に「壊す」ということだ。

前に、保守老害によるウンコ本「アーロン収容所」を読んだが、その逆だね。

全然知らなかったけど、昔、昭和天皇がイギリスを訪問した時に、激しい反対運動が起こっていたのだね。

今は、登場するほとんどの人が鬼籍に入ったと思うけど、日本人や日本製品を目にしただけで、激しい憎悪に駆られる、泣き叫ぶは当たり前で、妻や子供達と距離を置いて引きこもったり、DVなど暴力的になったりする。

著者も取材には相当苦労したようだ。しかし、話を真摯に聞くことが治療になってることもある。

許容しても、「許そう。しかし、決して忘れない」と頑な態度を崩すことは少ない。

二世三世にしても、日本(文化)は大好きなのだが、祖父の態度と現状の日本が結び付けられずに苦慮してるケースもある。

日本とイギリスの文化の違いもあるかもだが、ほとんどの体験者が、「日本人は野蛮だ」とか「残虐を好む傾向にある」などと思い込んでもおり、それだけ収容所で悲惨な体験をしたのだろうけど、大昔から第三世界を植民地化してきた連中が一体何を言う、なんて思っちゃうけど、憎悪の連鎖に繋がり解決は遠くなるので、とにかく辛い体験や思いの丈を全て曝け出すことに、真摯に耳を傾ける著者の仕事には大きな意義があると思う。

日本人女性学者が記した圧巻の一冊であった。

今だに、あの戦争を美化する超バカが後を断たないし、現代の戦争にどっちが良い悪いもない。だから、こういう被害者・加害者の声を聞く必要があると思う。“正義の戦争”くらい悪辣なものはないはずだ。バカな大衆ほど大国の思惑に振舞わされるもので、反対を叫ぶ前にもっと自分を見つめろと言いたい。←カッチョエエ


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。