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顧客に「心が豊かになる価値」を提供できているか

「自分たちの提供する価値とは何かを明確にすること」とは
単に、「どんなモノを作るか」「どんなモノを売るか」ではない。

今の顧客が求めているのはモノではなく、
「その先にある価値」であり、その本質は「心の豊かさ」だ。

提供しているのはモノだとしても、その価値はそのモノを使うことによって得られる幸福感だったり、そのサービスを利用することによって生まれた時間だったりする。

これは
「顧客消滅」時代のマーケティング-ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方-に書かれた一文です。

今回のコロナショックにより、飲食、交通、旅行、リアル店舗でビジネスを行ってきた小売・サービス業は危機的ダメージを受け、現在も依然出口が見えない中、営業を続けたり、中には廃業をしている企業・店舗もあります。

いわば、コロナショックによって「顧客消滅の危機」が訪れているのです。

しかし、この書籍で著者は

顧客消滅の危機はコロナショックによってではなく、
やがて来る「未来の前倒し」に過ぎず、
コロナショックで一気に到来した。

と言っています。

そして、全ての企業や店舗で影響を受けた(危機的状況にある)かと言うと決してそういうわけではなく、

コロナショックで影響を受けなかったのは明らかに、
ストックされた顧客(常連客)を保持する「ストック型のビジネス」を行っていた企業や店舗であった。

と結論付けています。

それはどういう事なのか、書籍に書かれている具体的な企業例も挙げながら、現在、私が身を置く旅行業界に置き換えて考察します。

フロー(一元客)とストック(常連客)

マーケティングの世界ではフローとストックをこう置き換え、フロー型ビジネスとストック型ビジネスと言われています。

フロー(flow)
●流れていくもの
●新規客、一見客
●人通りの多い場所、目立つ場所への立地が重要
●広告・SEOなどで集客。1日あたりの利用客数や売り上げを重視
●景気変動の影響大

ストック(stock)
●貯蓄されたもの
●常連客、リピーター、会員、ファン
●立地はあまり関係なく、継続的なコミニュケーションが重要
●「顧客数」や顧客リストを重視
●景気変動の影響小
●広告、SEO

TVニュースで時々、飲食店に人が訪れず、お店の人の悲痛な表情と共に厳しい現状が映し出される事はないでしょうか?
ほとんどが繁華街にある立地の良い場所にお店を構えたりしています。

一方で、著名人がよく、
「このお店の料理は絶品だよ!今ならデリバリーしているよ!」
とSNSを通じて発信してくれている飲食店もあります。

この様なお店は、駅から離れていたり、住宅街の中にポツンとあったり、
立地が悪い場所にあったりもします。

そして、中にはコロナショック以前と同規模、もしくはそれ以上の売り上げを残している店舗もある様です。

それは何故かというと、
常連客がしっかり付いていて、コロナ過であっても常連客がその店の商品を買う事で応援してくれているのです。

そして、常連客がSNSを通じてそのお店の存在を広めたりもしてくれるので、さらに常連客が増えていく(ストックされていく)。

急にストック型ビジネスが出来るわけではありません。
一元客がいなければ、常連客も生れないからです。
全てのビジネスはフローから始まります。

重要なのは多くの一元客をストックしようとするかどうか、
そして、それを行動に移してきたかどうかです。

書籍に書かれている例を挙げます。

ことわりをはかるみせ ばんどう
名古屋にあるコース料理専門の完全予約制レストラン
緊急事態宣言で先々まで埋まっていた予約は一気に白紙
店舗もしばらくはクローズ

↓(どう打開したか)

SNS(Facebook)で顧客と元々交流をしていて、
「究極の弁当を作る」と宣言した投稿をする。
その開発過程も掲載し、SNS上に大量のメッセージが寄せられ、
常連客の1人である書道の先生が弁当の包み紙をデザイン。

開発されたのは
3,000円の「のり弁当」と8,000円の「高級弁当」。
発売開始になると、爆発的に注文が入り、2020年4月の売り上げは前年比150%

ストック型ビジネスの典型的例でここまで顧客と関係を築けているお店はそんなにないと思います。

旅行会社のフローとストック

私が働いている旅行会社は海外個人旅行に強みがあり、フロー型のビジネスを主にしてきたと考えています。

私は入社後約2年ほどカウンターセールスの仕事をしましたが、
当時の店舗は渋谷駅前の大型商業ビル内にテナントとして入っており、
完全に仕事帰りの社会人や学校帰りの学生、休日は街に遊びに来た友達同士や、若めのカップルやご夫婦といった完全に一元客的なお客様でした。

当時は完全に専任担当者制で一人のスタッフがご予約から手配、入金確認や日程表送付など、出発までお客様のケアをしていました。
時々はご旅行後のクレームなどいただいたりもしていましたが、、、

お礼のお言葉もいただいたりして、私をリピートしていただけるお客様もいましたが、数多くの新規のお客様にご予約いただき、常連客(リピーター)の重要性をよく理解していませんでした。

会社もぐんぐん成長し、ストック型ビジネスに対しての考えもほぼ持っていなかったかもしれません。

しかし、やがてOTAの急成長により、今まで新規で予約していたお客様もネット予約が主流となり、今までのフロー型ビジネスを見直さざるを得ない時代が到来したと思います。

私自身、常連客がいるストック型ビジネスの重要さや素晴らしさを理解しました。

旅行会社でもストック型ビジネスを行っているクラブツーリズムという有名企業があります。

中高年層をターゲットにしたツアー商品を新聞広告や会員情報誌を通じて電話やインターネットで予約を受け付けます。
そして、旅行後は会員として登録され、会員情報誌が配布されたり、旅行以外のサークル活動も行い、常連客化をさせています。

おそらく、クラブツーリズム程ストック型ビジネスで成長している旅行会社は無いのではないでしょうか。

人々がこれから買っていくものとは

フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの移行は大事な事ですが、
それ以前に取り扱う商品は今のままで良いのでしょうか?

書籍には以下の事が書かれています。

世の中は心の時代に向かっており、モノではなく「心の豊かさを消費したがるということだ。

モノを買うのはモノそのものが欲しいのではなく、そのモノを手に入れることで「心が豊かになる」から。

そして、そうしたことに対して、人はお金に糸目をつけない。
一方で、「どうしても買わなくてはならないもの」がある。
いわゆる生活必需品で、洗剤やトイレットペーパーがそうだ。

これについては、機能さえ果たしてくれればどの商品を買うかにあまりこだわる人はいない。

そのため、いわば「コスパがいい」商品が選らばれる。

「心が豊かになるわけではないが、生活必需品でもないもの」
今回、売り上げが戻っていないものの多くは、このカテゴリーに属するものではないでしょうか?

例を挙げた「ことわりをはかるみせ ばんどう」は決して安くはない(むしろ高額な)お弁当でも売れたのは、「ばんどうの料理を味わえる至福のひと時」を求める常連客が数多くいたのではないかと思います。

因みに、高級弁当は現在辞めてしまっている様です。

理由としては、夏場の衛生的な問題もありましたが、それ以前にお弁当販売に「違和感」を感じていた様です。

本来、店に来てもらって楽しい時間を過ごしてもらうのが提供価値なのに、
お弁当だけで前年比を上回ってしまって、これは違うのではなかろうかと・・・

代わりに幻の酒と料理をペアリングした特別なプランを1日6席限定で3日間限定で販売したら、150万円の売上げがあった様です。

厳しい状況の中でヒット商品を開発したにもかかわらず、
本来の自分たちの顧客への提供価値からかけ離れていないかを見直していく姿勢は素晴らしいです。

しかし、まだまだ多くの店舗や企業は
自分たちが顧客に「心が豊かになる価値」を果たして提供できているのか
早急に見直していかなければいけないのではないでしょうか。

それが出来てこそ、フロー型からストック型のビジネスに移行できると考えています。

私も自分の働く会社が、お客様の心を豊かにできる価値を提供できる様に日々の業務に邁進します。

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