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【スポーツ留学】#4 卒業後の振り返り(学校編)②

前回に引き続き私が通ったコロンビア大学大学院(スポーツ経営学)の振り返りについて書きたいと思います。

この学校編②では、個人的に印象に残った授業、卒業後の進路(クラスメート)、まとめ、について書いています。

少しでもブログを読んで頂いた方にとってプラスになる内容があれば幸いです。

学校編①お読みでない方はこちらをご覧ください。



2.印象に残った授業ベスト3

私のプログラムでは汎用的なものから専門的なものまで、実に様々な授業が用意されており、その中でも個人的に印象に残った授業3つをごく簡単に紹介したいと思います。


(1) Business Intelligence

前職で事業投資先の経営管理業務をやっていた経験から、兼ねてから球団の経営分析に興味があり、講師がアメリカスポーツのBusiness Intelligence(BI)界隈では著名なRussell Scibetti氏(New York Giants /Vice President Strategy & Business Intelligence)だったこともあり受講しました。

①データマインドの徹底
まず驚きだったのが、アメリカのプロスポーツ球団のデータ活用の徹底さでした。

様々な球団の顧客データ活用事例を引き合いに出し、データ活用のサイクル、データ活用を進める上での組織体制、データを活用する際のマインドセット、データウェアハウスの構築など、

講師自身がNFL球団のBIサイドのトップということもあり、スポーツプロパティとしてデータ活用を事業運営に落とし込んでいくマインドを徹底的に叩き込まれました。

「データは金なり」と豪語する中で、データがいかに事業運営にプラスをもたらすかを具体的な数字や事例を基に紹介してくれたこともあり、自身もデータに対する感度が爆発的に高まり、良い意味で価値観を壊すことができました。

膨大なデータの中から個別の顧客に対するアクションを講じるという「合理的な細やかさ」が私のハートを見事に打ち抜き、私も晴れてデータ信奉者となるに至りました。

また、授業から少し逸れますが、Scibetti氏からも推薦頂きNavigateというコンサルティングファームでインターンしたのですが、ここも「Data-driven consulting firm」と自称するほどデータ活用の権化のような会社で、

この経験からも、データの重要性を痛感し、データから導き出されるストーリーテリングの技術が飛躍的に伸びました。

②データを駆使した経営の重要性
私が最も興味を寄せていた球団経営においてもデータ活用がかなり進んでおり、これもケースを交えながら、経営陣の経営判断にデータやBIが貢献しているかを学ぶことができ、私の中でぼんやりとしていた球団経営像のイメージを明確な仮説に変えることができました。

自分が球団経営者だったらどのようなデータがあれば意思決定しやすいか?または、どうすればもっと合理的な判断ができるか?そのような日頃抱えていた問いに対して、良いヒントをもらえた経験でした。

講師がニューヨーク・ジャイアンツというアメリカでもビジネス面で成功している球団のマネジメントダッシュボードを実際に見せてもらうこともあり、ジャイアンツの経営陣が日頃どのようなデータを元手に判断できているかも知ることができ、自身の要求水準を著しく高めることができたと思います。

また、SQLやTableauを用いてマネジメントへのレポートを作成する課題があり、これもリアルなシチュエーションであったら自分はどのようなデータを集積、統合、分析、アウトプットしていただろうかと考える良いきっかけにもなりました。

マネジメントダッシュボード事例

(2) Accounting & Finance
この授業は必修でしたが、前職の関係上、一番自身が勘所がある分野ながらもスポーツへの適用について興味があった科目であり、また講師がニューヨーク・ヤンキースの現役財務担当者(Executive Director)であったこともあり受講しました。

前職時代の知識や経験でカバーできる程の内容でしたが、何よりも興味深かったのが、スポーツの文脈でリアルなファイナンスや会計に触れられたことです。

狙い通り現役の球団のファイナンス実務担当者が講師である為、全ての説明のベースが世界で最も企業価値が高いとされているヤンキースであったことが非常に視座を高めることができました。

オーナーとのやり取り、ヤンキースの投資判断、MLB球団としての財務管理、MLBとの収益分配システム、事業計画の策定など、リアルタイムでかなり深いところまで説明してくれたお陰で、自分の知識・経験をスポーツモードに書き換えることができたのは非常に良かったです。

また、授業の最終課題が「Alex Rodriguez選手の獲得による投資判断」のプレゼンで、やること自体はDCFを引いてNPV/IRRを出すといったような一般的なものですが、

それよりも、モデルのベースを作る作業が実にスポーツらしく、今まで考えたこともないようなスポーツらしい前提条件を置いたりと、かなり実際のケースに近かったと思われ、球団で働いたことのない班員同士で、あーでもないこーでもないとディスカッションしながらモデリングできたのは非常に有意義でした。

我々はA-Rod獲得は大赤字ということで見送ることにしました


(3) Revenue Strategy
この授業はリーグや球団経営の戦略についての授業です。

これも球団経営に興味があり、球団の売上の作り方や経営側のマインドについてもう少し踏み込んで学んでみたいと思ったのと、講師陣がタイミング良く豪華となり、現役でMLBの戦略担当のVice PresidentとDirectorの二人が講師となった、ということで受講しました。

夏学期で受講者数がいつもの半分程度だったということもありますが、これが功を奏し、とにかく沢山ディスカッションしながら講師陣と意見交換できたことが非常に素晴らしかったです。

市場の捉え方、実際に利用するフレームワーク、移りゆく顧客トレンドに対する考え、リーグとしての危機感、球団経営の財務面で大切にする、など学びを上げるとキリがないですが、

講師陣の経験・知見を惜しみなく赤裸々に共有してくれた点はただだた感謝で、自身が経営を担った際に遭遇するであろう課題や事象を講師陣目線で共に考えることができました。

個人的に興味深かったのは、まさに足元でファン層の高齢化やサッカー人気の台頭などに伴いファン人口が減少傾向にあるMLBの戦略担当ということで、彼らの危機感をあえて詳らかに明かしてくれ、ディスカッションの題材にしてくれた点です。

試合時間の短縮、ストーミングサービスの拡充など、新たなファン層を獲得に向け様々な取り組みをしてる彼らではありますが、MLBでさえも現代の急激な顧客トレンドの移り変わりにフィットすることに試行錯誤しており、

まさに若い世代である我々学生の意見に真剣に耳を傾け、少しでもリーグ経営に活用とする姿勢を見ることができ、経営に携わる者としてのお手本を示してくれたのは良い学びでした。

あと、最終課題として、チームのあらゆるデータ(戦績、マスメディア、ソーシャルメディア、財務、顧客特性、スポンサー、CLVなど)から、オーナーグループに対して投資計画をプレゼンするというものがあり、

これも先述のファイナンスの授業と同様に、リアルさがあり、且つスポーツの文脈で投資計画を策定することができたのは、実業にも活用できそうだと思いました。

無事に50万ドルを得ることができました

3.卒業後の進路
私個人の進路については別のブログで説明させて頂くとして、私のプログラムからの卒業生の進路状況ですが、

結論から言うと様々です。プログラム自体が幅広い内容をカバーしていることもあり、学生が取る進路も多岐に渡っています。

例えば、私の仲の良かったクラスメートは、サッカー好きが多かったこともあり、MLSのリーグや球団に就職したりしていますが、それ以外にもアメリカのメジャースポーツのリーグ・球団、スポーツ系の代理店、メディア、大学、五輪組織委員会、ベッティング、eSports、起業などもいます(職種も様々)。

学部卒業後すぐ大学院に進学した者から私のように一定のキャリアを積んだ者までいる為、就職先は一様ではないですが、皆それぞれプログラムを活用しながら自分のキャリアに向けて進んでいっている模様です。

ただ、多くは述べませんが、アメリカには就労ビザという大きな問題が立ちはだかっており、私のようにアメリカ国籍を持たない留学生は、就職先からビザを発給してもらう必要があり、これが中々一筋縄でいかない部分があります。

ただでさえ、大人数を採用する産業ではないことに加え、ビザを発給する必要のないアメリカ国籍の人たちと椅子取りゲームをしなければならず、アメリカでの勤務を希望する方にとっては、非常に難しいゲームとなっています(もちろんアメリカ国籍でない方で仕事を取られている方も沢山います)。


4.最後に
学校編は以上となります。

こう振り返ってみると、本当に好きなことを学ぶことだけに時間を集中的に費やせたことは何事にも代えがたい程に幸せでした。

お恥ずかしながら、学生時代の私は勉強なんてそっちのけでスポーツしかしておらず、学生時代の私がアメリカで修士を取った私を見ると驚愕すると思いますが、

人は何歳になっても学ぶことはできるのであって、こうして学びたいと思った時に、知的好奇心に素直になることは、こんなに人生を鮮やかに彩ってくれることが今回よく分かりました。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の言葉のごとく、何か得たいものがそこにあるなら後先考えず突っ込んでみる…私の留学はまさにそんな感じだったのですが、

虎穴に入ったからこそ見えた世界、虎子を得たからこそ考えついたアイデアなど、何事もやはり自らがドライバーズシートに座って動き出すからこそ得られるものがあり、それらは口だけ開けて待っていては決して手に入れることのできないものであると思います。

そういえば、私の大好きなコテンラジオで丁度先日聞いた三蔵法師・玄奘のストーリーは、(私の比ではないですが)まさに知的好奇心の追求の為に危険を犯してまで旅に出るというもので、

人の知的探究心というのはいつの時代になっても存在していて、それには抗うことはできないよなぁと感じていたところでした。

これからの人生において、これだけパッションが燃やせる程に知的好奇心が湧くものに、どれだけ出会えるだろうかと考えると何だか切なくなってしまいますが、

それが学校であろうとなかろうと、日本であろうとなかろうと、人生を通じて学び続けるということは決してやめてはいけないなと改めて思います。

今でも何で若い時にもっと勉強しておかなかったんだと悔やむ部分はありますが、まぁ人間は学ぶ意義を見い出さないと学んだところで効果はないですし、勉強しなかった分、スポーツを通じて私は人生で大切なことの多くを学ばせてもらったので、

そういう意味では、私の場合は少し遅めの向学心ではありましたが、これからが人生における勉強フェーズということで、人より遅くなった分、これからの人生で取り返すくらいの気概で今後も頑張っていこうと思います。

次は、「キャリア編」のブログとなりますが、まずはここまでお付き合い頂き有難うございました!

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