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たくさんの「初めて」のそばに

退院して、息子が我が家に来るときのこと。
まだ寒中のその日は、陽差しがやわらかく降りそそぎながらも、風が冷たく吹いていました。

産まれて初めて浴びる陽の光にまぶしそうに目を細め、産まれて初めて頬に触れる風に驚いたような表情を見せる息子。
当たり前だけれど、あぁ、何もかもが「初めて」なんだと気づかされます。

30歳にもなると(ごめんなさいサバ読みました。正確には31です)、そうそう「初めて」を味わうことってなくなってくるものですね…。
何か意識して、能動的にチャレンジをしない限り、「初めて」が向こうから歩いてきてくれることはなく、マンネリな日々を惰性で送ってしまうことから逃れられません。

だけど0歳児にとっては、風に吹かれることさえもが、新鮮な経験。
まだこの世界についてよく判らないままに生きているその日々が、「初めて」の連続。
この子は、いろんな物事をどんな風に体験して、感じて、どんな風に自分のものにしていくんだろう―。そんなことを考えると私もワクワクしてくるし、この子にたくさんの「初めて」を経験させてやりたい。そしてできる限りたくさんの初めての瞬間をそばで見守っていたいと強く思います。

先週末、息子の初めての本格的なお出かけ先に選んだのは、京都・淀水路。早咲きの河津桜がちょうど見ごろを迎えていました。

美しい桜には目もくれず、結局ずーっと寝ていた息子。笑
とはいえ、まだ視力や色覚の発達の途上ですし、桜を本格的に“見る”のは、また次の春になってからかなと思います。ひととき、春の色を満開にさせ、そして舞い散る桜を見て、この子はどんな表情を見せてくれるんだろう。


普段は家の中で赤ん坊にかかりっきりで、ゆっくり外に出ることもままならない妻も、いい気分転換になったようでした。

「初めての家族3人でのお出かけ。楽しかったね。」

その言葉を聞いて、ようやくハッとしました。
子どもが生まれて、初めての春―。
初めての、子どもを連れてのお出かけ―。
息子のたくさんの「初めて」のそばには、同じように私たち親にとっての「初めて」がついてまわっているのだと。大人にとっては慣れっこのはずのこの世界で「初めて」を経験するチャンスを、この子が私たちに与えてくれているのだということに。

…単純に、そもそも子どもが生まれる前の生活と、生まれた後の生活とは別物、ということなのかという気もするけれど。
そうだとしてもまぁ、せっかくですから私自身も子どものいる生活の新鮮さを噛みしめながら、一瞬一瞬をしっかりと味わっていきたいなぁと思っている次第です。


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