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[travel note #31]バンビエンのレストランで

バンビエンは自然に囲まれたとても静かな街だった。

と言いたいけど、ここはヒッピータウンと呼ばれるくらい街中にヒッピーが溢れていて、レストランにはどこも欧米人でいっぱいだった。

ここは本当にあののどかで静かなラオスか?と思うほど、ラオス感はなかった。

それでも、バイクで街を出ると一気に雄大な自然に囲まれて、訪れた小さな村々では素朴で無邪気な子供たちの笑顔が見れたので、僕はやっぱり好きだった。

僕が泊まっていた宿の隣にレストランがあり、いつも昼と夜、食べるものに困った時はここに食べに来ていた。

大きなフランスパンにハムやチーズ、レタスを挟んだサンドイッチが100円で食べられたし、しかも味が抜群に美味しかった。

ラオスは昔フランスの植民地だったらしく、そのときにパンの技術が持ち込まれたために、美味しいパンが食べられると言う話を聞いたことがある。

ここでは座席に座りながらオープンテラスの向こう側に岩山を望むことができた。

綺麗な景色と新鮮な空気に囲まれたこのレストランでの食事が僕は大好きだった。

そしてもう一つ、ここのレストランでウェイターをやってる女の子がいつも気さくに話しかけてきてくれて、僕は好きだった。(もちろん人として)

何日かこのレストランに通ううちに、なんだか、この女の子がもしかしたら僕に気があるんじゃないかって素振りを見せるようになった。

一緒に旅をしていた仲間もそんなふうなことを言うので、僕の自惚れではないようだ。

が、別に何か起きるわけでもなく、僕は数日の滞在を終えてバンビエンを後にすることになり、そのことを次にレストランを訪れた日に彼女にも報告した。

彼女は一瞬寂しそうな、少し涙目を浮かべるような素振りを見せた。

僕はたった数日でも、レストランに通ったお客との別れを惜しんでくれる澄んだ心の純粋さに胸を打たれた。

それでも、少し時間が経つと彼女はまたいつもの元気な笑顔に戻って会話をしてくれた。

多分、僕が出発するとわかったからだろうか。

彼女が突然のカミングアウトをした。

「私、男よ。昔ムエタイも習ってたわ」

なんと、彼女のカミングアウトには僕も一緒にいた旅仲間もみんな驚いた。誰もそんな風に気づいた人はいなかったからだ。

言われてみればそう見えなくもない。

しかし以前宿の前で出会った時に赤ちゃんを抱っこしていて、とても女性らしい一面だったので、余計にそんな風には思えなかった。

なんだか急にこちらが失恋したような気分になった。笑

バンビエンでは雄大な自然を訪れたり、子供たちと遊んだり、綺麗な夕陽を眺めたり、旅仲間とお酒を飲んで話したり、いろんな思い出があるけど。

やはり、このレストランと彼女との出会いが一番忘れられない思い出かもしれない。

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