新型コロナウィルス収束後の海外MBA受験の世界
新型コロナウィルスがおおよそ収束した後に、海外MBA受験の世界はどうなっているのでしょうか。
今は全てがオンラインですが、どこまでオフラインに戻るのでしょうか。
個人的には、「セレンディピティ」がキーワードかと思います。
セレンディピティ(Serendipity)は、素敵な偶然に出会ったり予想外のものを発見することです。
実際、セレンディピティへの渇望が、昨今のClubhouseのブームに繋がっているとも考えられます。
本稿では、私の、「本当は海外出張したいけど」といったエゴは一旦除外して、受験生以外の利害関係者の目線から考察しています。
フェア
新型コロナウィルスによっておそらくMBA受験界隈で最も変化が生じているのは、フェア運営会社かと思われます。
彼らは、新型コロナウィルス以前は、リッチなホテルの一角で、学校と受験生の出会いの場を提供しています。
イベントの中身は学校説明会(プレゼンテーション)、入学審査官によるパネルディスカッション、小グループディスカッション、オープンフェアでした。
日本の就職活動の合同説明会のイメージにかなり近いです。
このうちオープンフェアは、大部屋に数十校がブースを囲んでおり、多くの場合、入学審査官+卒業生が待ち構えていて、気軽に質問できるというものですが、これがオンライン移行により完全に消失しました。
一部のフェア会社では、それを模したバーチャルブースが存在しますが、そこでは直接音声を介して会話するというものではなく、お互いの顔が見えない中でチャットでやり取りをするというもので、経験は大きく異なります。
オフラインの際には、「あ、何か、あそこのブース盛り上がってるな」とかを遠くから察知した受験生がふっとそのブースに立ち寄ってふっと会話が始まるというのがよくある姿でしたが、これがほぼ完全になくなりました。
フェアに来る受験生のうち多くは、志望校を狙い定めているわけではないので、こういった偶然はある程度重要になってきます。
色々な考え方があろうかと思いますが、このセレンディピティ及びホテルのゴージャスな雰囲気が学校のブランディングにプレミアムとしての価値を生み出すことが、フェア会社が独自に提供していたものだった気がします。
現状のオンライン形式では、たくさんの学校が同じ空間にいるという感覚を受験生が持つことは困難です。
収益面(受験生ではなく学校から徴収)の諸々の理由と合わせて、フェア会社ほど対面に戻りたいと思っている主体もない気がします。
他方、参加校が世界各地から滞りなく現地に参集できるか、現場の三密回避はどこまで可能か(その頃にどれほどのレベルで三密回避が要求されるか次第)、等、課題は少なくありません。
学校がどこまでオフライン回帰の流れに乗じるかは、このオンラインの期間にフェア会社の提供するものにどれだけ満足するか、あるいは、フェアに代わる有効な代替案を見つけてしまうか、等によって決まってくるものと予想します。
受験予備校・エッセイカウンセラー
受験予備校については、ある程度オフラインに戻る気がします。
ただ、地方からの参加者をどれだけ今年オンラインで取り込めていたか、そしてそれが成功体験であったかどうかによっては、オフラインに戻りきらず、ハイブリッドという折衷案もあるかもしれません。
ちなみに韓国は、全国民の半数がソウルに居住し、思い返してみてもこれまでほぼ全ての受験生がソウルあるいはその近郊在住です。
それもあってか、実際、先日話した某大手予備校のカウンセラーは、一日も早く現在の収容制限のためにハイブリッド形式を余儀なくされている状態を脱却して、オフライン授業に完全に戻りたいと話していました。
なお、私自身は、少し彷徨ったりもしましたが、GMAT対策の大部分を、今も健在の某校(仮名:N塾)の解説も充実した音声教材で済ませていましたので、オフライン授業の必要性は、学びという観点からは特に感じていませんでした。
音声教材でオフライン授業の3-4倍速くらいで回していたと思いますが、自分のペースでどんどん進めてこの苦痛でしかない試験から早く解放されたいと願っていたことと、教材一式を何巡か解き直すことがむしろ大事と考えたためです。
他方、N塾の提供する受験生間の懇親会は、受験仲間と知り合う大変貴重な機会でしたし、セレンディピティも多かったです。
私は誰かを助ける文脈以外で勉強を誰かと一緒にしたいとは今でも特に思いませんが、ただのテストスコア戦争ではないMBA受験を孤独な私費生として突き進んでいくにあたり仲間が欲しいとは思っていました。
ということで、授業はハイブリッドもしくはオフライン、それ以外の懇親会はオフラインという形に落ち着くというのが予備校に関する予想です。
エッセイカウンセラーは、元来オンライン一本で対応してきたところの方が多いでしょうし、オフラインで殆ど付加価値が生まれないと思います。
どんな生活スタイルを好むか次第ですが、エッセイカウンセラーとのやり取りは基本的にはオンライン完結型となるのではないでしょうか。
入学審査官とのカジュアル個人面談
私もどうしようかなぁと考え続けているところですが、日本向けには、たぶんオンライン9割強、オフライン1割弱、というところに落ち着きそうな気がします。
私の場合、本拠地のあるバルセロナに加えて、中東など日本と時差が大きい地域の対応も多く、主たる就業時間が日本時間14:00-22:30くらいです。
それを踏まえると、夜、オフィス(*)から自宅に帰る移動の時間が惜しかったり、少なくとも私目線ではオンラインとオフラインでコミュニケーションの濃度と質にさほど違いを感じないためです。
*一応、六本木アカデミーヒルズのオフィススペース内にオフィスがあります。現在は、月会費が無駄なので、私は休会扱いにしていますが。
また、オンラインの方が大量にスロットを提供できるため、受験生としても選択肢が多く、今年はドタを含む事前のキャンセルが圧倒的に少なく、それも良かった点でした。
受験生は、背景が美しくない自宅を見せて悪い印象を与えたくないとか色々あるのかもしれませんが、少なくとも私は、正直そんなことは一ミリも考慮していないし、そんなことで何かを判断するほど器の小さい人間ではありません。
他方、オフラインならではの空気感を重んじる方もいらっしゃると思うので、そういった方向けに2ヶ月に一度くらい対面で会える日を作るイメージかなと思っています。
拠点が日本にない学校の入学審査官は、引き続きオンラインがメインで、オフラインの可能性については、フェアなどで来訪の予定があるかどうか次第でしょうか。
彼らにとっては変化は限定的かもしれません。
学校説明会・コーヒーチャット
今年、どの学校でも学校説明会やコーヒーチャットのオンライン版の参加者が増えているはずです。
これは、受験生が増えているというよりは(ということもあるかもしれませんが)、オンラインであるがゆえに、イベントにアクセスしやすいことがあるでしょう。
受験生の当日キャンセルも随分減りました。
複数の違う場所にいる在校生や卒業生も巻き込みやすくなりましたし、彼らの参加確定も俄然容易且つ迅速に得やすくなりました。
なお、こういったイベントでは開始時刻前に早く来た受験生と終了時刻後まで残る受験生との小話も、セレンディピティを生み出します。
受験生からするとさりげないPRの機会にもなるかもしれませんし、私もそういう会話は好きなのですが、これに果たしてどれだけの価値があるのかというところです。
模擬授業形式を伴うとしても、実際の授業環境の多様性を模したものが実現できるオンライン形式と、教授の熱気を一層伴っているものの大多数の参加者が日本人で発言の間の掴み方などがまるで実際の現場と異なるオフライン形式のどちらがいいのでしょうか。
特に本項目、学校説明会・コーヒーチャットについては、私の中でもまだ答えが見えていませんが、少なくともオンラインで集客を増やせることのメリットを全部捨てて、オフラインに全部戻すことは考えていません。
キャンパスビジット
これほどセレンディピティの連続な経験はありません。
キャンパスビジット期間内に、初めて歩く街の雰囲気や人に触れたり、学校でランチを予約していた日本人学生と話していたら外国人同級生が絡んできたり、学校内の社交イベントに突発的に誘われたり...
キャンパスビジットほど、感覚的にどの学校が好きかそうでないかがわかる機会もないので、国境を超えた周遊関連の諸々の制約さえなくなれば、何事もなかったかのように復活するでしょう。
ちなみに、IESEの場合、売りの一つは、街とキャンパスの圧倒的な美しさにあります。
但し、これらがオンラインイベントで伝わりきっているかは大いに疑問が残るところであり、出願数どうこうはともかく、合格した方が入学してくださるかについては、これが理由でいささか不安が残るところです。
インタビュー
本番のインタビューは、ローカルな卒業生が実施するものはオフラインに戻るような気がしますが、本来国境を超えた旅を伴っていた入学審査官主体のインタビューは微妙です。
前述のカジュアル個人面談でも記載しましたが、少なくとも私は、オンラインとオフラインでさほど違いを見出さないので...
合格後イベント
合格後の壮行会、これはオフラインでやりたいなぁと強く思います。
合格者と出国まで一度も対面で会わないという事態は避けたいし、心からお祝いするにはやはりオフラインしかないと思うわけです。
そして、ここも、合格者同士という目線で考えるとお互いを初めて知る、セレンディピティの可能性に満ち溢れた素敵な場です。
まとめ
以上の通り、まだまだいつ何がどうなるか何とも不透明な状況ですが、この半強制的な変化を楽しみつつ、業界としてMBA受験生に対し満足度の高い経験を与えるような仕組み作りが進めば良いなと思います。
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