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元官僚は、海外MBA卒業後、民間で活躍できるか

私のMBA前のキャリアで一番、海外MBA卒業後に活きているなぁと感じるのは、意外にも、出向で経験した2年間の官僚経験です。

海外MBAの世界にも、省庁にお勤めの方が国費で派遣されてきている例を見ることはままあります。

官僚としての就業経験は、卒業後に民間で働くにあたり、どのような面で活きてくるのでしょうか。

私の事例で恐縮ですが、考えてみました。


適切な文言や表現を細かく追求できる能力

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金融庁国際室で国際金融規制改革周りに携わっていた官僚時代(2年間の出向)は、特に細かさが求められました。

戦略コンサルでパワーポイントの構造に求められる精緻さをワードで日本語や英語の言い回しに求められるイメージでしょうか。

私は法案作りには一切携わっていませんでしたが、会議や面会への対処方針、議事録、交渉の合意文書など、その用途は多岐にわたりました。

日本語はそれを追求する機会が最近殆どなかったので、正直、当時より能力が落ちてしまったかもしれません(note執筆で挽回したいと思います)。

ただ、現職で、学校紹介プレゼン資料の違和感を指摘したりすることが入学審査チームで一番多いのは私な気がしますし、なぜか全く担当として携わっていない学校紹介パンフレットの確認依頼にも勝手に宛先に入れられていることが最近増えてきました 笑

英語のネイティブチェックとは意味合いが違います。

スペインの組織だと、ある程度元がラテン系で適当なので、このあたりの私の能力は、日本の民間企業以上のレベル感で、重宝されている気がします。

私もスペイン式に少なからず染まっているので、本当に大事な時以外はある程度ざっとやろうという意識もそれなりにある中、逆に今官僚の世界に戻ったら、細かい指摘を昔以上に受けてしまうかもしれませんが 笑


タイムマネジメント能力(段取り力)

官僚は、意外かもしれませんが、私の印象では仕事が凄く早いです。

早いですが、それを大衆が実感しにくいのは、内部での承認プロセスが複雑で、しかも一人一人の承認者が、必ず自動承認せず、もはや揚げ足取りのレベルのものも含めて「ご指摘」をくださいました。

おかげで、都度、修正が必要になり、組織のアウトプットとして出来上がるまでに時間がかかるからです。

この「ご指摘」の細かさは、民間企業ではまず味わえないものでしょう。

総括補佐と室長に諮った段階でそれぞれからほぼ全部作り直しを命じられた資料を、更に参事官、審議官にも修正されたあげく、長官に諮ったら、自分が作った原案で十分だったみたいなこともありました。

また、時差のある海外で国際会議に出ている上記中某1名に諮るにあたって、会議中はメールを受信すると集中が削がれるから、休憩時間(日本側25:00頃)の5-10分の間にメールを本文だけを読めば決裁可能な形で送るようにと指示され、それがボトルネックになることもあったりしました(もはや今はパワハラ?!)。

NTTドコモでは、上の役職の方ほど忙しいというのは必ずしも当てはまらなかったですが、金融庁国際室は、驚くべきレベルで、まさにその通りでした。

確認を仰ぐべき人数と、彼らの指示を踏まえての修正作業の工程と、彼らの繁忙を全部見越して、最終的なアウトプットとして質を保って発信できるようにするためには、相当計画的にタイムマネジメントする能力(段取り力)が求められます。

私は、結構時間に余裕を持たせて物事を進める方ですが、それでも結構冷や冷やしたことが複数回あります。

現在の組織においても、原則バルセロナ側の職員は残業はしない、夏休みの休暇がスペイン式に約1ヶ月あってその間は仕事が滞る、などの制約があります。

それらを見越しつつ、他の学校に劣らないアウトプットを出すためにはと知恵を絞る段階において、官僚自体に培ったタイムマネジメント能力は大変役立っています。


ハードワークする能力

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官僚も、最近は緩やかになってきている傾向があるかもしれないにせよ、「霞が関は不夜城」と揶揄されることがあるように、さほど高くない給料で長時間労働を余儀なくされます。

私のいた国際室は、国会対応が多い部署ではなかったので、その関連で深夜残業した回数は少なかったです。

ただ、欧米(東海岸)両方のカウンターパートとやり取りをしていたので、重要案件がある際は、激しい働き方をしていて、海外出張の後に高熱を出すのが習慣化していた時期もありました。

(と言っても私は月に120時間以上残業したことがたぶんないですし、緩くなった2年目にはMBA私費受験準備をひっそり進めGMATを完了していましたので、これで激しいと言うと、官僚の方々には怒られてしまうかもしれません...)

他方、季節性の激しい仕事が海外MBA入学審査官なので、海外出張が相続いたりする時期や選考のピーク期(2nd round)など、激しく働く時は激しく働きます。

ただ、官僚の時よりも自分のリズムで自分の生活を制御できる余地が圧倒的に大きく、感覚的には「金融庁の頃よりはマシだ」と思いながら仕事できています。

長時間労働を美化する思想は特に持ち合わせていませんが、やはり一度、これより激しい働き方をしたくないなと思うレベルで激しい働き方をしておくと、その後多少激しい働き方をしても、同僚よりも強い耐性付きで乗り切れる気がしています。

先日も、入学審査チーム内における担当地域の再割り振りの議論で、中東ほど重みのある地域をもう1つ追加はしんどいが、チームとして手が回っていないなら、ドバイと時差が同じモスクワのあるロシアくらいならやれる気がすると打診したら、お前は不死身か、的なツッコミを同僚から頂きました 笑(結局、ひとまず現状維持)


おわりに

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以上の通り、私の場合、これら3つの能力が現職に色んな形で役立っています。

想像の域を出ませんが、弁護士の方々も似たような力を転用できる性質のお仕事をされているのではないかと思います。

逆にエクセルやパワーポイントに弱いのが、官僚の弱点でしょうか(エクセルは業務内容次第かも)。

私は、海外通信事業者財務比較分析などに関わる役員へのプレゼン機会が多かったおかげでNTTドコモにおいてパワーポイント技術はそれなりに上達したと思いますが、エクセルはまだまだです。

IESE MBA中も鍛錬を怠けてしまった分野です...

今回は私の事例のみに焦点を当てましたが、表題の問いに対する回答としては、官僚にしか出せない価値あるいは官僚の方が秀でている側面があり、それが民間で卒業後に活かせるかどうかは、ある程度個人の力量による、というものです。

蛇足ですが、官僚として働き続けている方々は、非常に優秀で献身的です。

政治家によってスケープゴートにされがちで損をしている側面も小さくないですが、海外MBAの世界とは全く違う領域で高いパフォーマンスを出して世の中に価値を出しつつけています。

その点で、今でも、特に一緒に働かせて頂いた方々のことを心から尊敬しています。



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