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クワハリさんの漫画「私の高校生活」から読み取る青春の解像度

ひとの昔話を聞くのが好きだ。

昔の話をするとき、人は力がゆるみ、素が出て、ぐっと親しみやすくなる気がする。もちろん、反対に力が入るひともいる。ちょっとだけ過剰に良い思い出を演出するひともいる。でもそれもすきだ。そのひとが、どんな思い出を大切にしているかが伝わるし、なんだか愛しくなる。とにかく、ひとの昔の話がすきだ。みんな、もっと昔の話をわたしに浴びせてくれ。

そんなわたしが今年、ツイッターで偶然発見して思わずのめり込んだ漫画がある。クワハリさんの「私の高校生活」シリーズだ。

クワハリさんのツイッターのプロフィールにモーメントで完結までまとまっているから読んでほしい。モーメント機能は無くなるとかなんとかで、うまくnoteにリンクが貼れなかった。今から内容の紹介を含みながら感想を述べていくので、前情報なしで楽しみたい方はいますぐ読みに行ってほしい。そんなに長くないから20分もあれば読み切れると思う。

私の高校生活シリーズの概要

この「私の高校生活」シリーズは文字通りクワハリさんの高校生活をエッセイ漫画にしたものだ。2021年8月にスタートし2022年10月に卒業を迎え完結した。細かい記憶は定かではないが、たしか3年生の文化祭編あたりで存在を知り、ひと目で大好物だと判った。これこれ。こういう、まったく知らないひとの、まったく知らない学校生活の日常を覗き見る気分が、このうえなく楽しい。

漫画内で主人公たるクワハリさんは、マレーバクのようなアリクイのような姿で描かれている。これは実写のクワハリさんが似ているのかもしれないが理由は定かではない。この憎めない見た目がつねに哀愁を放ち、自分と違う存在なのになつかしく心地よい。浅野いにおさんの「おやすみプンプン」という漫画では主人公のプンプンがひよこのような姿で描かれている。それに似たような、前衛的な手法で親しみやすさを生んでいるのかもしれない。

「私の高校生活 第4話」より

「私の高校生活」シリーズはクワハリさんの高校入学から卒業までを描く。ツイートは44回に分けられ、時系列に進んでいく。この先は特に、わたしがこの漫画にのめり込んだポイントを書く。

純粋な若者の葛藤が描かれている

高校生という多感な年頃の男子高校生が直面する葛藤がごくごく自然に描かれているのがすきだ。例えば3話で高校1年生のクワハリさんは、クラスに馴染もうと流行っている腕相撲あそびに混ざろうとする。しかし、クラスでまだ友達がいないクワハリさんは「次に腕相撲やりたい!」と言えないままの姿が描かれている。

第3話より

他にも、クラス替えをした2年生。「アニメオタクだと思われたくない」という思いからクラスメイトに強がってしまう姿も。

私の高校生活 クラスメイト編 より

こうした、今振り返れば大したことではないが、その年頃にとっては必死で守らなければならない自意識との葛藤が、非常に精緻に描かれている。この心の揺れ動きに、読者のわたしは共感せざるを得なかった。

他人以上、友人未満の同級生たち

多数登場する同級生たちからも目が離せない。わたしが特に好きなのは、文化祭序章編の浅見さんや、修学旅行編のフジイくん。どちらもなんとなく実体験として想像ができるのが不思議である。浅見さんのように文化祭の行事を取り仕切る(かといって強烈なインパクトを残すエピソードがある訳でもない)子は居たし、フジイくんのような刹那的な思い出しかない同級生も思い浮かぶ。私たちはそのことを、この漫画を見た瞬間に思い出すことができる。

文化祭序章編 より

同級生以外の登場人物だとメル友編で登場したマキさん(仮名)も印象深い。高校生活にmixiに触れていた世代のわたしは、この漫画を通じてあの頃の追体験ができる。

こうした、「他人以上 友達未満」くらいの同級生が登場することに、わたしは妙にリアリティを感じる。これこそが現実の思い出をそのまんま描写している証拠だと感じるのだ。格好つけた華美な過去を語りたい人の話なら、こんな存在は登場しない。だからこそ、わたしはこの写実的なエッセイに心を打たれる。

それでも爽快な読後感

ここまでの感想だと「まぁリアルに描かれているよな」と思うくらいかもしれない。しかしわたしは、この漫画の魅力はそれだけにとどまらないと主張したい。その論拠が、爽快な読後感にある。わたしは文化祭合宿編でのこの1コマが大好きだ。

文化祭合宿編 より

「文化祭の準備のために学校に泊まる」という非日常。その限られた時間の儚さと青春がここに描かれていると思う。このページを見たとき、わたしも自分の高校生活を思い出し、しばし意識がトリップした。バレー部の合宿で試合後にチームメイトとラーメンを食べ、夜道を歩いたこと。無意味なくらい朝早くから練習をしたこと。自分がその頃に肌で感じた温度が、においが。このページで想起されたのだ。ここに、全編を通して頼りなく学校もイマイチ楽しめていないように見えたクワハリさんが、間違いなく青春を実感している姿が見て取れ、言いがたい爽快感を読者に与える。

また、わたしは冒頭こう記していた。

もちろん、反対に力が入るひともいる。ちょっとだけ過剰に良い思い出を演出するひともいる。でもそれもすきだ。そのひとが、どんな思い出を大切にしているかが伝わるし、なんだか愛しくなる。

冒頭より再掲

これはわたしの勝手な想像だが、この瞬間、高校生のクワハリさんは明確に「夜が輝いている」と思っていたわけではないと想像している。友人と共にいる時間でじっくり感性に浸ることができる高校生はあまり居ないような気がしている。わたしが言いたいのは、この場面は「良い思い出であると他人に伝えたい」という、現在のクワハリさんの意志を感じるということです。だから、好きなんです。その瞬間を正確に描写するよりもむしろ、今のクワハリさんにとってかけがえのない場面だという主張を、ここで感じるのです。

クワハリさん全くちがかったらご容赦ください。

まとめ

以上、わたしが今年のめり込んだエッセイ漫画「私の高校生活」シリーズの紹介&感想でした。ここまで読んでいただいた皆さま誠にありがとうございます。そして、まだ未読でしたらぜひお読みください。そして、ぜひ感想をお聞かせください。

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