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テニスコートから始めよう
2年前、大学の先輩から
「サッカー教室をやらないか」と打診を受けた。
当時20歳の私は、軽い気持ちで引き受けた。
「次の週の17時にこの場所に来て」と指定されて行った場所がテニスコートだった。
私の頭の中はハテナマークが飛び交っていた。
小さな室内のドームにテニス用のネットが張られていてどう考えてもテニス以外をする空間ではない。
「ここでサッカーができるんかな。」
正直不安でいっぱいだった。
サッカーは大きなグラウンドがあってゴールがあってサッカーボールがあって成立するもの。
そこのテニスコートには、サッカーボールしか当てはまっていなかった。
数分後、テニスコートにやってきた子どもたちは元気よく挨拶をした後、なにやら準備をし始めた。
ネットを取り外して支柱を引っこ抜き、あっという間に真っさらのテニスコートになった。
私は子どもに尋ねた。
「いつもここでサッカーしてるの?」
子どもは言った。
「そうだよ。全然できるよ!」
と満面の笑みで楽しそうに答えた。
それを聞いて私は思った。
いかにもこれがないと成立することはないと大人の理屈で作り上げた空想を凌駕する純粋な楽しみ方を子どもたちは見つけることができるのだと。
かつて道路の前で暗くなるまでサッカーボールを蹴っていた自分がそうだったように。
あの頃感じていた、サッカーボールさえあればどこでも楽しむことができるサッカーの醍醐味を思い出すことができた。
その後、カンボジアで出会った子どもたちも同じ思いでサッカーをしていたのだろう。
正式にサッカー教室を引き継いで2年間。
たくさんの事があった2年間だった。
子どもたちに教えることもあったし、子どもから教わることもたくさんあった2年間だった。
子どもたちと過ごしたテニスコートでの2年間は全て自分自身の成長に繋がっている。
子どもたちの成長に貢献できたとは思っていないけど自分たちと関わったことでこの先少しでもいい方向に進んでくれることを願っている。
テニスコートという場所は20歳の未熟な大学生にとって小さいように見えてとても大きい存在であり、成長させてもらえる環境だった。
何が言いたいか。
「サッカーって素晴らしいよ。」
「スポーツって素晴らしいよ。」
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