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高速道路・トンネル・橋・高架。運転恐怖症が治りそうかもしれない話。

私は車で高速道路を走ることができない。

もっと言うならトンネルも怖いし、高架も怖いし、橋の上を走るのも怖い。特に大きい橋。まーっすぐな道も苦手かもしれない。
なんなら普通の下道でも怖くなる時がある。(全部じゃないか。)

これは、運転に慣れていなくて怖いとかではない。

私は元々運転が好きで、高校を卒業してすぐ免許を取って以来、しょっちゅう車で出かけたり、旅行先でレンタカーを借りて行きたい所をめぐったりしていた。

なぜ高速道路を走れなくなってしまったかというと、ある時期から高速を走っていると、ハンドルを握る自分の手が自分のものでない感じがして、自分でコントロールできない感覚に陥るようになったから。
ハンドルを思いっきり切りたくなるときもある。


これは普通じゃないと確信したとき。


30歳になった頃から薄々なにかがおかしいと思い始めてはいたのだけど、
決定的になったのは、33歳で初めて一人旅をした鹿児島でのこと。

鹿児島空港でレンタカーを借りて、本土最南端の佐多岬がある南大隅町へ向けて出発。

ひとまず最初の目的地までは、高速道路を使って2時間弱だったと思う。
以前からの異変で、高速に乗るのは多少不安ではあったのだけど、
時間も短縮したいし、「大丈夫だろう」と言い聞かせて高速を利用した。

高速を走り出してから、やはり恐怖心が出始めて、今すぐ車を止めたいと思いながら、「大丈夫、大丈夫。」と自分に暗示をかけるように運転していた。

高速道路はとても深い山の谷間を走っていて、これまで見たどの高速からの景色よりも壮大な山々で、自分が今どれだけ高い所を走っているのかが容易に想像できた。

それを想像した瞬間、深い谷間の高速道路をぽつんと走る自分の車を、「自分が遠い空から見ている」感覚になった。

ハンドルを握る手は遠~くに感じられ、自分が動かしているのではない感覚。

徐々に呼吸が浅くなってきて、冷や汗も出始めた。

姿勢を正してみたり、リラックスしなきゃと思って脱力してみたり、窓を開けて冷たい空気を入れてみたり、音楽を爆音にしてみたりしても全然よくならなかった。

サービスエリアで休憩をはさんでも、走り出したらすぐにまた症状がでた。

なんとか無事目的地に着いて1泊2日の観光も終えたのだけど、帰りは飛行機の時間があったので高速の使用は避けられず、本当に恐怖に耐えながら空港まで戻った記憶がある。

それ以降、徐々に高速のような高架や大きな橋、ひどいと普通の道や山道でもその感覚に襲われるようになった。
(トンネルはそれ以前から怖かったな、そういえば。)

鹿児島から帰宅後、さすがにおかしいと思い症状についてネットで調べてみた。

そしたら目についた言葉は「パニック発作」

ネットで検索しただけだし、診断を受けたわけじゃないから確実ではないけど、恐らくそうなんだろうと思う。

パニック障害と聞くと、「電車に乗れない」「大勢の人前に立てない」というイメージがあったのだけど、私はこのどちらもできる。(大勢の前は単純に緊張するから立ちたくないけど。)

色んな症状があるんだな…と思うと共に、私が??という気持ちにもなった。

認めたくない気持ちはすごくあったけど、「そんなことより治す方法だ!」
「このまま旅先で車に乗れない、遠出ができない、なんて耐えられない!」
と思い、治す方法を検索。

するとほとんどのサイトで出てくるのは、「ひたすら車に乗って練習する」ということ。

症状が出ることを心配して乗らないでいると余計に乗れなくなる。
短時間や交通量の少ない時間帯で少しずつ苦手な道を練習して、乗っても症状がでなかった!という経験を積んで、徐々に「症状がでるかも」という不安な意識をなくしていくのが大事なんだとか。

私はこの症状が出だしてからも、高速こそ乗らないものの、週末のちょっとした買い物や用事など、1時間くらいの圏内までは車に乗り続けた。
乗れなくなってしまったら「人生の楽しみ半減する!」「生活不便すぎる!」、だから「乗らなくなったら終わりだ!」と思って乗り続けた。

それでもいっこうに改善する気配はなく、「いやいや全然改善しませんけど?むしろ症状出やすくなってる?」と少し不満に思っていた。

突然の、あれ?治りそうかも?

症状が出だして早10年近くが経った。(恐ろしい!)

今年の5月。私は生まれて初めての北海道旅行に行った。

旅行中、札幌から富良野までレンタカーで日帰りすることにした。
高速は使わないようにするし、一緒に行った母も一応日常的に運転してはいるからいざとなったら交代できるし、北海道の道は広大だから大丈夫だろう!(いや、広大すぎて苦手な道の傾向にある可能性も…?)と思いながら、その日を迎えた。

札幌からしばらくは大き目の橋があったりして、「うぅ~」となりながら運転していたんだけど、ギリギリのところで持ちこたえた感じ。

だんだん街中を離れて自然に囲まれてからは、道は広いし交通量も少なく、普通に考えたらとっても気持ちよく走れる道。
だけど私には、あまり景色の変わらない広めの道=高速に近い、そして所々でまーっすぐな道が出てきて、「大丈夫かな…症状でないかな…」と心配になる道だった。(自然は大好きだから、景色には感動しまくりだったんだけど。涙)

なのだけど身構える私とは裏腹に、症状は全くでなかった。

本音を言うと、旅行前から心のどこかで「北海道の大自然と雄大さが、この症状を治してくれたりして。」なんて奇跡を期待していたりしたんだけど、なんと見事に症状なしで富良野に到着!
「すごいぞ北海道!」と思いながらその後も気分よく運転を続けた。

車中では、
私「まだ気分よく運転できてます!」
母「そうかそうか。よかったね。」
のラリーが何度も繰り返された。

ただ往復の運転で疲れもあったのか、帰り道、札幌に近づくにつれ怪しい気配がしてきたので、母に運転を代わってもらった。

それでもこの経験は自分の中で大きかった。

同じ症状を持つ人のブログの存在。

実は北海道に行く直前、なぜかまたこの症状について調べたくなって、改善方法や同じような症状の人が何か書いてないかとネットで検索してみた。

すると私と同じく高速・トンネル・橋の上を運転できないという方のブログを発見。(この方は市街地は問題ないみたい。)

その方が、「運転中に幽体離脱する」という表現を使っていて、私の手が遠~くにある感覚はまさにそれだ!と思ってちょっとうれしくなった。
しかもブログでの語り口がとてもコミカル?で、読んでいる側も深刻にならずに済んだ。

その方は、症状が出るときの状況や原因を自分なりにしっかり自己分析されていて、交通量の少ない時間帯に苦手な道路を走って改善策を試し、うまくいったら盛大に喜ぶ、という練習をされていた。

読ませて頂いた分析結果の中に、私の場合はこれが原因かもしれないと思ったものがあった。
高速のようにスピードを出して走っている場合、本来視線は前方に向いていて周りの景色はぼんやりと見ているはずなのに、景色が変わらない(単調)なためにそれが逆になってしまっているのではないか?という説。
プラス私の場合、高速・橋・高架に共通して「浮いている感覚」を感じるときに症状が出やすい気がする。

北海道では特に視線を意識して、遠~く行く先の方を見るように心掛けた。
そして「リラックス、リラックス~」と心で唱えた。
(以前もまっすぐ前を見る視線は意識したことがあったのだけど、この時に比べると近すぎた気がする。1~2台前の車を見ていた。)

この方法が効いているのか、北海道マジックなのか、旅行以後症状は一度も出ていない。

以前までは症状が出るから避けてきた道を走ってみても平気だった。
(身構えて疲れたけど。)

そんな経験が何度か続いた。

これはもしや…治りそう?

さすがにまだ高速で試すのは怖いけど、長めの高架は大丈夫そう。

症状が出ずして帰還したときは、それはそれはいい気分で。
車に乗るのはほとんど実家に帰ったときなので、帰宅する度、「今日はあの道を走ったけど大丈夫だった!」「今日は○○から○○まで行けた!」と母に喜びを伝えている。

この経験を重ねて、症状が出ていたことなんて忘れるくらいになれば、治ったと言ってもいいのかもしれない。

そこまではまだ達していないけれど、そして高速の攻略には時間がかかりそうだけど、それでも私は今希望に満ち溢れている。(運転に関しては。笑)

パニック障害について思うこと

自分がパニック障害かもしれないと知ってから、いくつか思ったことがある。

まずは誰にでも起こりうるのだということ。

パニック障害というと、メンタルが弱い人がなるものだと思われがちな気がする。実際私もそう思っていたところがあるし、自分がそうなのかもと知った時も、私メンタル弱いんだ…と少し落ち込んだ。

そんな時、いつもよく見ていた現役CAのYouTuberさんが、過去に飛行機の中でパニック発作を起こしたことがあると話しているのを見た。
CAとして何度も飛行機に乗っているのになぜ、と思ったそうなのだけど、疲労の蓄積などの色々な条件がそろえば、誰にだって起こる可能性はあるものなのだとお医者さんに言われて納得されたのだとか。
その頃ハードなスケジュールが重なって、とても疲労がたまっていたのだそうだ。
(ちなみにこの方が診断を受けたのは海外のお医者さんだったのだけど、海外の方がメンタルの病気やケアについて進んでいるというか理解があるというか、そんな気がする。カウンセリングとか、セラピーとか、みんな普通に受けてるイメージがあるんだけど、実際どうなのかな?)

とにかくそのYouTuberさんの話が聞けて、私はとても安心した。
自分が特別にメンタルが弱い人間だということではなかったのだと思えた。

疲労の面でいうと、私も症状が出始めたころは残業するのが通常運転になってしまった会社でバリバリ働いていた時期で、慣れてしまったようで気づかないうちに疲れがたまっていたのかもしれない。

そこに朝3時起床からの鹿児島旅。
うん、納得。

そして症状が出なくなったここ最近は無職な私。
労働というストレスからは大いに解放されている。
(経済的不安は抱えているのだけど。笑)

過度な疲労やストレスと、発作が発症しやすい状況が重なると、誰にでも起こりうるのだと思った。


そしてもうひとつは、パニック発作だとはっきり言わないと、周りにわかってもらえない。(特に家族などの親しい間柄)

私は運転が怖いながらも、克服するために一人で車で買い物に出かけたりしていた。ただしあくまで近場。

なのだけど、家族で少し遠くに出かけるときはできるだけ他の人に運転して欲しいから、「私はできない」と伝えると、ただただ運転が嫌だからとか、めんどくさいからしないと思われて文句を言われる。
「怖いんやってば!」と言っても、「こないだ一人でショッピングモール行ってたやん。」とか言われる。

なんとなく、「パニック障害かもしれない」と言いたくなくて、こんな症状が出るんだよと症状だけ説明してみたら、すごく納得のいかないような不思議そうな表情で「ふ~ん、そうなんや…」みたいな反応をされて少し傷ついた。

母には症状のことを言い続け、やんわり「パニック障害の可能性あるみたいよ」と伝え、どうしても苦手な道を走らないといけないときは「怖いからついてきて!」と言い続けていたら、とりあえずこの子は運転が怖いんだという意識を植え付けることはできた。
だけど、ペーパードライバーが運転を怖がるような怖さではないことや、パニック障害ということについてまで理解してくれているかは怪しい。

内面の異状って、経験のない人には本当に理解されにくいんだなと思った。
ただ「パニック障害」という言葉を出すと、相手も少しイメージしやすいように思った。


とにもかくにも、「治りそうかも!」とはやる気持ちを抑えて、着実にゆっくり焦らず克服していきたいと思う。

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