デザイナー採用に関わる方へ。本当に知ってほしい大切なこと 【7500字】
はじめまして!デザイナー特化のキャリア支援サービス「ReDesigner」でデザイナーのキャリアに向き合ったり、デザイナー採用のお手伝いをしている石原です。
みなさんからトミーと呼んでいただいているので、お会いした際には「トミー」と気軽に呼んでもらえたら嬉しいです!
(X:https://twitter.com/___Tommmy)
少し前に現職でこんなインタビューもしてもらったので、自己紹介がてら置いていきます…👇
今回、デザイナー採用に日々向き合う人事の方向けに、私が約5年、デザイナー採用に伴走して気づいたことをまとめてみました。まだまだ道半ばな内容ですが、少しでも参考になったら嬉しいです。
年々難しさが増している、デザイナー採用
2019年にグッドパッチに入社して、気づけばもう5年目。200社以上のデザイナー採用に伴走し、デザイナーの方々のキャリア支援に向き合ってきました。
その感想を正直にお伝えすると、とても苦しいことが多かったです…
私がやり取りさせていただく、人事やデザインマネージャーのみなさんは、本当に素敵な方ばかりで「前世で徳を積みすぎたか?」と思うくらいなのですが、実際にお力になれた企業の方が圧倒的に少ないからです。
会社のことをこんなに丁寧に教えてくださっているのに…
あんなに丁寧に求人票を作っていただいたのに…
なにより、ReDesignerをこんなに頼ってくださっているのに…
そう思ったのは一度や二度ではありません。あまりにご紹介ができずに心苦しいときでも、人事のみなさんは「ReDesignerさんからの推薦待ってますね!」と嫌味なく言ってくださるんです。
足りない部分は多くあり、まだまだ…ではありますが、全力を尽くしています。それでも、どうしてこんなにうまくいかないのか。思い浮かぶ理由があります。
デザイナーは、「言葉にしづらい複雑さがあるお仕事」だから、「出会うことが少ない、珍しいお仕事」だから。この2つです。それぞれについて、詳しく書いてみたいと思います。
「デザイナー」とは、どんな人たちなんだろう?
「言葉にしづらい複雑さがあるお仕事」というところから言葉にしてみたいと思います。最初に、みなさんに一つ質問をさせてください。
「素敵なグラフィックをつくる人」「インターフェイスをデザインする人」「良い体験をつくる人」… いろいろな答え方がありますし、それぞれ間違っていないと思います。ただ、
いきなり、さまざまな用語を出したので、ビックリされた方もいらっしゃるかもしれません。これは、私がデザイナー採用で関わったことがあるデザイン職種です。おそらく、みなさんの中で、すべての違いを説明できる方はほとんどいらっしゃらないのではないかな… と思います。
そうなのです。「デザイナー」と言えば、みなさんの頭の中で何かしら想像すると思うのですが、掘り下げてみると本当に複雑で奥深い世界なのです。それぞれの職種は、役割が近いものもあれば違うものもあります。一例を出すと、よくUI/UXデザイナーと略されますが、UIとUXは近そうに見えて、一緒に括ってしまうのは荒っぽい、毛色の違う職種です。
これがデザイナー採用の難度を上げてしまう一因なのです。
採用したいポジションについて、「どんな役割なのか?」「どんな経験の方だと役割を担えるのか?」を把握しようとしても、そもそもデザインの知識がないと理解するのが大変です。
さらに、求人媒体やスカウト、エージェントなどを通して採用活動をしていると、伝言ゲームの中でどんどん採用イメージがズレてしまったり、ぼやけてしまったりするのです。
ただ、この数年、さまざまなデザイナーの方と話をしていく中で、やっと「デザイナーとはどういう人なのか?」をシンプルに言葉にすることができるようになってきました。
私なりの言葉ではありますが、「人に共感し、価値を見つけ、届ける人」と考えています。少しだけ脇道に逸れてしまいますが、私がそう思うようになったきっかけのお話をさせてください。
数年前ご支援をしたデザイナーの方です。
その方は、“デザイナー”という肩書きにこだわっていませんでした。「気づいたらそう呼ばれるようになっていた」とお話しされていました。
現職では、一人目のデザイナーとしてスタートアップに参画し、新規事業の立ち上げに取り組み、気づけばデザイナー兼プロダクトマネージャーになっていました。
その過程で、会社をより強くするために会社全体の組織づくりにも関わったり、さらにリブランディングも並行して主導したり、ときにはコミュニケーションデザイン領域にも踏み入れ、コーディングもできちゃう方で…
役割は広く、どんどん染み出していっている。しかも、とにかく明るくて、話しているこちらがパワーをもらってしまう。何がそこまでその方を突き動かすのか、何がモチベーションになっているのか。気になって聞いてみました。
まさに、「人に共感し、価値を見つけ、届ける人」でした。
そのために必要なことは役割に拘らず、なんでもやる。
私は純粋に、繊細さと力強さを併せ持つ、この方たちの力になりたいと改めて強く感じた瞬間でした。
もちろん、この方のように「必要なことはなんでもやる!」という方だけでなく、プロフェッショナルに突き詰めて力を発揮している方もいらっしゃいます。
お一人お一人のスキル・経験・お人柄は千差万別です。でも、「どんなことで困っているのか?」「どうやったら、価値を感じてもらえるのか?」そんな問いにいつも向き合って、ときには苦しんでいる方がデザイナーにはたくさんいらっしゃいます。
そんな人の機微や課題に向き合う、とても繊細で、とても大切なお仕事を、私は心からリスペクトしています。今もまだ「すべてわかった!」とは口が裂けても言えませんが、知れば知るほど魅力を感じていますし、人事の方にもその魅力をお伝えできればな、と思っています。
デザインの広がりと需給のギャップ
ここからは「出会うことが少ない、珍しいお仕事」というところにも触れてみたいと思います。
私たちが運営するReDesignerというサービスは2018年5月23日にリリースしました。実は「デザイン経営」宣言が発表された日と(偶然にも!)同じ日です。
サービスリリースから数年間、今では考えられないかも知れませんが、私たちは「デザイナーの方々に紹介できる求人が少ない」ことで困っていました。Goodpatchが運営するサービスということで、デジタル領域のデザイナーの方々からご支持いただくのですが、実は当時十分な求人ラインナップがなかったのです。
しかしありがたいことに、年々企業からのお問い合わせは増加。2021年頃にはコロナ禍でデジタルトランスフォーメーションへの動きが加速し、よりデザインの重要性が叫ばれるようになりました。
企業からのお問い合わせは急激に増えていき、しまいには私たちが十分に対応できない状況になってしまいました。少し前まであんなに困っていたのに、とびっくりする変化です。
(私も最終的には担当させていただく企業が200社を超えました…!)
ここで、少し異なる目線の質問を投げかけさせてください。
意外と想像がつかないですよね。実は、国勢調査では、20万人弱と推定されています。デジタル分野以外の方も含んでいるので、デジタル分野に狭めるともっともっと少ないです。ITエンジニアは100万人ほどと言われているので、本当に珍しいですよね。
ReDesignerを立ち上げた佐宗のnoteでは、
ということも紹介されています。私からすれば、もっと少なくてもおかしくないと感じるくらいです。
デザインが広がり、デザイナーを求める企業が増え、さらに、デザイナーにはさまざまな専門領域がある。そう考えると「本当に採用したいデザイナーに出会えたら、もうそれは “奇跡” に近いような出会い」だと思うのは私だけでしょうか?
デザイナー採用を諦めない人事の方へ
ここまで、デザイナー採用をご支援してきた5年間に辿った経験をお話ししてきました。まとめるとこうなります。
実は、私は前職でもエージェントとして採用のお手伝いをしていました。そのときは、どちらかというと採用は「科学」の世界。KPIを追いかけて、量を達成することが第一。そしてその中で質も追い求める、そんなやり方でした。
ReDesignerに入社して、まったく違う世界が広がっていました。これほどまで職種そのものの理解が必要で、さらにこんなに丁寧にマッチングをする必要があるのか… 正直こんなに複雑性が高い領域だと思っていませんでした。
しかし、そんな領域に関わっているからこそ、人に真摯に向き合うことは改めて大事だと感じています。デザイナーは、サービスやプロダクトを作ったり、より良くするために、「人に共感し、価値を見つけ、届ける」ことに心を燃やす人たちです。そんな方たちと出会い、一緒に未来をつくっていく。その出会いを生むためには、同じく「想いを持ち、想いを伝える」必要があると感じています。
ReDesignerは、2024年1月にダイレクトリクルーティングサービスをリリースし、企業によるスカウト活動が始まりました。運営をしていて感じているのは、デザイナーはスカウトを「見ている」ということです。ちゃんとみなさん見ています。けど、リアクションをしていない方が大半です。つまり、心を動かしていないのだと感じています。
みなさんがもらったら、心が動かされるスカウトとはどのようなものでしょうか?やっぱり、自分のことをちゃんと見てくれている、だと思うのです。
人事のみなさんのご支援をしている中で、業務範囲の広さ、多忙さも僭越ながら感じています。忙しい中でそんな一人一人に送っていられない気持ちもわかっているつもりです。
そんな人事の方々のお話を聞いて「くう〜〜〜〜!!!自分は無力!!!」といつもなっています。今もそんな狭間でまた苦しんでいます。
しかし、デザイナー採用をする背景に、「何か課題を解決しようとしているサービスを成長させたい」「自分の会社の価値をもっと伝えたい」といった部分があると思うんです。
その一歩目として仲間集め、つまりはスカウト打つときでもデザインの力は発揮できると思います。もう最近なんでもデザイン…となるかもしれませんが、まさにみなさんのスカウトを送信する、想いを届けるお仕事こそ“デザイン”なのではと思います。
私もこうしてみなさんにお話しするだけでなく、一人一人がもらって嬉しいスカウトと、スカウトを送るみなさんも前向きなれる体験を目指して邁進しています。サービスで力になれるよう、頑張ります。
明日から採用に活かせそうなこと
ここまでいろいろなことを書いてきたのですが、「そうはいっても、採用しないといけないんです… どうすれば良いのよ?」というのが本音ではないかと思います。そこで、もし人事として転職したら?と考え、どのようなことをするのかをシンプルですがまとめてみました。(予算などは一旦置いておき…です!)
STEP 1:デザインのことを知る
まず、デザイン職種に関わることになったら、ぜひ簡単でも良いので少しだけ知識をつけることをおすすめします。社内のデザイナーの皆さんと共通言語を持つことで、一気に話がしやすくなるからです。
主な職種を知るときには、Goodpatchブログの仕事図鑑が読みやすくて、入りやすいと思います。
一通りイメージがついたら、初学者向けの書籍などを読むのも良いですし、社内のデザイナーにおすすめの本を教えてもらうのもコミュニケーションが生まれて良いのではないかな?と思います。
STEP 2:社内のデザイナーの話を聞く
ある程度イメージがついたら、ぜひ社内のデザイナーの方に勇気を出してお話を聞きにいってみましょう!お互いの自己紹介をして、自分がデザインに興味を持っていることや一緒に社内のデザインチームを作っていきたいことをお伝えすれば、協力してくださる方が多いと思います。
その方がどんなデザイン業務に取り組んでいるのか?
社内にはどんなプロジェクトがあるのか?
プロジェクトにはどんな人が関わり、どんな役割を担っているのか?
なにかチームに課題があったり、悩んでいることがあるか?
どんなチームだと理想的なのか?
など、その人やデザインチームのことを知って、いつでも相談し合える人を一人でも作れるようにしてみてください。実際に採用活動をする場面でも、デザインチームの背景情報を理解していたり、デザイナーを採用に巻き込めるかはとても大きな差につながります。
STEP 3:デザイナー採用の関連情報を伝える
社内のデザイナーと打ち解けることができるようになってきて、採用を進める場面では、人事として「デザイナー採用マーケット」の情報を伝えることを意識してみましょう。
これまで様々な会社をご支援してきましたが、「この要件だと、年収が合わない…」といったことは本当に多いです。それが起こるのは、「デザイナーは、デザイナー採用について詳しいわけではない」ということが大きいと思っています。
そして、このタイミングは人事として信頼を得るチャンスでもあると思います。ReDesignerでは、デザインデータブックという形で採用の参考になる情報もお届けしているのでぜひデザイナーの方と一緒にご覧になっていただけたら嬉しいです。
また、採用キックオフのような形で、人事がリードしてデザインチームと一緒に採用要件の擦り合わせをしていくことも良いと思います。進め方のイメージはオンラインホワイトボードのStrapにまとめさせていただいたので、宜しければご覧になってみてください!
(アクセスキー: ef20fbea1bd073d627fb712419579620)
番外編
Step1〜3を踏まえて、他社のデザイン組織がどういったことをしているのか?デザインとはそもそも何か?をインプットする際に参考になりそうなXアカウントを紹介させてください!
Cocodaさん @Cocoda_design
デザイン組織の事例についてまとめられており、「こんなにも各社の実例を見れてしまっていいのか‥!?」と驚きを隠せない濃い内容です。私も普段から熟読しています。
CULTIBASE|組織ファシリテーションの知を耕すメディア さん @cultibase
デザイナー採用特化ではありませんが、デザイン組織の拡大を考えられているなど、組織づくりに関してはやはりMIMIGURIさんのCULTIBASEは外せません。
Goodpatch Inc. @GoodpatchTokyo
弊社で大変恐縮ですが・・・・やはりGoodpatch Blogはかなり読み込めると思います。デザインの基礎知識をつける際にもお勧めしたいです。
STEP 1〜3、番外編といろいろ書いてみましたが、「そうはいっても、デザイナーとなかなか共通言語を持って上手く話せない…」ということはあると思います。状況も各社によってさまざま。先日人事の方とお酒を飲みながら…「ノウハウナレッジ系の記事を見ても、結局自社とは状況が違うから参考にならない」という話をしていました。
そのときには、ぜひ私を気軽に呼んでください!人事とデザイナーの橋渡しとして、お役に立てるのではないかなと思います!
あるべき姿を追い求めたい
長文となってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます。
本来採用はチームと人を結びつける、とても繊細なものじゃないかと感じています。
ただ、採用できないと事業が進まない、ならば採用に目標をおかなければいけない。それが、スカウトをどれくらい送信したか、どれくらいの候補者に出会えたか、などどうしても数を追わなければいけなくなってしまう。そうして届いたたくさんのスカウトにデザイナーは困り、どの企業へ返信すべきかわからず、何も返せない。
これは仕方ないことだと思っています。ただその現実を我々のダイレクトリクルーティングサービスでは変えたいと思っています。
スカウトをもらうことは困ることではなく、本来はワクワクしたり自分の頑張りや積み上げてきたことを認めてもらえる嬉しいことなはず。私たちは、至らないこともありつつ、仲間を増やしながら5年間より良いキャリア支援を探し求めてきました。企業のみなさんとパートナーとして本来の採用の姿を探し求めたいと思っています。
企業のみなさんから、伴走してほしいと思われる愛されるサービスであること。このことをこれからも心に留めてチーム全員で邁進します。
このnoteではデザイナー採用に関わる人事のみなさんにも、デザイナーとはどんな方たちなのか、だからこそデザイナーへ本当に伝えてほしいことがあることを少しでも心に留めていただけたら幸いです。
デザイナー採用に関わる方の力に、少しでもなれたら嬉しいです!
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