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乳がん

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2016年3月に乳がんを告知された当時に書いていたものや、治療がひと段落したいま思っていることなど。
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記事一覧

視点の違いに救われる...2016.9.21の手記より

視点の違いに救われる...2016.9.21の手記より

 夫は基本的にマイナス思考で人への依存度が高く、メンタルも劇的に弱い。

 本人も「自分の隣にいるまいちゃんの人生が壮絶すぎて、なぜこの人が自分の嫁なのか、わからないときがある」と真顔で言うこともしばしば。

 たしかに、彼が悩み落ち込む理由を聞くと、心の中では「はぁ〜? なにそれぇ?」と思うことがほとんどだけど、人の心の許容範囲はそれぞれ違うから、自分のさじ加減で人の心を判断してはいけない、とい

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七夕の願い...2016.7.12

 七夕が近いということで、わたしたち入院患者は看護師から短冊を配られていた。病院の外来フロアに大きな笹が2本設置されていて、そこに飾るのだという。

 わたしはその日まさに手術を終えたばかりで、起き上がることも、短冊に文字を書くこともできなかったため、ベッド脇のテーブルに白紙の短冊を置いてもらい、天井を見つめながらぼんやりと同室の患者さんたちの会話を聞いていた。ひとりは入院前に抗がん剤治療を半年間

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手術室...2016.7.11

 2016年7月1日。右乳房切除+センチネルリンパ節生検。

 昔はどうだったか知らないが、いまや手術室へは自分の足で歩いていくのが常だ。今回もそう。担当看護師と並んで、まるで今日の天気について話すような軽い調子で、手術前に確認しておくべき事項をすり合わせながら歩く。

 そうして手術室の前へ着くと、扉がスッと開かれる。

 手術室に足を踏み入れると、なんとなく高揚する。肝臓の手術のときもそうだっ

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すべてが必然である…2016.5.10

 あらためて考えると、本当に笑ってしまうくらい必然だった。

 昨年からわたしは、自分の力だけではどうにもならない出来事が続き、ほとほと疲れ果てていて、未来へつながるようなことをしておきたいと考えていた。そうしてマンションを探し始めたのが今年の初め。同じように家探しをしている友人たちはみな、2年も3年も探し続けていると言っていたので、一筋縄にはいかないだろうと思っていた。

 ところが、中古マンシ

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わたしはまだ、涙を流していない…2016.4.20

 先日、とあるテーマについて取材を受けているなかで、「喜怒哀楽はありますか?」と聞かれた。理屈っぽいわたしに業を煮やしたインタビュアーが聞いてきた言葉だった。

 わたしは考えた。

 喜は、ある。
 怒は、まだ少しだけある(ほとんどが夫に対して)。
 哀は、ない(自分に向けての哀しみ、という意味で)。
 楽は、たくさんある。

 ほかの感情についても考えてみる。

 自分と他人を比較したときに起

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two weeks…2016.4.7

 正直にいうと、気楽に過ごせてはいたものの、前の一週間はとても長いものだった。が、この一週間はあっという間に過ぎていった。というのも、ほとんど毎日病院へ通い、数多くの検査をこなしていたからだ。

 マンモグラフィからはじまり、骨シンチや首とリンパのエコーなど。まだ来週も少し検査が残っているが、現在行なっているのはおもに、「乳がんがほかの臓器に転移していないか」を調べるものだ。

 自分よりもはるか

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one week has passed…2016.4.2

 一週間前から、わたしは“乳がん患者”になったわけだが、いままで過ごしていた日常から突然切り離されて、「わたしって乳がん患者なんだ」と塞ぎ込んでしまうようなタイプでもなく、病気のことをすっかり忘れてヘラヘラとしていた時間のほうが多かったように思える。

 とはいえ、そうやって時間が過ごせているのには理由がある。

 数年前にわたしは、とある製薬会社のオンコロジー情報サイト制作の仕事を請け負い、がん

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2016.3.25

 不思議と哀しみはなかった。早かれ遅かれ、自分の身に起こるだろうと、頭の片隅でつねに思っていたのかもしれない。医師の説明を聞きながら、「ああ、そうか。最近はこうやって、あっさりと告知されるのか」と思った。

 この日、わたしは乳がんを告知された。

 右胸の精密検査をするのは3回目だった。というか、2010年にFNH(限局性結節性過形成)という肝臓の特殊な腫瘍が見つかって以来、わたしにとって病院は

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