two weeks…2016.4.7

 正直にいうと、気楽に過ごせてはいたものの、前の一週間はとても長いものだった。が、この一週間はあっという間に過ぎていった。というのも、ほとんど毎日病院へ通い、数多くの検査をこなしていたからだ。

 マンモグラフィからはじまり、骨シンチや首とリンパのエコーなど。まだ来週も少し検査が残っているが、現在行なっているのはおもに、「乳がんがほかの臓器に転移していないか」を調べるものだ。

 自分よりもはるかに高齢のがん患者であふれかえる病院へ毎日通い、がんの転移を調べる検査をいくつも受けていると、「おまえは、がん患者だ」と念を押されているような錯覚にだんだんと陥ってきて、気が滅入ることもあった。完全にその空気にのまれた日もあった。

 骨シンチの検査をした日の夜中、突然目が覚め、一瞬だけ死がすぐ横に座っているような気がして、初めて恐怖を感じた。右胸がなくなるイメージがくっきりと頭に浮かび、初めて恐怖を感じた。

 なるほど、感情というのはこうやって移り変わっていくものなのかと思った。

 それでも──たとえ転移があろうと、自分にはなにをすることもできない、というのは完全なる事実であって、その事実に恐怖することは不毛だと思った。そう、思考をかならず、そこへ戻そうと思った。ようするに、医師に任せるしかないのだ。自分は変わらず、これまでどおりの日常を過ごしておけばいい。だって、この右胸の乳がんは、ずっとこれまでもあったのだから。

 言葉のつくる虚像にのまれるな。

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