ポエティックストーリー『ノーメイクハートを抱きしめて』
ノーメイクハートを抱きしめて
顔を見たとたん、
まるで映画のワンシーンのように、
ボクの胸に飛び込んで泣き出したキミ。
その髪の甘い香りに
ボクの心はとろけそう。
不思議だねこんな時、
行き交う人の目、気にならないね。
思わずキミを涙ごと、
ギュッと抱きしめてしまったよ。
ノーメイクなんだね、キミのハートは。
ピュアなハートで攻められたら、
ボクなんかイチコロさ。
さァ、泣きくたびれて涙が涸れたら、
今度はキミの微笑みに触らせて。
恋は季節の風の如く
気がつけば、
雑踏の中にキミの姿を求めるボクがいた。
まるで季節の風のように、
あっというまに過ぎ去ってしまった
ボクたちの日々。
お互いをろくに知り合いもせず、
愛してるなんてささやいて…、
空しさだけが心に残り、
今はため息で生きるだけ。
行き交う人の波、時の流れ、
すべてがボクを置き去りにしてゆく。
二度目のすれ違い
横断歩道の向こう側、
友達と笑い合う懐かしいキミの姿を
見つけたよ。
最初の言葉と笑顔を用意して、
ボクはキミを見つめてた。
やがて信号が青になり、
人の波が流れ始めて…、
キミたちは相変わらず楽しそうに
おしゃべりしながら、
ボクの脇をすれ違い、
通り過ぎて行ってしまった。
ボクに気づかないキミに、
やはりボクのほうからは
声をかけることは出来なかったよ。
いつも一緒にいたあの頃ならば、
超能力があったのにね。
ボクからの電話はすぐに当てたし、
玄関のドアさえ通してキミが見えた。
一年前の秋の日に打った、
二人の恋の終止符。
ちょっぴりボクがいけなかったけど、
素直に謝ればよかったけれど、
若さはそれを教えてくれない。
だから今、
心の中でキミに「ごめんね」。
今日のさよなら
四本の線路を隔て、
キミと向かい合って立っている
プラットホーム。
キミの電車が入って来たその瞬間、
ボクは声を出さずに叫んだよ。
「愛しているよ!」
ちょっと首を傾げて微笑みながら
こちらを見ているキミをの姿を、
ヤボな電車がかき消して、
おまけにキミを連れ去って行く。
いつの日か、永遠に別れのない日々が
きっと来るように…と、心で祈りながら
今日の「さよなら」を言った。
End
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