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子供のフリ見て我がフリなおせ

「もう痩せんでもいいやん!」

私は狂ったように雄叫び、家族をドン引きさせた。

「痩せたい、痩せていない自分は価値がない人間だ」という、自分で勝手に作り上げた価値観に、これまた勝手にしがらんでいた自分を、みずから解き放った瞬間だった。

私は、自分自身をありのまま受け入れることにしたのだ。

とはいえ、私は今までに、血がにじむような壮絶なダイエットをしていたわけでもなく、痩せていたわけでもない。
痩せたい気持ちが先走りすぎて、自分を見失しない、「自己流ダイエット風ダイエット」というトンチンカンなことをしていただけだ。

私は、炭水化物は敵だとかいって、お米をほとんど食べてこなかった。

お腹がすいたら、食パンか惣菜パンを食べていたのだ。そのせいか、いつも何か物足りなさを感じ、心おだやかではなかった。
精神がちょっと不安定だったのだ。

「好きな食べ物はおパンですのよ」とどこかのマダムにでもなったつもりで、お米を食べないことをイキっていたし、そんな自分をかっこいいとさえ思っていた。

お米を食べると、結構お腹にずっしりくる。その反面、パンを食べても腹八分目で、あまり食べていない錯覚におちいり、なんとなくダイエットができていると思っていたのだ。

そもそもパンは炭水化物。単純に私は無知でアホなだけだった。

だが、今年の4月に、私が何年も続けていた、悪しき食生活を改めるきっかけとなる事件が起きたのだ。

娘から突然、「食事をすると、気持ちが悪くなって吐いてしまう」と告白をうけた。しかも、顔は半べそ。

「がーん!!」

ただならない不安を感じた。

私は極度の不安症で、「娘が死んだらどうしよう」と、うろきてしまい、頭が真っ白になった。

「なによりも真っ先に、娘を病院に連れていかねばならぬ」

だけれども、私の足は、あまりの不安のために、アホの坂田ばりの千鳥足になってしまっていた。
それでも「娘を助けねば」という責任感から、「えんやこら、どっこいせ、しっかりせえ」と、自分自身にハッパをかけながら、地下鉄に乗り、なんとか娘を病院まで連れて行った。

無事診察を終えた娘に下された診断結果は、「ひどい便秘のため胃腸に不調がおきた」ということだった。
簡単にいうと、ウンチがでないのでお腹が張っていたのだ。お腹が張った状態で食事をしたことで、お腹が気持ち悪くなり、ついには吐いてしまっていたらしい。

病気ではないとのことで一安心。

本当によかった。

娘が重大な病気でなかったという安堵から、病院から帰るときには、私の中のアホの坂田は完全にいなくなっていた。

私にはたくさん反省すべきことがあった。
娘は、私の不規則な食生活を真似て痩せようとしていたようだ。
娘はもともと体質的に便秘気味なのに、不規則な食生活をしたため、便秘がさらにひどくなってしまったのだ。そんな悪いコンディションのままで食事をし、お腹が気持ち悪くなるという、悪循環を起こしていた。

親として、人間として大反省だ。

その一件から自然と、「痩せんでもええやん。ありのままでええやん」という気持ちが芽生え、「自己流ダイエット風ダイエット」をやめた。

あれ食べちゃだめ、これもだめ、と制限ばかりしていた食生活をやめ、食事を楽しむ生活に変えていった。というか、人間らしい食事に戻しただけだ。

不思議なことに、今は、食事制限をしていた頃より体重が減っている。

私は、「自己流ダイエット風ダイエット」中、おそらく、つまみ食いを散々していたのだと思う。私の中ではつまみ食いは食べたことになっていなかった。名の通りつまむ程度で、一度に食べる量が少ないから、ほとんど何も食べていない気になっていたのだ。しかし、トータルするとガッツリ2食分くらいは食べていたのだと思う。

ともあれ、今はお米が美味しくて仕方がない。

「僕は、やっぱり、おにぎりが大好きなんだな」と名言を残した、山下清画伯並みに塩むすびが大好きだ。

痩せていないといけない、というしがらみから抜け出し、心も体も健康に過ごせている毎日に、ありがとさーん。

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