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想い出の北谷
「おかあさんカメラかして!」
張り切って買った一眼レフカメラをかして欲しいとねだった娘。
渋々手わたした直後、「私より格段に写真がうまい」と膝から崩れ落ち、娘に敬服した写真。
娘はこの時小学生だったようだ。
好きで好きで、なんど通ったか数え切れない沖縄で、いつ撮ったものかあやふやな思い出画像がパソコンの中でちゃんぽんしている。
これは北谷を訪れた時のもので、晴れたのはこの一瞬だけ。残り5日間は台風のため海で泳ぐことは叶わず、「行かんといたらよかった」と子供たちの純粋ゆえストレートすぎて、ランボーが持っているギザギザで鋭利なナイフのような感想が、私の胸をねじってえぐり、最後には心臓を突き抜けて背中に貫通した。
ボロボロの心と、大量の水分を含んだように重くなった身体を引きずり、グレーな景色をうす目で見ながら、自宅への帰り道をたどる途中、私たちが沖縄で過ごしていた5日間、大阪は雲一つない大晴天だったことをタクシーの運転手さんの言葉で知った。
「沖縄はずっと台風で残念でしたわ」
「ほな、ずっと大阪におったほうがよろしおましたな」とタクシーのおっちゃんは、バックミラー越しに、無邪気な笑顔で無遠慮に吐き散らした。
「おのれ...」
私は歯を食いしばり、後部座席の窓に頭突きをし続けた。
くめども尽きない想い出のある沖縄。
仕事が忙しくなり1年間ご無沙汰したのち、予期せずコロナがやってきた。そのせいで約2年間沖縄の地を踏んでいない。生きることを否定されているようだ。
とにかく早く飛んでいきたい。
写真の整理をしよう。
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