綾辻行人「奇面館の殺人」、新本格ミステリとの出会い

2010年 私とライトノベル

私は中学2年生だった。
もはや年代だけでピンとくる方もいるかもしれないが、
私が中学生の頃はライトノベル全盛の時代だった。

「涼宮ハルヒの憂鬱」、「とある魔術の禁書目録」、「生徒会の一存」、「これはゾンビですか?」、「バカとテストと召喚獣」、「僕は友達が少ない」「僕は友達が少ない」、「灼眼のシャナ」…

学校近くの本屋に通っては、4Fのライトノベルコーナーで新刊を購入するのはもはやルーティンであった。
勉強もそれほどせず、モンハン2ndGとラノベにばかり興じる私を見て
親はさぞかし将来を悲観したことだろう。

2011年 新書への傾倒

中学の卒業アルバムの編集委員をやっていたちょうどその時に東日本大震災が発生。
四国では特に被害が発生することにはならなかったが、
念のため校舎から避難したグラウンドで「M7.7(初報段階)の大地震があった」と聞かされた時、阪神淡路大震災がM7.3ということを思い出して
血の気が引いた。
家に帰ったその時にテレビで報道されていた、津波に飲まれる仙台空港の様子は死ぬまで忘れることはないと思う。

それが一つのきっかけとなり、高校に進学後、新書にのめり込んだ。
購読していた雑誌にコラム連載をされていた斎藤環氏(精神科医)や
雨宮処凛氏(作家、活動家)の著書に始まり、興味の湧いたあらゆる分野の新書を買いあさった。
通っていた高校には毎朝10分間の朝読書の時間が設けられていたが、それで到底足りるはずもなく、毎朝クラスで2番目か3番目に登校しては
40~50分読書に費やした。

しかし、新書はたかが高校生が読み漁るには大きな問題があった。
情報が古くなった新書は価値が大きく落ちてしまう。
なんなら記載されている内容が現在では誤りであるという場合もあるため、古本屋で安く手に入れてもどうにもならないというケースがままある。
この頃にはすっかり本の虫であったため、読書欲を満たしてくれて、かつ
古本屋などで入手しやすいカテゴリを探していた。

2012年 「Another」と「奇面館の殺人」

高校二年生に進級する頃、深夜アニメ「Another」が放送された。
とはいえ通しでは見たことがないのだが、ニコニコ動画に転載された
一部シーンを見るだけでも、ライトノベルにありがちな日常もの、異能バトルもの、ラブコメものとは全く異なる陰鬱でドロドロした作風に、
逆張り精神ながらとても心を惹かれた。
「こんな異質なライトノベルを書く人の、本業であるミステリはどんな作品なんだろう」
そういった思いで書店の一角、綾辻行人氏の著作コーナーを見に行った時に新刊として目に留まったのが、
講談社ノベルス版の「奇面館の殺人」だった。

一癖も二癖もある登場人物、
奇妙な「館」と、そこで起こる異質な事件、
主人公・鹿谷門実の見せる華麗な謎解き。

私はあっという間にミステリのとりこになり、
綾辻行人氏や有栖川有栖氏の主要刊行物全コンプリートなどを
実施することになるが、それはもう少し先の話。

おわりに

テーマが「人生を変えた一冊」ということであること、なにより
ミステリというネタバレ厳禁なジャンルを挙げるということから、
本の内容というよりは、「いかにして読書遍歴のターニングポイントになったか」にフォーカスして書いてみた。
作風という点で一番好きなのは、ミステリより幻想ホラーと言うべき
「囁き」シリーズであることを付記して終わりとする。

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