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SF小説 「Bull & Gate 2231」< 2231年の暑い夏ロンドンにて>

"Bull & Gate 2231" (2231 hot summer in London)
あらすじ:
 2231年 ボクは自分のアイデンティティを消して、謎のバーで秘密情報を追っている。女性型アンドロイドのスティファニーと出会い、情報を得て、組織の隠れ家をつきとめる。 金髪の青年とミドリ肌のオプタス星人との対決の後、ボクに待っていた結果とは? 人間の心も持つまでに進化したアンドロイドは、輪廻転生するのか? 

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Synopsis:
2231: I erased my identity and pursued secret information in a mysterious bar. Meet the female android Stephanie, get information, and find the hideout of your organization. What was the result of waiting for me after the confrontation between the young blond man and Alien Optus? Is an android that has evolved to have a human heart reincarnate?

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 1、@BULL&GATE (ブル&ゲイトにて)

ここは昔、ケンティッシュタウンと呼ばれていた北ロンドンの場所にあるパブ&レストランだった。いまでも相当まずいパブランチを出していたが、夜はバーで人がいっぱいだった。
その入り口近くにルミナス紙でできた発光電子動画ポスターが貼ってあった。そのポスターには、極彩色の美しいフェニックスと半裸の髪の長い女性のイラストが描かれていた。それ自体がハーフ3D形状で浮かび上がっていて、なめらかに光彩を放っていて、半裸の髪の長い女性がしなやかに踊っていた。その発光電子動画ポスターに魅せられて、ボクはそこにいるのかも知れなかった。

 そう、ボクは何故か、そこBULL&GATEブルアンドゲイトという所にいた。でも、何の目的だったのかは、あのアクシデントがあるまで思い出せないでいた。
 今夜の演奏者のラインアップが発光電子動画ポスターの中で揺らめいていた。その文字は、艶かしく踊る女性の胸元と髪に絡まって蠢いていた。
今夜の演奏者のラインアップは、
【Flying Sausur Attack on Earth】 【EXIT】 【Fureasteen】
 そしてメインアクトは 【Me & Bloody Valentine】

 黒革パンツの細身のバーテンダーが忙しく動いているバーの向こうに、そのステージが見えた。坊主頭に骸骨の刺青をしたバーテンダーは、英国ロイヤル紋章をプリントした黒シャツを着ていた。そして、バーカウンターのリカーが入っているブーストブロック棚の上には、英国国教会のアーチビショップがかぶっていた帽子がアクリル盤に防御されライトアップされ飾られていた。

『In the name of Holy Ghost, BULL & GATE (聖霊の御名において.ブルアンドゲイト)  
 寄贈 2016年10月12日 ジャスティン・ザ・ アーチビショップ 』
 このジャスティン・ザ・アーチビショップは、ボクの記憶だと、ジャスティン・ポータル・ウェルビー、政治家であり、105代目のカンタベリー大司教だった。 

ステージ上にある壁面いっぱいのプロジェクターに、フィルムが流されていたり、それこそ大昔に流行したライブペインティング動画が流れていた。多くの男女がゆらゆらと低いモーツァルト電子交響楽に身を委ねていた。カウンターバーには、魚頭のトーキングヘッズTVたちが並んでいて、休む暇なくジャンクのような情報を垂れ流していた。

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 2、ステファニー・セイズ

 黒革パンツのバーテンダーがヘッドセットのインカムマイクに怒鳴りながら、ウエイトレス・アンドロイドに指示を出していた。

ボクはバーテンダーに【デス・スパム】というカクテルを注文した。しばらくしてから、そのウェイトレス・アンドロイドは、ガイコツ型チェリーを入れた真っ赤な飲み物を持ってきた。

 少し古い型なのかも知れない・・・

 ウェイトレス・アンドロイドはギクシャクした動きでグラスをボクの前に置いた。彼女の左腕のタグには、ヘルベチカ書体で4ポイントぐらいしかない大きさで数字のコードが並んでいるのが見えた。そして更に小さく認識できるか、できないぐらいでStephanieステファニーと刻まれていた。

 人間はアンドロイドに、女性の母性や男性の父性を求めてきた。それこそ、狂った科学博士が亡き妻を蘇らせたり、多くの物語で語られてるようなこと。必ずといっていいほど、女性アンドロイドに豊満な胸を持たせた。

しかし、この女性アンドロイド・ステファニーは、グラマラスであるけど、やたらに胸だけを強調しているフーボー型アンドロイドとは違っていた。
カウンターの向こうにいる骸骨頭のバーテンダーがステファニーを呼んでいる。

「アラスカ!お前、何オイル(油)差してんだよ!人(Man)がいなくて忙しんだから、いい子(cat)にしておくれよ~~」バーテンダーはニヤりつきながら、墨色のくちびるの中の金歯を光らせて、その聞き取りにくい北ロンドン・アクセントで言った。そして、バーテンダーは、ボクに片目でウインクをした。

 彼女がなぜアラスカと呼ばれているのか?

 ボクにはすぐにはわからなかった。

 アラスカ・・・

 アンドロイドだから、冷たい心をもっているのでアラスカなのか? アラスカというのは、例の大戦の時に、海に沈んでしまった土地ではなかったか? それとも、ゲーテの「ファウスト」に出てくる新しい隆起してできた島?「認められた土地」を意味する "Alyeska"の名前だったか? ともかく多くの誇り高き兵士たちが眠っている場所だ。

 1950年代から受け継がれてきたというジュークボックスから流れてきた音楽で少しわかったような気がした。
 「Stephanie says」♪という1960年代に活躍したイカれたバンドのポップソングだった。「Heroine」なんて曲を書く奴らだ。


 そうだ、ボクの名前は『LOUルー』じゃなかったかな?そんなことをそのポップソングを聞きながら思った。自分の名前を確かめたくて、自分の持ち物の中から自分のことが証明できるものを探し始めた。 腰につけた金色の端末機械をバーカウンターの上にのせた。タッチパネルを操作して、自分アイデンティティナンバーを確認した。そこには、名前など書かれていなくて、コードだけが浮かぶあがってきた。

 名前なんてないんだ・・・
 名前をわからないようにしているのか?
 それとも名前など元々なかったのか? 
 でも、名前がないとわかると、ボクがここにいる目的もなんとなく思い出してきていた。

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3、REMIND me Later

 デス・スパムに口をつけた。 辛みを帯びたそのカクテルに、ボクはむせて、口から赤い液体をこぼしてしまった。まるで血を吐いているみたいに見えたはずだ。

スティファニーは、すぐに笑いながら近づいてきてナプキンで口をぬぐってくれた。ボクは、左内ポケットに入っている電子リボルバー銃を隠そうと彼女の身体の反対側をむいた。そしたら少しかたむいてスティファニーの胸にぶつかってしまった。彼女の胸にあたって、ボクはアンドロイドではない香ばしい匂いを感じた。

 「あ、ありがとう」ボクはナプキンを彼女の手からとって、口をぬぐった。

 その時、スティファニーが長い髪の毛を「You are welcome...どういたしまして」といいながら髪をかきあげた時、頭皮に少し剥げたメッキが見えた。

・・・そうだ、思い出した・・・

1秒間に24コマ以上のフラッシュバックイメージが現れては消えた。

 そう、このヒューマノイド型アンドロイドは、その完璧な皮膚をたもつためにすさまじい労力を強いられるのだ。毎日、後頭部にあるパネルをあげてケーブルをつないで、マザーコンピュータを起動させログインする。そうして細胞を活性化させるスティマライザーと呼ばれるウイルスが注入される。そうすることで、栄養を補充して、肌を若返らせていくのだった。

1週間怠ると、まず皺がくしゃくしゃになる。

2週間で完全に白髪頭。1ヶ月で動けなくなり、ベッド生活。

2ヶ月で生命の危機に陥るであろうと言われていた。

 ログインパスワードは、常に変えておかないといけないのに、保存できない。パスワードを食べるバグが存在して、常に宙に舞う電波を捕らえようとしているからだ。

「・・・そうだよ、オレはパスワードを食べるバグを大量生産している組織を追っているんだったよな!こんなバグなどを作る組織を壊滅させて、スティファニーや苦しんでいる人たちをボクが救ってやるんだ・・・」

「そう、救いはすぐそこにあるよ」「I save you…」
 ボクはスティファニーが渡してくれたナプキンに、ある場所が書かれているのを見ながらつぶやいた。

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4、ファーイースティン 【fureasteen】

 ステージ前は広々としていた。ドット柄のワンピースをきた少女がひとり立っていた。モーツァルト電子交響楽の音が小さくなっていき、しばらくして演者の3人が、そのテーブルを囲むように座った。

長身の男性と黒髪の女性、そして髪の長い青年の3人。ゆっくりと座って、長髪の男がパネルのスイッチを入れると、低い電子ベース音がうねりを上げながらスピーカーから流れ出てきた。

 彼らは3人とも小さいテーブルにキーボードやその他の電子楽器を無造作に置いていた。めちゃくちゃにつないであるケーブルがそれぞれのジャンクな機械につながれていた。

 女性演者が奏でているであろう電子銅羅の低い音が重なった。軽い金属の鍵盤打楽器がボロンと葉っぱからこぼれる水滴のように打ち続き、心地良さが耳を覆った。先程までのバーで臭っていた魚臭い空気は去り、葉緑が刻まれた新鮮な空気あたりが流れはじめた。

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 演奏が続くに連れて、スクリーン上に眩いばかりの光が飛び込んできて、全体の音を加速させているようだった。白い光りの中にプリズムが当たって、7色の光線がカーブを描いて観客席に突っ込んできた。音楽も大きなシンバル音と共に、硬いドラムがミニマムなリズムを刻みはじめた。

 スクリーンに大きな文字で

【fureasteen : kashiotelemusik】

というタイトルが浮かんでは消えた。

 長身の演者が大きく開いた右手で、指揮をするように他の二人に合図をすると、スクリーンには大アンドロメダ星団が怪しく映されていた。そして、ゆっくりと画面は変わり星空に大きな銀色の人工衛星が浮かび上がっていた。ミドリ肌のオプタス星人が作った人工衛星群だった。激しいビーム音がリズムと同調して、
ムオーーーーンという低いベース音が腹を揺らした。

 人工衛星にズームインすると、衛星の小さな窓がうつり、更に映像は衛星の内部に入りこんでいった。そして、小さな部屋にカメラは入りこんだ。ここまで、一連の動画は編集されていなく小型のロケット付きドローンで映されているようだった。 そして、次に小さな少女が白い椅子に座りながら、こちらに微笑んでいるのが映っていた。ボクはその少女がすぐにアンドロイドだということがわかった。少女の青い瞳にフォーカスされていった!そして、スクリーンいっばいに巨大な少女の目が映し出されていた。スクリーンにはまるでそこにあるかのような少女の巨大な青い瞳が、すべての観客を舐め尽くすように動いていた。

 曲調は変わって、ピアノの単調な連打がしばらく続いていた。観客席のどこからか、プラスティックのボトルが巨大な目に投げ込まれると、驚いたことにスクリーンに移し出された目は、投げ込まれた方を睨んだ。!!!たぶん、タイミングでそのように見えたのだろう…しかし誰もが一瞬たじろいだ。


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