情シスとユーザー部門との「分かり合えない問題」を解決しよう
こんにちは。製造業で情シスマネージャーをしているまさです。
私たち情シスは、企業のデジタル化という大波の中で、日々新しい技術と向き合い、業務の効率化を推進しています。しかし、その一方で、ユーザー部門との間には、しばしば大きな壁が立ちはだかります。
情シスの皆さんへの質問です。
ユーザ部門からの信頼を得ていますか?
ユーザー部門の皆さんへの質問です。
情シスを頼りにしていますか?
もし、両方の答えが「はい」なら、それは理想的な関係です。しかし、現実はそう簡単ではありませんよね。どちらかが「はい」と答え、もう一方が「いいえ」と答えることが多いのではないでしょうか。あるいは、残念ながら、両方とも「いいえ」ということも。
今回は、情シスとユーザー部門の間にある壁をどうやって取り除くかについて、私の体験を通じて考えてみたいと思います。
▶私の会社で起こっていること
私の会社では、次のようなことが起こっています。
情シスの取り組みが理解されない
事業部門の基幹システム刷新プロジェクトを進めていても、ユーザー部門が新しい仕組みを受け入れようとしないことがあります。これは、新しいシステムへの移行が、彼らにとって大きな変化であり、不安を感じるからかもしれません。しかし、このような状況は、プロジェクトの成功を大きく阻害します。ユーザー部門の信頼が低い
その結果、ユーザー部門は独自にプログラマーを雇い、個別システムを作ってしまいます。これは、情シスが提供するソリューションに対する信頼が低いことを示しています。また、このような行動は、情シスとユーザー部門の間の溝をさらに深めることになります。情シスの葛藤と疲弊
ユーザー部門をコントロールしようとするほど、情シスは新しい挑戦を諦め、既存のシステムを守るだけになってしまいます。これは、組織全体のイノベーションを阻害し、長期的には企業の競争力を低下させることにつながります。
なぜこのような事が起こってしまうのでしょうか?
それを解決する糸口とヒントを得るため、私はイベントに参加しました。
▶イベント・レポート
ここからは、3月13日に参加したイベント「なぜ、情シス部門と業務部門は分かり合えないのか」から得たヒントを共有します。
エン・ジャパンの高橋さんは、事業部門からデジタル変革(DX)を推進し、ノーコードツールを活用して成功を収めました。そんな高橋さんをはじめとしたエン・ジャパンさんの取り組みは、私にとって大きな示唆を与えてくれたのです。
登壇されたエン・ジャパンの高橋さんは、事業側(営業企画部門)からDX推進をされた方で、そのアプローチ手法は、事業部門側でデジタル人材の発掘と育成を行い、実現手段としてノーコードツール(kintone)を活用した事が特長です。
①分かり合えなさと歩み寄り方
エン・ジャパンの高橋さんは、イベントの冒頭でこう切り出しました。
「そもそも情シスと事業部門が分かり合えないのは当たり前です」
まず私は、高橋さんのこの第一声に共感を覚えました。
ビジネスの言葉を使うユーザー部門と、システムの言葉を使う情シス。このギャップによる分かり合えない状態と同じ問題が自社で起こっていて、その問題を乗り越えるには、「分かり合えなさがあるのを前提として、お互いにどう歩み寄るのか」という視点が必要だという事を感じていたからです。
講演の中で高橋さんは、両者の分かり合えなさに対する「歩み寄り方」について次のような具体的な解決策を示されています。
イベントの中で高橋さんは、両者のコンフリクト(意見・感情・利害の衝突)の大きな原因が、お互いの言葉の違いを合わせるスキル(言語化力・洞察力・本音引き出し力)が不足しているからである、と指摘しています。
対話の中で相手から「そう、そう、それなんだよ!」をどれだけ引き出せるかが「両者の分かり合えなさの解消」につながる、と。まさにコミュニケーションにおける「景色合わせ」ですね。
②相手の世界で言語化できる人材とは
お互いの言葉の違いを合わせるスキルを持つ人材のイメージについて、サッカーの戦術に例えたお話がとても分かり易く印象に残ったので紹介します。
ビジネスで成果を出したいフォワード(FW)がユーザ部門、点を取られないよう守りを固めるのがディフェンダー(DF)である情シス。時には攻撃的に、時には守備的な立場をとって両者の間でゲームを的確にコントロールするミッドフィルダー(MF)がデジタル推進人材だ。という面白い例え話をされていました。
デジタル推進人材は、中田英寿・遠藤保仁・中村憲剛・長谷部誠・遠藤航・守田英正のようなリーダシップがあり、広い視野を持った人材というイメージでしょうね。
③発掘と育成はどこがどうやる?
講演の後半は、いよいよ「デジタル推進人材」をどこで発掘し、どうやって育成するのか?という具体的なお話に突入します。
高橋さんは「スピード感を持って進めるのであれば、まずはユーザー部門(事業部門)で推進して人材を育成すべき」とお話されました。
私の会社に当てはめて考えても、情シスが全ての業務を理解してユーザー部門に対する提案から構築までをすべて行うのは現実的ではないと思います。
しかし、その一方で「ユーザー部門がデジタル人材育成を行うにあたり、まず自分達が業務改善をしてその活動時間を捻出する必要があった」。という事も言及しています。
「まずは自分達から」。その覚悟を持ってやり切った実行力は素晴らしいと感じました。
現在は、このアプローチ方法と仕組みをサービスとして企業に外販されています。その様子をnoteやXなどSNSでも発信されていますので、興味のある方は覗いてみてください。
▶情シスがやるべきこと
さて、我々情シス部門に目を向けましょう。
情シスは何もしなくて良いのでしょうか?
デジタル人材育成をユーザー部門に任せておいけば良いのでしょうか?
情シス部門も、ただ傍観しているわけにはいきません。以下の取り組みが重要と考えます。
特に、一番最後の「ユーザー部門に寄り添い、相手のミッションに合わせて業務改善を一緒に進める」事が一番重要ではないかと思います。
情シスが、ユーザー部門の人以上に業務を理解することはできません。それをするためにユーザー部門に張り付いたり、異動しても逆効果です(迷惑がられてしまう)。
それでも、情シスが情シスの立場でできることをやれば良く、たとえそれが成果につながらなかったとしても、諦めないで全員が腰を据えて取り組むことが大切だと考えます。
「時間が解決してくれることだっってありますから(高橋さん)」と言う言葉を信じて。
最後に、エン・ジャパンさんと同様にノーコードを活用したデジタル人材の育成を行っているジャトコさんの事例(ジャトコモデル)をご紹介してお開きにしたいと思います。
ジャトコさんのモデルは、ノーコードによる市民開発の弱点を以下の2つの観点で見事に解決しています。
ひとつは、「データマネジメントの観点」をノーコード開発に対しても明確に定義付けしたことで、間接業務の基盤においてもデータの一元化を担保したこと。
もう一つはノーコード開発に対して、一定のルールを設けたことで「野良アプリ乱立問題」を回避しています(仕様書を残す、開発した当初はトライアル運用扱い、運用が継続できて初めて本運用に昇格する、部門側で品質の責任を持つなど)
▶ゴールに向かって
実は私、半年以上前に高橋さんとWebで1on1の会議をさせて頂いたことがありました。その時はまだ、自分自身が上記の「デジタル人材育成」について明確なゴールやミッションを描けておらず、なんとなくふんわりした形で終わってしまいましたが、今では私自身がデジタル人材育成のゴールを描きながら、日々活動をしています。この道のりは一筋縄ではいきませんが、時間を味方につけ、着実に進んでいこうと思います。
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