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民意が反映されない「金権政治」の仕組み⑥警察の監視強化と支配

民意が反映されない「金権政治」の仕組み⑥警察の監視強化と支配

なぜか国民の民意が反映されなくなってしまった日本政治の世界。日本社会(政治・経済)などで、何が起きて、このような事態が起きているのか?を読んだ本を参考にして、シリーズで「強欲資本主義」の正体や仕組みを探っていこうと思います。

今回は、警察権や盗聴・傍聴・監視などが強化されていって
国民(奴隷)の管理が猛スピードで進んでいるという話

堤未果「政府はもう嘘をつけない」


堤未果「政府はもう嘘をつけない」

読んでいくのはこちら。堤未果さんの「政府はもう嘘をつけない」です。
第2章から抜粋していきます。


隠して通したい「電話一本かけるだけで通信傍受し放題になる刑事司法改革法」

第三者の立会いは不要になり、警察署から電話一本かけるだけで国民の電話を聞いたり、メールやブログやSNSなどに私たちの知らないところでログインし、その内容を見たりすることができるようになる
警察が盗聴した電話やメールの扱いについて外からチェックする第三者機関は、今のところ存在しない。

●隠して通したい「電話一本かけるだけで通信傍受し放題になる刑事司法改革法」

今回の「刑事司法改革法」についてはどうだろう?
5大紙やテレビの取り上げ方を見ると、その多くが、法案の正式名より「取り調べ可視化法案」という別名で報道しているのがわかる。
束ねられた4つのうちの1つ「取り調べ可視化」は、以前から日弁連などが、警察や検察による密室での自白強要などを防ぐために必要であると主張していたものだ。多くの報道は、この法律によって「取り調べが可視化され、現状は大きく前進する」と強調している。

だが実際は、録音録画で可視化される事件は全体のわずか3%のみで、どこを出すかを選ぶのは検察側だ。しかも警察の取り調べは対象外のため、これでは自白を強要した後で撮影した映像を出すことも可能になってしまう。
つまり、「取り調べ可視化法案成立!」とニュースの見出しにデカデカと出す割には、その効果に首をかしげる内容なのだ。

では、大きく報道されていないほうの箇所を見てみよう。

「刑事司法改革法」には他にも、軽犯罪にも国が選んだ弁護士を無料で派遣する、容疑者が他の容疑者について警察に話せば刑を軽くする、などと並んでもう一つ、「通信傍受の対象拡大」という箇所がある。

これは一言で言うと、警察が市民の電話やメール、ブログやSNSなどの通信を傍受(いわゆる盗聴)する権限を大きく広げる内容だ。今まで警察は、犯罪捜査の一つとして市民の通信を傍受するためには、裁判所の許可を取ってからNTTなどの通信関連業者の立会いが必要だった。
だがこれからは、第三者の立会いは不要になり、警察署から電話一本かけるだけで国民の電話を聞いたり、メールやブログやSNSなどに私たちの知らないところでログインし、その内容を見たりすることができるようになる。
警察が盗聴した電話やメールの扱いについて外からチェックする第三者機関は、今のところ存在しない。
「プライバシーの侵害だ」「営論弾圧につながる」といったような反対の声も出ていたが、
大手マスコミのニュースは「下の温床になっている取り調べの可視化を進める」ことのほうを大々的に報道し、すぐに次のニュースが話題を上書きしてしまった。
私たちがこのまま黙っていれば、3年以内にこの法律は施行されてしまう。

「緊急事態や治安維持という言葉とともに、警察権限が拡大されてきたら要注意です」

堤未果「政府はもう嘘をつけない」第2章p153〜155

警察権限が拡大されてきたら要注意

国民の電話やメール、ブログやSNSは警察に見られ放題になったアメリカデモや集会で大量の逮捕者が出るようになった
ジャーナリストの逮捕者数は史上最大になった
通常戦場で敵に向けて使用される音響兵器「LRAD」も使用
警察の軍事化が異常

●警察権限が拡大されてきたら要注意

「緊急事態や治安維持という言葉とともに、警察権限が拡大されてきたら要注意です」
アメリカ自由人権協会のスティーブン・パリシュは、9.11以降急激に当局からの監視が厳しくなったアメリカの現状に照らし合わせてこう語る。

「9.11後のアメリカでも、テロを防止し、街の治安と秩序を守るためだと言って愛国者法が導入され、国民の電話やメール、ブログやSNSは警察に見られ放題になったのです。反政府デモや集会で大量の逮捕者が出るようになり、ジャーナリストの逮捕者数は史上最大になりました。
セントルイスのニュースを見ましたか?武装した警察が市民に何をしたのかを?
日本もぼんやりしていると、行き着く先はあれですよ」

2014年8月9日。
アメリカミズーリ州セントルイス郡ファーガソンで、18歳の黒人少年マイケル・ブラウンが、警官に射殺される事件が起きた。
人口わずか2万1235人のうち6割が黒人、地元警察の9割は白人が占める町だ。

人口わずか2万1235人の町で年間3万通以上の逮捕状が発行(1世帯につき3通だ)されていたが、それらは主に富裕層が住む再開発地区ではなく黒人住民が貧困地域で発行されている。歪んだ経済的動機を根深い人種差別が後押しし、黒人住民への職務質問が圧倒的に多いのだ。
日頃からそうした警察のやり方に不満をためていた住民の怒りは、加害者の白人警官が不起訴になったことをきっかけに爆発した。
激化する抗議デモは略奪にまで発展し、ニクソン州知事は非常事態宣言を発動、
それは1991年にロサンゼルスで起きた「ロドニー・キング事件」を思わせる。
複数の白人警官が一人の黒人運転手を暴行した動画が拡散したことをきっかけに、抗議デモが略奪に発展した事件だ。

あの時と一つだけ大きく違うのは、事件の直後に繰り広げられた異常な抗議デモ鎮圧の光景だろう。戦闘服を着用し、アサルトライフルで武装したファーガソン市警察が、デモ隊に向けて次々にゴム弾や催涙ガスを使用、最後は装甲車で住民を排除したのだ。
ワシントン・ポスト紙とハフィントンポストの記者2名は、マクドナルドからの退去命令に即従わなかったとして警察の特殊部隊に逮捕された時の様子を、自身のブログやツイッターで拡散している。
武装警察は拡声器で、これ以上の集会の禁止と、従わなければ逮捕すると威嚇、記者たちが動かないでいると、やがて耳をつんざくような音が響き渡ったという。
それは「LRAD」と呼ばれる、通常戦場で敵に向けて使用される音響兵器だった。
セントルイスの飲食店に勤務するラリー・シェルマンは、深刻化する警察からの暴力に反対の声を上げる一人だ。

「政府は90年代から、軍で余った武器を全米各地の警察に無料提供したり、装備購入のための助成金を出しているのですが、2001年の9.11事件以降、『テロの脅威』を理由にその規模が急激に拡大し、警察の軍事化が異常になっています。
市民の安全を守るのに、なぜ軍隊の装備が必要なんでしょう?アサルトライフルや撃銃・・・・・・ファーガソンでは、町のパトロールや簡単な家宅捜査にまで、SWAT(特殊部隊)が軍の装甲車でやってくるんですよ?何かが狂っているとしか思えません」

堤未果「政府はもう嘘をつけない」第2章p155〜158

軍から警察への巨額の装備移転

軍需産業や警産複合体が巨額の政治献金をして過剰軍備が支給される
過剰軍備の矛先は、テロの脅威でなく地域住民に向けられている
情報拡散を阻止するために、ネットを取り締まる法律を次々に提出
警察が住民300万人とディズニーリゾートに来た観光客1600万人の携帯電話を盗聴

●巨額の装備移転

ラリーが見たという、パトロールに使われていた装甲車の代金5万ドル(約3600万円)は、国土安全保障省からの助成金、つまりアメリカ国民の税金で支払われている。軍から国内警察への余剰武器付与は、1997年に「1033プログラム」と呼ばれる規定によって法制化された。
以来、全米の警察には年間平均5億ドル(約500億円)の軍装備が付与され、2014年までの総額は43億ドル(約4300億円)に上るという。前述したスティーブン・パリシュが所属するアメリカ自由人権協会は、市民を守る警察に軍備は必要ないと訴え、1033プログラムへの反対キャンペーンを展開中だ。

「過剰軍備の矛先は、テロの脅威でなく地域住民に向けられます。
そしてその背景には、我々国民の税金が湯水のように使われることで笑いが止まらない軍需産業や警備関連業界の存在がある。

誰が考えても警察にこんな装備は必要ないのに、軍需産業や警産複合体が巨額の政治献金をしているせいで、政治家たちはますます業界利権のためにテロ対策予算を拡大するという、悪循環ができてしまっているのです」

「でも、今はこうした事件が起きれば、市民がすぐにネットで全国に拡散するのでは?」ファーガソン市武装警察による住民や記者への暴挙は瞬く間にネットで拡散され、それをきっかけに、全米各地で警察の暴力に対する抗議デモが再び始まっている。
パリシュはうなずいた。
「その通りです。だから政府は、ネットを取り締まる法律を次々に出してきています。カリフォルニア州議会では、スマートフォンのカメラに停止機能搭載を義務化する法案が通過しました。我々自由人権協会の調査で、同州オレンジ郡アナハイムの警察が、過去10年にわたり複数の都市で住民300万人とディズニーリゾートに来た観光客1600万人の携帯電話を盗聴していたことも明らかになりました。わかりますか?警察権限拡大と、盗聴と言論弾圧はセットなのです」

堤未果「政府はもう嘘をつけない」第2章p158〜160

日本でも広がる警察権限拡大と、盗聴と言論弾圧はセット

日本でも、持ち主への通知なしでスマホのGPSの位置情報を取得できる機能が実装されるようになった

●日本でも広がる警察権限拡大と、盗聴と言論弾圧はセット

日本でも、持ち主への通知なしでスマホのGPSの位置情報を取得できる機能が実装されるようになった
そして日本でも、徐々に同じ流れができつつある。
2015年6月。
総務省による「個人情報保護法ガイドライン改正」により、企業は個人情報の使用目的を、本人の同意なしで変更できるようになった。
それから1年後の2016年5月。同年夏から発売されるスマホの一部新機種から、持ち主への通知なしでGPSの位置情報を取得できる機能が実装されることが発表された。対応機種は段階的に拡大されるが、今後警察は電話の持ち主に知らせずに、スマホの位置情報を取得できるようになる。そして、ここに来て再浮上しているのが、2012年に野田佳彦元総理が国連で公約した、「共謀罪」だ。

アメリカでは公民権運動から50周年を迎えるいま、キング牧師の憂えた人種問題が、あの時とは別の目的に向かって歪められ、権力と利権を暴走させている。ミズーリ州が露呈したアメリカ社会の変質が鳴らす警鐘が、後を追う日本の私たちに聞こえるだろうか。

堤未果「政府はもう嘘をつけない」第2章p160〜161

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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