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2014年8月の記事一覧
第62話 友人の話-同居人
「もうずぅっと、彼女なんておらんのに!」
外食チェーンで居酒屋の店長をしているモチダくんはそう怒る。
昨年、転勤があり、引っ越すことにした。
独り身だし、勤務時間が長い仕事なので、住む部屋にはこだわらない。
通勤の便がよく、家賃が安ければOK。
その条件で見つけた部屋だった。
3階だが目の前を新幹線の高架が走っており、あまり環境はよくない。
さらに「薄暗くて、なんや変な臭いがするなぁ、って
第61話 友人の話-駆除
「お祖母ちゃんに怒られてから、ほとんど人に話したことはないんです」
子どものころ、サカイさんはよく不思議なものを見た。
「押し入れの隙間からのぞいている人とか、墓地を飛んでいるボールみたいなものとか……」
報告すると、家族からは「そんなものはいない」と否定された。
信じてくれるのはただひとり、少し離れた街に住む母方の祖母だけだった。
彼女もまた、見える人だったのだ。
サカイさんの力はだんだ
第60話 友人の話-続き
「前世のことって、責任をとらなきゃいけないものなんでしょうか?」
ひとり暮らしをしているクリヤマくんの家に、ある日女性が訊ねてきた。
見知らぬ人だったが、休日で暇だったこともあり、なんとなく家に上げた。
「フツーの感じだったし、古い知り合いかな、と思ったんです」
30代半ばというから、クリヤマくんと同世代だ。
顔を見ていると、なんとなく懐かしい気がしてくるが、名前はわからない。
小学校の同級
第59話 友人の話-福の神
コデラくんは警備員をしていたことがある。
仕事先は、古い商業施設で、巡回とトラブル時の対応が主な仕事だった。
「基本的には暇でしたね」
面倒なのは、テナントで万引きがつかまったときくらい。
ほとんどの時間は詰め所にいて、定時に巡回するだけ、という楽な仕事だった。
ただ、冬に入って、少し事情が変わった。
テナントからのトラブル対応要請が増えたのだ。
「浮浪者がウロウロしてたわよ」
苦情を受
第58話 友人の話-おかえり
キノシタさんはお祖母ちゃん子だった。
「両親が共働きだったので」
幼少時から、同居しているおばあちゃんが面倒を見てくれた。
母親よりもおばあちゃんが好きだったという。
「学校から帰ると、いつも『おかえり』って迎えてくれて」
どんなに嫌なことがあっても、その声を聞くと元気を取り戻せた。
そんなお祖母ちゃんば亡くなったのは、彼女が小学2年生のときだった。
大きなショックを受けたキノシタさん
第57話 友人の話-躍り食い
子どものころしばらく、ノガミくんは奇妙なものが見えた。
「オタマジャクシというか……」
丸い頭に尾がついている。
色はさまざまだが、ほとんどは灰色。
それが尾っぽをくねらせて、フワフワと宙を泳ぐのだ。
見え始めたのがいつごろのことかは覚えていないが、小学校に入るころには、ほとんど見えなくなったという。
「手で触ると、ヌルッとグニッとしててな」
家の中で見かけることもあったし、外で見ること
第56話 友人の話-インフルエンザ
ベテラン教師のイザキさんは気をつけていることがある。
「霊感のある子は要注意なんですよ」
過去に一度、騒ぎを経験しているためだ。
数年前、イザキさんが勤めていた中学校で、学級閉鎖が起きた。
体面を気にする私学のため、表向きの理由はインフルエンザとされたが、副担任だったイザキさんによると、真相は違うのだという。
「6月ですよ。インフルエンザはないですよ」
きっかけは遠足だった。
「あま
第55話 友人の話-深夜の盆踊り
市役所の水道局は夜勤業務がある。
「浄水場の夜勤はおいしいねん」
機器に異常がないか、見張る仕事だが、トラブルはほとんど起きない。
漫画を読んで時間を潰すだけ。
「それで夜勤手当がつくねん」
それほどおいしい仕事は経験したことがない。
経験者のコウノさんは懐かしげに笑う。
ただ、そんな職場にもかかわらず、一度だけ辞めようか、と思ったことがあるという。
配属されて半年ほどたった秋のことだ
第54話 友人の話-念願
「お客にカナイっていうのがいて」
居酒屋でアルバイトをしていたショウジさんの話。
市役所の清掃局に勤めるカナイくんは、週に2日はやってくる常連。
霊を見るのが夢、と語っていた。
怖い思いをしたいのではない。
100%好奇心から、なのだとか。
あるときショウジさんの勤める居酒屋に新人の女の子が入ってきた。
「それが、けっこう見える子で」
男性客3人のテーブルにつきだしを4つ出したりする。
第53話 友人の話-コナレル
大学を卒業してしばらく、キノモトくんは就職もせず、建設作業員のアルバイトをしていた。
いわゆる土方である。
身体は辛いが、実入りはけっこういいし、束縛もない。
お金が要る分だけ働けばいい、というのが気に入っていたのだ。
「それやのに、嫌な奴がいてな」
その男は、よくお世話になっていた商業ビル建設の現場に、出入りする発注元の正社員だった。
現場には、年老いた作業員もいる。
自分より弱そう