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鳥取県民もよく知らない、鳥取のらっきょうのこと。

今年もらっきょうの季節がやってきました。
6月に入ると県内のあちこちで地元のらっきょうが売られています。一年のうちでこの時期だけの、風物詩ですね。

ところで、スーパーで売っているらっきょう。特に手しごとで漬ける生らっきょうには、2種類あることをご存知でしょうか? 旬の生野菜で売られ方が違うというのはずいぶん珍しい食べ物かもしれませんね。

「土付きらっきょう」「洗いらっきょう」

売り場にはこの2つが並べられているのです。

「洗いらっきょう」

らっきょうとイメージしてパッと思いうかぶ姿がこちらではないでしょうか。白くて細長い、つやっとしたらっきょう。こちらは名前の通り、洗ってきれいに加工されたらっきょうのことを指します。

根も茎もきれいにカットされ、砂も皮も取り除かれているので、シーズンになると「そのままお酢に漬けるだけでかんたん漬け!」といった商品が店頭に多く並びます。

白くパリっとしたらっきょうはすぐに漬けられるのでお手軽です

「土付きらっきょう」

一方、土付きというのは(鳥取では本当は砂なのですが)、文字通り土(砂)がついたままのらっきょうです。

今回の主役はこちらの「土付きらっきょう」
土付きとは言いますが、実はそのまま掘りたてというわけではなく、手仕事しやすいように手が加えられています。

砂の中から掘り出した状態は、こちら。

畑から掘り起こされたらっきょうは青々とした茎やしっかりと張った根がついています

砂もたっぷりついていて、青々とした茎の部分と、10か月間砂の中で根を張っているのでしっかりとした根がついています。

こちらを「根付きらっきょう」用に加工するために、まず茎と根が短くカットされます。

この作業、とてもとても手間のかかる作業です。ですので、この時期だけの「切り子」という短期バイトが発生します。

5月頃になると、らっきょう農家さんは一家総出はもちろん、親せきや友人知人だけでなく、多くのバイトの切り子さんが家の軒先やガレージ、時にはテントを張って暑さと戦いながら切っていきます。

と、ここまでは多くの鳥取県民はご存じ、、、のはず。

でも、実際にこのらっきょうを作業したことがあるか、、、と聞かれると多くの方が実はらっきょうを漬けたことがない、土のついた状態のらっきょうを触ったことがないという方が多いのも現状です。

そこで、私たち泊綜合食品が2018年から始めたのが、「初めての親子らっきょう教室」という企画です。子供はもちろん、その親、さらにはその祖父母世代まで一緒に参加して頂いて、名前は知っている身近なものだけど実際料理したことないよ、という親子にらっきょう漬けを体験してもらおうと、地元スーパーサンマートさんとの共同企画で開催しています。

らっきょうを知ってもらうための「親子らっきょう教室」


私たちが行うらっきょう教室では、この砂のついたらっきょうを漬けこんでいきます。ここからするんですか、、、とびっくりされる保護者さんもおられるのですが、ここが醍醐味ですので!!と励ましながら頑張ってもらいます(笑)

鳥取県民といえども、実はらっきょうがどういう所で、どんな風に育って、収穫されるかを知っている方は多くはありません。他県の方と同じように、らっきょうといえば、白くつるっとしたこの形をイメージされる方がほとんどです。

らっきょうの茎部分をどうきるかによってらっきょうの見た目がだいぶ変わってきます

「土付きらっきょう」は、根のついた状態のらっきょうを購入された方が、自分で根を切り、茎の部分の長さも切ることで、自分の好みのらっきょうのサイズに変えていくのです。

とは言っても、好みのらっきょうのサイズ、適正なサイズが分からない。そうです、初めて自分で切るのだから分からなくて当たり前なのです。

らっきょう教室では、
「どれくらいに切ったらいいですか???」
という質問が一番多く聞かれます。
これはおうちで自分で漬けられる方は一度は迷うポイントではないでしょうか。

先が長すぎると口の中に繊維質が残ってしまうこともありますが、細長いものが好みなのか、丸っこいのが好みなのか。

大人は「らっきょうはこういう形」という概念があるのですが、これを子供たちに切ってもらうと、気持ちよくドンドンすぱすぱと切っていくので見ていて面白いものです。

子供向けのクラスでは、包丁は危険なのでキッチンバサミで切っていきます。子ども達だけでなく、意外と包丁を使わずにキッチンバサミできれいに仕上げてられる大人の方も多かった今年のらっきょう教室。根を切りすぎることもなく、きれいな仕上がりになるようです。

包丁でカットしたかのようにきれいに切ってくれます

子供たちとつけもの教室をすると、大人の想像もつかない理解力や実行力、発想力に感心させられます。

なるべく子ども達だけで出来る工程にしますが、作業を通じて子供たち同士が協力したり、親子やきょうだいで工夫したり、自然と連帯感が生まます。お姉ちゃんが薄皮を剥く、妹ちゃんがはさみでカットする、お母さんは仕上げの確認をする、と連係プレイも見られてほっこりしました。

初めてのらっきょう作業に親子や家族で集中して挑戦してくださいます

ところで、教室では漬けるだけではなく、らっきょうについても勉強します。

四季に添ったらっきょう畑の様子やらっきょうの花について。
また、植え付ける時の作業がすべて手作業であることの大変さというか過酷さについてもお話しします。

「らっきょうの植え付けの時、1粒のらっきょうの種球を手のこぶし1個分おきに植えるんだよ~」という話は大人でもご存じない方がほとんどです。
こうした実際の作業風景をじっくり見ることもないので、動画もみんな食い入るように見てくれるのです。

らっきょう教室の前半の作業で、自分たちで1時間以上かけて1㎏のらっきょうの皮を剥いたり、切ったりという体験をした後なので、1粒のらっきょうの手間のかかることが身に染みています。

そんな大変な作業を体験してもらった後なので、実はらっきょうを収穫して、出荷するまでにはこんな作業があるんだよ、ということをお伝えすることで、もう農家さんへのリスペクトしか生まれません!!

小学生のみんなが毎年遠足でいく砂丘のすぐ裏がらっきょう畑であることも知らないことも多く、意外と自分たちの身近にあるものなのだという発見もしてもらいます。

1粒1粒に手間はかかるけれど、大事に食べてくれる気持ちが伝わる教室です

実は、鳥取県の給食では小学校はもちろん保育園幼稚園の頃から、年中通してらっきょうサラダなど、食育としてらっきょうが出ることがあります。

当たり前の食材として食してきたらっきょうに、こんな大変な手間のかかるストーリーがあるとは!と、みんな驚き、大事に食べようと思うと感想をくれたりもします。それに、みんなで作業して作り上げることで、食べ物の大切さを知る心が育つんだろうなぁと感じます。

らっきょうは地元の特産品としてはなかなかにアクが強く、決して主役になれる食べ物ではないかもしれません。
でも、鳥取の特産物、100年以上の歴史のある食べ物として、お子さんから大人まで色んな方に愛される郷土の味になってくれたらなと願うし、そのために出来ることは続けていこうと思うばかりです。


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