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大根不足でたくあん不安の一年

11月11日。……といえば「ポッキーの日」「チーズの日」「チンアナゴの日」と、様々な記念日が思い浮かぶと思いますが「日本記念日協会」によるとその数は54件もあり、10月10日と並んで「最も記念日の多い日」そうです。実はその中に「たくあんの日」もありまして。

「1111」が、たくあん用の大根を並べて干してある様子に似ていること、たくさんの『わん((1)あん)』があるからだそうです。(全日本漬物協同組合連合会が制定)

確かに、そう言われてみれば、、、

1が並んでる

1111、、、見えないこともないですね。はい。

さて、というわけで本日は大根の話。

12月が近づくと、つけもの屋は忙しくなります。たくあん用の大根が仕上がってくるからです。

たくあんの一大産地である宮崎の「大根やぐら」は、12月から2月にかけて見られる冬の風物詩。

整然と並べられた大根のやぐらは圧巻です

この大きなやぐらに大根をかけて、寒風で2週間ほど干し上げます。

降り注ぐ宮崎や鹿児島の太陽と山から吹き降ろす寒風が、風味豊かな干し大根を作るのに適しているそうです。約2週間は昼夜を問わず、上質な天日干し大根をつくるために、雨で濡れないようにシートで覆ったり、寒波で凍ってしまわないようにストーブを使用するなど手間暇かけた作業が続きます。

12月頃から本格化して、2月頃まで繰り返されるので、あちこちの畑に巨大な大根やぐらが出現します。令和3年2月に「大根の干しやぐらをシンボルとした宮崎県田野町、清武町の畑作」が、「日本農業遺産」にも認定された、まさしく日本の伝統です。ちなみにグッドデザイン賞の「地域コミュニティづくり」部門、グッドデザイン・ベスト100にも選ばれているそうです。

宮崎市のHPでは地域の風景として紹介されています

大根は干すことで、うまみが凝縮され、食感が増します。この地道な作業が、美味しいたくあんの秘訣です。

ところで、たくあんになるための大根は、9月下旬頃から種を蒔き、11月下旬頃から収穫されます。その後、「大根やぐら」にかけられて、そのまま天日干しされたり、塩押しだいこんとして生のまま加工されていくのですが、、、

昨年、2022年9月中旬に九州を襲った台風14号による大雨で蒔いた種が流され、鹿児島・宮崎の生沢庵用の大根産地では播き直しを余儀なくされてしまったのです。

播き直しとは、、、種まきをやり直すこと。

台風後から再度種まきをスタートしましたが、例年より3週間遅れとなり、生育が見込めないところは播き直しできず、蒔き直しを行わなかった畑は例年の1~3割まで収穫量が落ちました。

さらに九州全体で年末から年明けの寒波の影響を受け、干し大根は2~3割減、生大根は1~2割減と、かなり厳しい原料状況となりました。

たくあんの原料となる白首大根

九州の大根が厳しいのは分かった。では他の地域ではどうでしょうか?

大根とひとことに言っても、7月から10月までに出荷される大根は夏大根と呼ばれ、北海道や青森県が主要な産地となります。

で、今年はこの地域も厳しかったわけでして・・・・

  • 2022年の台風11号・12号で北海道、青森県、秋田県の青首大根に被害

  • 5月下旬の例年以上の高温

  • 6月上旬の想定外の積雪

  • 6月下旬から7月上旬にかけての例年以上の降雨

といった不安定な天候の影響で作付けができず、生育にも遅れが出たことでたくあんが欠品・出荷調整が余儀なくされたのです。

浅漬タイプのたくあんや大根漬の原料は、その時期に収穫される大根を原料とするので、旬の産地が不作になると契約した数量が入荷せず、原料の確保が困難に、、、

さらに10月に入ると千葉県や石川県などの大根が出回るようになりましたが、千葉県では播種時期の高温により欠株が多くなっていることに加え、台風13号が産地を直撃するというこれまた被害があり、、、、、

つまり昨年から今年にかけて、大根にとってはとんでもなく厳しい年だったわけです。つまり、たくあんもできない。あまり知られていないかもしれませんが、実はついこないだまでたくあんの出荷制限が続いていたのです。

深刻な大根不足。つけもの屋、たくあん不安。


市場規模約3600億円超のと言われる漬物カテゴリーの中で、たくあん・大根漬は約419億円(2021年)と、高いシェア率を誇っているおつけもの。

もちろん、とまりのつけものでも人気です。

発酵熟成した深みのある味わい、パリっとした食感、言わずもがな日本人のソウルフード的な存在ではないでしょうか。

日本人のソールフード、たくあんはまさに日本の歴史

そのたくあんが不足している。それはそれは、つけもの屋にとって不安な日々でした……。

でも、11月に入って徐々に出荷制限も解除。どうやら、この冬の種は順調に育っているとのことでした。

ふー。ようやく、つけもの屋の葛藤の一年も終わりつつあります。

つけものって保存食のイメージもあるかもしれませんが、やはり旬のお野菜を漬けて食べるのが一番美味しい。だから、どうしても自然環境に左右されてしまうんですよね。

これからも、地域の特色が活きた、美味しいおつけものをお届けできるように頑張っていきます。

美味しいたくあんをどうぞ。
とまりのつけものでは、各産地の食べ比べご準備してお待ちしております


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