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らっきょうは、育てるだけでなく、収穫すらも手間がかかる野菜です。

今年のらっきょうの収穫が終わりました。2023年は全国的に豊作年だったようで、鳥取は全体的に球の大きならっきょうに育ちました。私たちの自社農場でも過去一番の収穫量となり、スタッフがやりがいを感じられた収穫でした。

これが畑から収穫されたばかりのらっきょう。
どうです? 立派なものでしょう?

今年は全体的にしっかりと玉太りした大きめならっきょうです

さて、ここから一般の野菜であれば選別・洗浄を経て出荷され、皆さんのお手元に届きます。しかしらっきょうは、そう簡単に出荷させてもらえません。というか、収穫の段階からかなり大変なのです。

あまり知られることのない、らっきょうが商品となっていく様子を今回はご紹介したいと思います。

下準備その1. 地表にある葉っぱを切りとる

収穫はほぼトラクターに専用の掘り取り機を取り付けて機械で行われますが、その時にながーい葉っぱがついていると機械に絡まりジャマとなり、機械にも良くありません。

そのため、まずその葉っぱを取り除く工程を行います。地上に出ているらっきょうの葉の根元くらいまでカットしていきます。

長く伸びていた葉っぱが切り取られて畑の中がすっきり

下準備その2. 切った葉っぱを寄せていく

切った葉はそのまま畑に残ります。写真の白っぽく枯れている藁みたいなところが刈り取られたらっきょうの葉。このままだと、掘り取り作業の時に機械にこの葉っぱごと絡まってしまうので、登場するのがこの機械!!

道路工事とかでアスファルトの表面を掃除しているような感じですね。

カットされたらっきょうは、これくらいの長さになり、畑もこの通りすっきりした状態になります。

切り取られた葉っぱがなくなると、らっきょうの姿が見えてきます

ようやく、 らっきょうを掘り起こしていきます

ここまでが収穫の下準備。ようやく掘り起こしです!!
天候や面積にもよりますが、今年のうちの畑では、ここまでに2~3日かかりました。小さな農場でさえこの手間なので、大きな畑で作付けされている農家さんの手間ははかりしれないですね……。

さて、「掘り起こす」という言葉がぴったりな、掘り起こし作業。

砂中に20㎝くらい根を張っているらっきょうを、まさに根こそぎ掘っていきます。掘られたらっきょうはポンポンとトラクターに積まれたコンテナの中に飛び込んでいきます。これ、結構気持ちがいいんですよねー。ずっと見ていられます(笑)

番外編 掘り起こしトラクターの調整も地味に大変

この掘り取り機はコンテナ上部の葉が格子状になっていて、そこを通り抜けて砂を落としながら、コンテナに入る仕組みなのですが、格子部分にはどんどんらっきょうの根が絡まっていきます。

内部を下から見るとこんな感じ。この根っこが引っ掛かると作業効率も悪くなるので、定期的に取り除いてあげる必要があるのです。これも地~味に手間がかかるんですよねぇ。。

コンテナで運ぶのもまたひと苦労

ようやくコンテナに収まった大量のらっきょうたち。一つのコンテナにつき約20㎏。コンテナ内が均等になるように手作業で整えられたら、ここから肉体労働です。
手作業でトラックいっぱいに積み込んでいきます。畑の中にはリフトは入れないので、人力しかないのです。途中からはずっと汗だらけですよ〜。

そして満タンになったトラックは、そのまま運ばれていきます。
この時期、鳥取市内では軽トラがひっきりなしに行き来してしており、まさに季節の風物詩とも言える光景です。

こんな大量に乗ったトラックが市内あちらこちら走っているのが鳥取の風物詩

さて、このらっきょうたちがどこに運ばれているかというと、意外にも普通の民家に到着するんです。

収穫後のらっきょう加工を行うのは、実はほとんどが「らっきょう切り子バイトさん」。この時期だけの仕事として、近所の農家さんをはじめとした地域の方が自宅の玄関先やガレージで作業するのです。

熟練の技が光る! 根切り作業

根切りというのは、らっきょうの葉と根を切り落す作業のこと。
作業台に包丁を取り付けて、らっきょうの根っこ部分と頭の部分をスライドするようにあて切っていきます。

この作業風景がなかなか不思議な光景でして、、、

包丁が刺さっているかのような光景は衝撃です。

なんと、、、包丁がむき出し!!

一見危なく見えますが、押し当てて切るにはこれが最適なポジションなんだとか。この作業、ベテランの切り子さんはすごいスピードでさばいていきます。まるで精密機械のよう。

リズム良くタッタッタッタと切っていく。動画でみると実に簡単そうですが、見た目以上に難しいんですよ。根っこの固い部分は残さないように、でも深く切りすぎると芯が抜けて漬物にしたときのシャキッと感が失われてしまうので、アーチを描くように繊細に切り落としていく。

うーむ。。職人技。

このプロフェッショナル集団は、1日で約20㎏のコンテナ × 8個を根切りをしてしまうそうです。

ちなみに、根切り専用も機械もあるのですが、機械よりベテランの切り子さんの方が圧倒的に早いのだとか。まさに神業。。

この工程を経て、ようやく見慣れたらっきょうの形になってきましたね。

丸みを帯びたコロコロしたらっきょうの形が見えてきました

ところでこのらっきょうの加工作業、日本各地でやり方が異なるようです。九州の方では、切る前にさきに塩漬けされます。塩漬けして保管された後、濡れたまま根切りしていく。うちでもご依頼を受けてこのスタイルで加工することがありますが、濡れたらっきょうを包丁で切っていくのはすごく時間がかかるし、切りにくい。でも、これが九州のらっきょうらしい味に繋がるんですね。地域性が色んなところで出ています。

余談メモ

真っ白になって、漬け込み。ようやく完成です。

さあ、ここからが最後の行程。形が整えられたらっきょうを洗浄し、塩水での「漬け込み」に移ります。

ここから塩水に漬けこまれて1年を通して低温で保管されます

約500㎏入る巨大なタンクに最適な濃度の塩水を作り、らっきょうを入れ、時間が経ったらまた入れ替え。かなりの重労働ですが、この漬け込みの作業が発酵の具合を左右し、身がギュッと引き締まった仕上がりになるかが決まります。

この辺りの塩梅は各企業それぞれですが、とまりのつけものでは2回の漬け込みを行っています。しっかり乳酸発酵させ、再度新しい塩水で漬け込むことで、より芯のある味に仕上がるのです。
ちょうど7月の終わりの今頃、2回目の漬け替えが始まります。

漬け上がったらっきょうをまた選別し、袋詰めしてお届けとなります

最後に味付けを行い、皆さまの食卓へとお届けします。ふー。今年も大変でしたね。

漬物は、やっぱり旬のものを収穫してすぐに加工するのが美味しいもの。だからこの時期は、らっきょう屋さんにとっては目が回る繁忙期であり、同時にお祭りのようなテンションの日々でもあります。

それにしても、今年は豊作で何より。大粒でシャキシャキの、いいらっきょうをお届けできそうです。ぜひご賞味ください。


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