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【完全無料記事】ようこそ。意外と知らない数の世界へ。【実数とは何か】

こんにちは。とまねぎです。
今回の記事では、高校の授業では
伝えきれない数の世界について
その歴史と一緒に解説していきます。

私たちの身の回りには
様々な数が存在しています。
1,2,3…のような
基本的な数から始まり、
0や分数、小数、負の数など
一口に「数」と言っても
様々な種類があります。
そして、その1つ1つに
歴史や特徴があるんですね。

別に歴史なんて知らなくても
問題は解けます。

でも、教育学的な観点からすると
「何故数学を勉強するのか」
この問いに対する答えは
「問題を解けるようになるため」
ではありません。

もちろん受験のことを考えると
問題が解けるようになることも重要ですが、
「人類がはるか昔から継承し
発展させてきた数学を、
更に発展させることに貢献する」
これも、いくつか設定されている
数学を学ぶ理由の一部です。

「更に発展させ、貢献する」ことは
正直スケールが大きいので、
せめて人類が発展させてきた
数の歴史について触れることにも、
一定の価値はあると考えましょう。

今回の記事では
「へえ、こんな歴史があるんだ。」
「だから必要なんだね!」
「なるほど。記号って大切だわ…」
など、意外な発見、驚き、そして
ちょっとした納得感があると思います。

こうした驚きや納得感は
数学の歴史を感じるだけでなく
皆さんの人生を
ほんのちょっとだけ彩ることに繋がり、
少し大げさかもしれませんが
豊かな人生を送ることに繋がる。
…かもしれません。

これは他の学問についても
同じことが言えますが、
「学ぶ」ことで皆さんの
「見える景色が変わる」んです。
ほんの少しだけ、ですけどね。

新しいことを知ることで、
ほんの少しだけ物の見方が変わる。
その積み重ねでいつの間にか
自分の見えている景色が変化していく。

自分の見える景色が変わると
ちょっと素敵なことに気付けるようになったり、
知らなければ考えないようなことに
思いを巡らせたり、豊かな時間を過ごせます。

すぐに変化を感じることは難しいですが、
この記事で少しでも多くの方の
「見える景色」が、ほんの少しだけ
色づけば良いなと思います。

話が大きくなってしまいましたが
高校生の立場からお話しすると、
この記事で解説する内容には
今後数学を学習するうえで
重要になる知識もあります。

直接的に
「問題が解けるようになる」
というより、
「数学を理解しやすくなる」
と言った内容です。
役に立つ知識であることは保証します。

それでは、前置きはここまでにして
さっそく始めていきましょう。

ちなみに、この記事では
「数字」と「数」、
それぞれの言葉を使い分けます。
「数字」とは0~9までの記号で、
「数」とは「数字」という記号を使って
表現される値のことです。






意外と知らない数の歴史

自然数とは何か

数の中で最も古い歴史を持つもの、
それが自然数です。
英語で言うとnatural numberです。
そのままですね。

正の整数とも紹介されることもあります。
これは物を「数える」という必要性から誕生した数です。

分数とは何か

次に誕生した数は分数です。
自然数が「数える」必要性から
誕生したのに対して、
分数は「正確に測る」必要性から
誕生した数です。

1/2や1/3など、
分子が1の分数が最初に
誕生したと言われています。
ちなみに、分子が1の分数を
「単位分数」と言います。

無理数とは何か

次に誕生した数は、
意外かもしれませんが無理数です。
発見に至ったきっかけは
中学校3年生で学習する三平方の定理です。

これは別名ピタゴラスの定理と言います。
ピタゴラスさんが発見した定理です。
「どんな直角三角形でも、
底辺の2乗と高さの2乗の和が斜辺の2乗になる。」
という公式です。

ピタゴラスさんは
「万物は数である」
という名言を残すほど、
世の中の物は数で表現できる!
と信じていたそうです。
意外かもしれませんが、
音楽の「音階」も実は数学と大きく関係があります。

でも、ピタゴラスさんの弟子が
あることに気付いたそうです。

それは
「底辺の高さが1の直角三角形に
ピタゴラスの定理を使ったら、
斜辺の数が意味不明になる」という事実です。

当時は自然数と分数しか存在しません。
なので、現在でいう√2を
表現することが出来ませんでした。

ピタゴラスさんは
「そんな数は、認めん!」
と言いましたが、
実際に底辺と高さが1の直角三角形を書くと、
今でいう√2という長さが確かに存在します。
この長さを測ってみると、
その値を正確に表現できないのです。

当時ピタゴラスさんは
こういったピタゴラスの定理に反する数を
「不合理な数だ!!」と非難したそうです。
余談ですが、無理数は英語で
irrational number と呼ばれています。
直訳すると「不合理な数」です。

0の発見

次に発見された数は、
これも意外ですね。「0」です。

自然数は数える事の必要性、
分数は測るための必要性から誕生しました。
そうした中で「ないもの」を
数で表現する必要がなかったんですね。

当時は1-1=0ではなく、
1-1は「無くなった」といったイメージです。

しかし、
「これも数にしようぜ」といって
数に表現したのがインド人です。
この「0」の発明によって、
数の表現は確実に進歩しました。
現在我々が日常で使っている多くの数は、
この0を用いて表現されます。
この表現方法を「位取り記数法」と呼びます。

例えば日本で使われている漢字で、
100,300,500,720,968という数を表すと
百兆三千五億七十二万九百六十八となります。

これは数の大きさを
比べるときに分かりにくいです。
手間もかかります。

やはり表現するなら
100,300,500,720,968の方が便利でしょう。
0って重要ですね。

負の数とは何か

次に誕生した数は負の数です。
これは「反対」の性質を表現する必要性から
生まれた数のことです。

今でこそ日常の多くの場面で用いられますが、
当時は認められませんでした。
最初に負の数が誕生したのは
インドや中国であったと言われています。

四角枠をご覧ください。
当時は借金と財産という言葉と、
数を対応させて考えられていたそうです。

借金+借金=借金
これはなんとなくイメージできるでしょう。

借金+財産
これは借金になるのか、
財産になるのか判断できません。
財産の方が多ければ財産になるし、
財産の方が少なければ借金が残るからです。
ここら辺から怪しくなってきますね。非常に曖昧です。

財産×借金が借金になること、
借金×借金が財産になること。
これはもう意味が分かりません。

確かに現代で考えると、
プラス×マイナスはマイナスになるし、
マイナス×マイナスはプラスになります。
しかし、言葉と対応させて考えるとあまりに不自然です。

実はインドでは計算をするうえで、
便宜上負の数を使っていたそうですが、
あまりにも意味が分からな過ぎて
認められていませんでした。
中国でも負の数は
足し算と引き算でしか使われていなかったそうです。

また17世紀頃、
負の数はヨーロッパでも
多く活用されていましたが、
インドや中国同様に認められず、
「不条理な数」として扱われていたそうです。
最終的に19世紀あたりまで
認められなかったみたいですね。

小数の便利さと種類

次は小数です。
これは0が発明されたからこそ
可能になった表現です。
分数を分かりやすくした数のことですね。

例えば5/8と16/25は、
どちらが大きいのか分かりにくいです。
判断するためには通分をする必要があります。

そんな分かりにくい数を比較したり、
具体的に数の大きさを
確かめることに長けた表現が小数です。

5/8=0.625 だし
16/25=0.64 ですからね。

確かに、分数を小数で表現しきる方が
分かりやすいです。
我々にとっては非常に馴染みのあり、
単純に見やすいです。

こう聞くと、小数は万能のように感じますが、
実は小数にも弱点があります。

それは
「小数だけでは表現できない数もある」
という事実です。

例えば5+1/3を小数表記に直すと、
5.3333333…となってしまい、
非常に不便です。
分数なら表現しきれるんですけどね。

このように、
分数で表現することの良さや、
小数で表現することの良さもあるので、
一概に「どちらかが良い」とは判断できません。

ここから先は高校の内容です。

これまで分数を小数に表現しなおす過程で、
5/8=0.625のように
分数が小数で表現しきれたり、
5.3333333…のように
小数点以下に数字が
永遠に続いていく現象を紹介しました。

実は小数には全部で3種類あります。
まず、分数を小数の世界で割り切れるかどうか、
これによって種類が変わります。

1÷2が良い例です。
これは小数では0.5となり、
分数を小数で表現しきることが出来ました。
小数の世界で割り切れたということです。
このような小数を有限小数と言います。

しかし、中には小数の世界で割り切れず、
永遠に計算が終わらない。
数字が無限に続く小数があります。

例えば1/3=0.333…のように、
無限に3が続きますね。
このように終わりのない小数を
無限小数と言います。
有限に対して無限。
非常に分かりやすいですね。

そして、無限小数は更に2つに分類されます。
ここでのポイントは
「繰り返すかどうか。
つまり循環するかどうか」です。

例えば先ほど例に出した
1/3は小数に直すと0.33…ですね。
これは3が繰り返される、
つまり循環しています。
このような小数を循環小数といいます。

四角枠をご覧ください。
循環小数には無数の循環の仕方があります。
どんな循環にせよ、
永遠に続く数字を書き続けるのは大変なので、
「循環してるよ!」
と分かるような印が欲しいです。
それが数字の上についている点です。

例えば同じ数字だけを繰り返す場合、
その数の上に点を打ちます。これで終わりです。

2つの同じ数字が繰り返されるときは、
その2つの数の上に点を打ちます。

3つ以上の数字が繰り返されるときは、
その繰り返される数字達の
最初と最後の数字の上に点を打ちます。

改めて0.1212…をみてみると、
2つの数字を繰り返す場合でも、
「最初と最後の数字の上に点を打つ」
という規則が成り立っていますね。
どうやら2つ以上の数字が続くときは
「最初と最後」に点を打つみたいです。

循環小数を表現するときの表現は
知識として頭に入れておきましょう。

さて、話を元に戻します。
世の中には循環しない小数もあります。
これはもうどうしようもありません。
だって規則性がなく、
次に続く数を予想できないのですから。

我々の身近なものでいうと円周率です。
このような
「循環しない無限小数」のことを
「無理数」と言います。

無理数は規則性がないため表現に困ります。
これまで多くの数を表現してきているのに、
無理数だけ表現しないわけにはいかない。
でも永遠に書き続けるのは大変。

というわけで
「循環しない無限小数」こと
無理数は記号を使って表現しましょう。

例えば円周率は「π」として表現されます。
そういえば無理数の時に登場した
「2乗したら2になる数」は
分数で表現できませんでしたね。
不合理な数とピタゴラスに言われてました。

当たり前です。だってこれは無理数。
循環しない無限小数なのですから。
彼らが分からなくても無理はありません。
よってそんな数を√(ルート)という記号を使って
√2と表現しましょう。
これが平方根の始まりでもあります。

平方根を「数」としてでなく
「文字」と考えている人が
多いかもしれません。

ここではっきりと
「違います」と言っておきます。

平方根だって立派な「数」です。
表現しきれないから
記号の力を借りてるだけです。
本当の姿は循環しない無限小数です。
小数が永遠に、そして不規則に続く数なんです。
平方根については、別の記事で詳しく解説しますね。

数の世界のまとめ

それでは、
ここまで登場した数をまとめつつ、
いくつか用語の紹介をしていきます。

自然数、0、負の数をまとめて
整数と言います。
自然数は別名正の整数でした。
自然数の中に0を含まないことに注意しましょう。

整数と分数、小数を
まとめて有理数と言います。
ここで、重要項目の紹介もしておきます。

1つ目は
「どんな有理数でも分数で表現することが出来る」
という事実です。
(画像のmとnは整数とします。)

ちなみに、このとき分母に
0がくることは決してありません。
数学は0で割ってはならない
という事実があります。
これについては後ほど解説します。

2つ目は
「2つの有理数の、足し算、引き算、
かけ算、わり算の結果は、必ず有理数になる」

という事実です。

これは整数や自然数の世界では
認められない事実です。
詳しい話は別の記事で説明します。


さて、数の世界について、
続きの話をしましょう。
ピタゴラスさんは有理数の世界で
数学を研究していましたが、
有理数ではない数が存在しました。
それが「無理数」です。
つまり「循環しない無限小数」のことです。

この有理数と無理数を合わせて
「実数」と言います。
英語でいうとreal number です。
そのままですね。

重要項目を見てみましょう。
実数についても有理数と同様に、
「2つの実数の、足し算、引き算、
かけ算、わり算の結果は、必ず実数になる」

という事実が存在します。
こちらも有理数のときと同様に
別の記事で解説します。

以上がここまでの内容のまとめです。

0で割ってはいけない理由

先ほどお話しした、
数学では「0」で割ってはいけない理由
について説明します。

左の枠から話をしましょう。
1/0という数は一体どんな数なのでしょうか。
その正体を分析するために
1/0=aとしましょう。

分数のままだと分かりにくいので、
両辺に0をかけて見やすくしましょう。
すると、1=a×0となります。

この式を成立させるaの値が、
1/0の正体です。

aとは具体的にどのような数なのでしょうか。
…答えは「存在しない」です。
何故なら、aがどんな数であっても、
その後に0がかけ算されています。

0には何をかけ算しても0ですから、
永遠にa×0が1になることはありません。

よってそんなaは存在しないよ!
というわけで1/0を
数として認めるわけにはいかないのです。
これは分子が2でも3でも、
何であっても同じ事です。

「じゃあとまねぎさん。
約分出来るように、0分の0はどうなの?」
という疑問にも答えておきましょう。

確かに0/0であれば
約分して1になりそうですが、
今回もやっぱり認めるわけにはいかないのです。

先ほどと同様に、
0/0をaとおいてみましょう。
分数の形は見にくいので、
両辺に0をかけ算して、0=a×0としておきます。

この式を眺めてみると成立してそうです。
だってaに0をかけ算したら0ですからね。
a=1。つまり0/0が1という意見も
悪くないように見えます。
でも、この式には落とし穴があります。

私たちは0/0をaとしました。
aは1や2のように、
具体的な数でなければいけません。

今回のこの式、0=a×0のaは
どんな数であっても成立してしまいます。
例えばaが1でも成立するし、2でも成立する。
aがπであっても成立します。
このように、aの値が
具体的に定まらないことがこの式の弱点です。

0/0は具体的な値のはずなのに、
具体的な値にならない。
こんな曖昧な状態を
数学として許すわけにはいきません。
なので0/0も認めない。
結果的に数学では
「0で割ること」を禁止としています。

実数ではない数の存在

さて、ここで終わってもいいのですが、
もう少し数の世界を深堀して、
数学Ⅱの範囲まで軽く触れてみましょう。

人類は目に見える数の
存在だけを信じてきました。
負の数が良い例です。
負の数は数直線の力も借りて
徐々に認められていきましたが、
負の数と同様に19世紀まで
認められなかった数が存在します。
それが「虚数」です。

人類は昔から2次方程式には
馴染みがありました。

しかし、
負の数さえも認められない人類です。
2次方程式の解が負になるときは
最初は気にしないようにしていました。

これと同じように、
2次方程式の結果、√の中身が
負になる数も無視してきたんですね。
だってどんな数か目に見えないですから。

数直線が発明されたことからも分かるように、
私たちは「長さ」と数を関連付けて
数学を発展させています。

「長さ」は目に見えますから、
「長さ」と「向き」を合わせた数直線を考えて
負の数も認められたという歴史があります。
こうして人類は実数まで数を発展させてきました。

しかし、
√の中身が負になる数の存在を仮に認めても、
実はこれまで発展させてきた数学が
全く壊れないことに気付きます。
それどころか数学の発展が加速していくのです。

目に見えないけれど、
その存在を認めても数学的に問題が生じない数。
これを認めていこうという流れになりました。

そんな数が虚数です。
英語で imaginary number です。
実に虚数らしい呼び方ですね。
「本当に数学が壊れなかったの?」
という疑問への解答は、
数学Ⅱの解説までとっておきましょう。

ちなみに、
虚数を認めなければならない
決定的な公式があるのですが、
今回の記事では紹介しません。
気になる人は「カルダノ 虚数」で検索です。
注意してほしいのですが、
高校数学においてその公式は全く必要ありません。

さて、話をまとめます。
当たり前ですが、虚数は実数ではありません。
なので世の中には実数と虚数の
2つの世界が存在することになります。
この2つの数をまとめて「複素数」と言います。
英語で言うと complex number です。
虚数という矛盾(complex)を抱えている数に
ぴったりの名前ですね。

数がここまで発展したのは19世紀です。
歴史から見るとかなり新しいですよね。
こうした数の発見のおかげで数学が発展し、
科学が発展してきました。
私たちの豊かな暮らしは
先人の発見によって支えれています。

参考までに虚数と複素数について
赤枠でまとめておきました。
興味がある方は調べてみても面白いかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
正直、知らなくても計算はできるし、
問題は解けます。

しかし、
こうした背景を知っておくと
より一層理解が深まる気がしませんか?

冒頭でも話しましたが、
数学教育学において
「数学を勉強する理由」
という問いへの回答は
「問題を解けるようにするため」
ではありません。

①「数学が現代社会において
非常に役立っているため。」

②「数学ではよりよく生きていくために
役立つ力を身に付けられるため」

③「数学を考えることで
楽しみやよろこびを実感できるため」

これらが国が定めている
数学を学ぶ意義です。

詳しい解説をすると
1つの記事になるので避けますが、
③は難しい問題ではなくて、
ナンプレのような、数学を使った
簡単なゲームも含めています。

この③の中に
「数学は、
人類が生活や社会を発展させる中で
継承され発展してきたものである。
現在も発展を続けており、
我々もその発展に寄与することも
重要である。」
という記述があるんですね。
(高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説より引用)

なので、今回の記事では
数学の発展に貢献はできなくても
数学が発展してきた歴史を
ほんの少しだけ紹介してみました。

今回の記事が皆さんにとって
違った刺激になれば幸いです。

最後に、本記事は
熊倉啓之先生著『なるほど!いっぱい中学数学』
という書籍を参考に作成しています。
大変素晴らしい本ですので、オススメです。

それでは、本日はここまでです。
お相手はとまねぎでした。



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