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勉強上手~好きなことだけが武器になる~

無理に強いられた学習というのは何一つ魂の中に残りはしない。

哲学者プラトンの言葉です。

『勉強』という言葉は「無理にでも(=強)努力して励むこと」という意味から成り立っています。確かに我々は『勉強』という言葉を聞いたときに、「無理やり強いられるもの」というイメージを抱いてしまいます。

例えば、定期試験や入学試験に向けては、一生懸命知識を詰め込んで勉強をしていましたが、試験が終わればその知識はきれいさっぱりどこかに行ってしまいました。プラトンの言うように何一つ魂の中に残りませんでした。もっと言えば、このような勉強は自分の人生を豊かにしませんでした。

効率性を高めた勉強は、答えが一つである問いに関しては有効だと思われます。しかし、社会に出れば解なき問いが溢れており、さらにこれからはより不確定要素の強い予測不可能な社会のなかで我々は生きていかなくてはなりません。(このコロナ禍もまさにその一つの局面だと思います)

どのような社会で生きていくためにも、『自分の武器』が必要だというのはよく聞く話です。

では、その『武器』はどうやって見つければいいのでしょうか。

有名な進学校である灘校で50年以上国語の教師を務めた橋本先生という著名な先生がいらっしゃいますが、橋本先生は「銀の匙」という明治時代の作品を3年間かけて授業で扱います。その橋本先生は以下のようにおっしゃっています。

スピードが大事なんじゃない。すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる。なんでもいい。少しでも興味を持ったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。自分で見つけたことは、一生の財産になる。

著者の成毛眞さん(元日本法人マイクロソフト社長)は、自分の好きなこと、得意なことを伸ばせば日の目を見る、と言いますが、私も同意見です。他人にとっては一見些細な能力であっても、他の人よりも抜きんでていれば、それが必ず自分の武器になると信じています。自分でも楽しみ、他人を楽しませることができる人がこれからの時代に求められていると考えます。

これは、以前に読んだホリエモンと落合陽一の対談をまとめた本にも同じようなことが書かれていて、自分でこんな風にまとめていました。

これからの社会においては、「仕事」と「趣味」の境界線がどんどんあいまいになっていきます。その中で自分が好きなことや、夢中になれることを突き詰め、それがいつしか自分の「仕事」になる時代がくる(もうやってきている)ので、それを他人と違うやり方で続け(ここが大事なポイントで、落合氏はブルーオーシャン戦略と呼んでいます)、他人からの信用を蓄えていけば、人生オールオッケーというわけです。
予測できない未来に怯えるよりも、「今」を精一杯生きて、自分の価値を高めていくことで未来への道が拓いていくのです。

では、自分はどうか。

私は中学3年生の時に自分の将来について真剣に考えた時に、なぜか教師になりたいと思いました。別に尊敬する先生がいたとかではないのですが、それまで常に集団の中でリーダー的存在だったので、自分の知っている数少ない職業の中で自分の特性を鑑みた時に「教師」という職業が頭に浮かんだんだと思います。

そして、大学を出て海外でも教育に従事し、帰国後もこれまで教師としてやってきました。いつからか好きなことも、得意なことも「教育」になっていました。この年になっても教育について学ぶことは楽しいですし、いつまでも自分が成長できると感じています。

そして自分の生徒たちや子供たちはどうか。

自分の好きなことを見つけることは言うほど簡単なことではありません。親や教師の言うことを従順に聞いて、言われたことをやるだけの生活の中では自分が好きなことも得意なことはなかなか見つからないでしょう。そこに必要なのは主体性、OECDが定義するところの"agency"です。

家庭でも学校でもagencyが身に付くような教育をすることによって、自分の人生を主体的に捉え、自立・自走していく子どもを育てていくことが今の社会では求められています。

これは言い換えると、努力して頑張るだけでよかった時代が終わりをつげ、生きるために自分で考えて行動する時代が来た、ということです。生きるために何を考え、何をすべきか。まずやるべきなのは、自分の好きなこと、得意分野を伸ばす戦略を考えることだと成毛さんは言います。

本書にはそのような生き方の様々な例が挙がっているのですが、私はその中でもさかなクンの例が好きです。

さかなクンの経歴は非常にユニークです。彼は小学校の卒業文集で将来の夢は「水産大学の先生になること」と書きましたが、受験で失敗し専門学校に進学しました。普通の人ならここで夢を諦めると思いますが、その後テレ東のテレビチャンピオンという番組の「全国魚通選手権」で優勝し、魚関係の番組の制作にかかわるようになります。また、すし屋でアルバイトをしていた時に描いた魚のイラストが好評で、イラストレーターとして仕事が入ってくるようになります。

その後多方面で評価されて本を出版したり、イベントや講演会に呼ばれるほどの有名人になり、最終的に東京海洋大学の客員准教授となり、子どものころの夢をかなえました。(今調べたらさかなクンは名誉博士になっていて、さらに外務省の親善大使にも選ばれてました!)

もちろんみんながみんなさかなクンのようになれるわけではないでしょうが、「好き」を突き詰めると、ここまでいける可能性があるという素晴らしい例だと思います。たくさん勉強して東大に行くのも悪いことではありませんが、やはりこのように「好き」を追い求める人をたくさん育てたいと思います。

さて、肝心な「勉強上手」になるための勉強法なのですが、第3章で竹中平蔵、勝間和代、茂木健一郎などの著名な方々の勉強法にまつわる本の中身を引用しながら、それらをばっさばっさと切っていきます(笑)このあたりが成毛さんの真骨頂で、かなり尖っていて私は好きです。

その中で、資格取得の話が出てくるのですが、これも示唆に富んでいて面白かったです。

成毛さんのスタンスとしては、「資格のために勉強をしようと参考書を広げている暇があったら働け」というものです。それを表すエピソードとして、ビル・ゲイツとリチャード・ブランソンが日本で講演会をすることになり、当日楽屋でこんな会話を交わしていたそうです。

「今日、俺たちの講演会を聞きに来ている人たちって何人いるの?」
「3000人だって」
「3000人!?バカだなぁ、今日ここに来ている奴らは、成功なんてできるわけないよな」
「そうだよね、成功したいんだったら俺たちの話なんて聞いている暇なんてないよね。俺だったら会社に戻って今すぐ働くな」

確かに日本においては、資格を取ることが成功のための通行手形みたいに思われる節もあり、実際に資格の取得に勤しむ人が多くいます。(私も過去にそういう時期がありました)もちろん資格を取ること自体は何ら悪いことではありませんが、その資格をしっかり自分の将来につなげられるかどうかという視点がごっそり抜け落ちているケースも少なくない気がします。社会人になってからの英語の勉強などはその最たる例だと思います。

多くの日本人は大人になっても妄信的に英語の勉強に取り組んでいます。世界がグローバル化し、英語ができないと話にならないのは間違いないのですが、それはすべての日本人に当てはまるわけではありません。

英語教師の私が言うのも何ですが、これまでに英会話スクールや英語学習教材にお金を投資してきた人たちのほとんどがそのお金をどぶに捨てたようなものだったのではないでしょうか。ある人は大金を投じても全く身に付かず、ある人はモノになったとしても使う場がなかったりします。

英語(外国語)を学ぶことは尊いことですが、「海外旅行に行って、日常会話ができるくらいの英語力をつけたい」くらいの目的意識で習得できるほど外国語学習は簡単なものではありません。資格を取る、または言語習得を目指すにはしっかりとしたビジョンと戦略をもっていないと、その努力は徒労に終わってしまうと思うのです。

それでは、これからの時代我々はどのような勉強をするべきかというと、感性を高める勉強を最優先させるべきだと成毛さんは言います。

本や雑誌、ネットなどの中から情報を取捨選択しながら、信頼性の高い情報を与えてくれる人を探すことが肝要です。そのような情報源を多数確保できれば最先端の情報が集まってくるので、自分が進むべき方向も明確になってきます。

SNSに関しても触れられています。情報化社会においては、コンテンツを作る人、目利きをする人(キュレーター)、フォローをする人の3つで成り立っており、ビジネスに結びつくのは前者2つです。この2つの力を身につけることもこれからの社会で生きていく上で非常に重要と言えると思います。

また、「アラブの春」においてSNSが極めて重要な役割を果たしたように、現代社会においてSNSは時に革命を起こすほどの力を持っています。言うまでもなくSNSを使いこなすにはリテラシーが必要であり、コメントだけでなくその人自身を見抜く力も要求されます。

そして、SNSやメディアを通して情報を集めるだけでは傍観者に過ぎず、インプットした情報をアウトプットすることで初めて自分のものになります。

その点においては、私はこのようにインプットした内容をnoteや他のSNSを通してアウトプットしており、自分の血肉に変えています。また、noteを通して様々な方と知り合いになり、中にはオンラインで実際に会って話した方も何名かいらっしゃいます。これはやはり発信者になることで自分の世界を広げることが可能になり、これも今の時代に必要な「勉強」なのではないかと思います。

成毛さんは「人生を道楽だと思っている」と言っています。私も真剣に「いかに自分の人生を楽しく生きるか」を今後も考えて生きていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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