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テレビが伝えない国際ニュースの真相 ~バイオ・サイバー戦争と米英の逆襲~②

前回の続きとなります。

米中覇権争い

前回世界中で存在感を高める中国について書かせていただきました。破竹の勢いを誇る中国が、バチバチと火花を散らしているのが超大国アメリカです。

米中貿易戦争

中国では1978年から鄧小平を中心とした「改革開放政策」という経済政策が実施され、文化大革命後の経済を立て直すため、経済特別区の設置、人民公社の解体、海外資本の積極的な導入などが行われ、市場経済への移行が推進されました。

中国は自由貿易の恩恵を受け、アメリカなどの海外企業に投資をしてもらった結果、すさまじい経済発展を遂げました。

ここがポイントなのですが、中国の経済発展を支えたのは海外の企業です。中国の経済発展で一番得をしたのは海外の企業(その多くはアップルなどのアメリカ企業)で、中国人労働者にはその利益は還元されませんでした。

改革開放政策に始まる中国の自由貿易は、共産党自らが国を植民地として明け渡してしまったようなものだと作者は言います。

そして中国の経済発展によって莫大な利益を上げていたアメリカも問題を抱えていました。自由貿易によって安価な中国製品が流入し、アメリカ国内の工場が弱体化していったのです。そこで登場したのがトランプ大統領でした。トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げ、保護貿易に舵を切ります。

その結果、中国の工場で生産していたアメリカ企業は大きな打撃を受けます。中国で安く生産してもアメリカに輸出すれば高関税がかかるようになったからです。トランプはグローバル企業に対して、中国ではなくアメリカに戻ってくるように優遇措置を取り、アメリカでは雇用が増えました。(一方で中国の雇用は失われていきました)

米中サイバー戦争

米中が争っているのは、何も貿易面だけではありません。水面下では「サイバー戦争」が繰り広げられています。

サイバー戦争とは、インターネットやコンピュータ上で行われる戦争行為のことで、敵国の情報を盗んだり、攻撃を仕掛けたりするものです。下のニュースもサイバー戦争に関連するものです。

米ソ冷戦時代は、「一方が核ミサイルを押せば相手も撃ってくるので、絶対に核ボタンは押せない」という恐怖の均衡が破滅的な戦争を防いでいました。

しかし、サイバー戦争が主流になる時代では、サイバー空間における攻撃力が抑止力になります。例えば、対立する国がともに相手国の核兵器ミサイルのシステムに攻撃を仕掛ける能力を備えていれば、お互いに手を出すことができません。近い将来、「AI抑止力」によって軍事的均衡が保たれる時代がやってきそうです。

中国は世界の覇権を握ることができるのか

これまで述べてきたように、中国は世界で存在感を増しており、超大国アメリカも無視できない存在となっています。(むしろ脅威と捉えています)

しかし、先にも書いたように、中国の経済発展は、元をたどればアメリカや日本からの投資で成り立っています。「アメリカの投資を元手に、アメリカの覇権に挑戦する」というのはどう考えても矛盾した話であり、これは実現が極めて難しいと考えざるを得ません。

筆者はあと50年くらい待っていれば中国が勝つ可能性もあったかもしれないと言っていますが、それも憶測にしかすぎません。

では、中国はこれからどこに向かうのか。

中国の歴史を振り返ると、戦乱と分裂の時代の後に独裁統一国家が誕生します。そしてその国家が崩壊すると、また戦乱と分裂の時代に戻り、その後また独裁統一国家が・・・というサイクルを5回ほど繰り返しています。

ちなみに、中国の国家が崩壊するパターンも決まっています。官僚機構が支配する社会システムの下で戦争をやりすぎて財政難に。財政難なので増税し、結果農民が飢える。さらに自然災害も発生。干ばつや冷夏に襲われ、農民たちが反乱を起こし、国が亡びる、というパターンです。

こうした歴史を踏まえて、毛沢東の時代に中国共産党は「分配」を政策の中心に据えました。人民に平等に分け与えることで政権を維持したのです。(文化大革命で大量虐殺を行った一方で、市民の平等性は担保されていたとのです)

しかし、このやり方では経済は発展しませんでした。なので、1978年に鄧小平が文化開放政策を打ち出し、市場経済に移行していったのです。結果として、それまで「平等」だった国民たちの間で、すさまじい格差が生まれていきます。

中国には富裕層が約1億人いると言われています。問題は残り13億人にどうご飯を食べさせるか。ちなみに、李克強首相は2020年の会見で、「(人民の)平均年収は3万元(45万円)だが、月収1000元(約1万5千円)の生活を送っている人が6億人いる」と述べています。

毛沢東の時代なら、1億人の富裕層の財産を全国民に分配するということになったかもしれませんが、今そんなことをすれば富裕層は皆海外に行ってしまいます。実際に海外へ移住する中国人資産家は後を絶ちません。香港、マカオ、アメリカ、スイスなどが移住先として多いようです。(香港やマカオは激減していること言うまでもありませんが)

偶然ですが数日前に下の動画を見ました。

では、この後中国はどうなるかというと、筆者は「21世紀、中国は分裂に向かう」と述べています。具体的には「地方の人民解放軍のトップがそれぞれの国家を建国する」という可能性があるとのことです。

確かに14億人の人口と広大な国土を持つ国を、チャイナ・セブンと呼ばれる共産党幹部7人で牛耳ることに無理があるのは間違いありません。私は詳しいことはわかりませんが、もしかしたら中国が分裂に向かうのは必然かもしれません。

米中覇権争い

「米ソ冷戦」が転じて「米中冷戦」とも言われますが、その始まりはアメリカでトランプ政権が始まってからです。トランプは就任当初は習近平に対して寛容な態度を示していましたが、北朝鮮との交渉を進める中で中国から思ったようなサポートを得られなかったことで両国間の関係に溝ができていきます。(そもそも中国は北朝鮮をコントロールできていませんでした)

そして中国とアメリカの覇権争いはエスカレートしていきます。

前回書いた通り、中国は「一帯一路政策」をぶち上げて、ユーラシア大陸西部からアフリカにまで触手を伸ばしていきます。「一帯一路政策」を支える国際金融機関として、2015年に「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」を設立し、アメリカ主導の世界銀行や日本主導のアジア開発銀行に対し、中国主導で西側諸国にも出資を募り、アジア・アフリカ諸国の公共事業に莫大な投資をしようと計画していました。しかし、日米がともに参加しなかったために十分な資金が集まらず、貸し手より借り手の方が圧倒的に多いいびつな構造になってしましました。(詳細は↓)

もちろんアメリカも黙っていません。トランプ政権で副大統領を務めたペンス氏は2018年10月に以下のような講演をしています。

前略
1980年以降、改革開放政策を取った中国はアメリカの投資のおかげで大発展を遂げた。当時我々は「中国が国を開放し、自由主義のすばらしさを理解できれば、やがて中国は独裁政治をやめて、アメリカと同じような自由民主主義国家に変わっていくだろう」と思っていた。
我々は期待して中国の変化を待ったが、それは間違いだと今わかった。アメリカの100年以上にわたる政策は、根本的に間違っていた。
中国は我々の技術を盗み、不正に安い商品を売りつけ、アメリカの産業を破壊した。
中略
中国は前回(2016年)の大統領選挙でトランプ大統領の敗北を願っていた。しかし、我々の答えはこうだ。トランプ大統領は、決して屈しない。

本書より引用

なんともまぁアメリカらしい「俺様」的な内容ですが、まぁ言っていることは間違っていないと思います。ペンスはここで「中国共産党政権の価値観はアメリカとは相容れない。彼らがアメリカの脅威となるから、もはや容赦しない」と明確に宣言したのです。

そして、2020年にはトランプ政権はテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖と領事館院の退去を命じました。(スパイ活動の証拠が見つかったため)一方中国も四川省成都の米国総領事館の閉鎖を命じました。

米中の今後

先にも書いた通り、本書は2020年11月に出版されたものであり、その時点ではバイデン大統領は誕生していません。では、トランプからバイデンに政権が移り、中国との関係はどうなったのでしょうか。

バイデンはオバマ政権の副大統領時代に息子のハンター・バイデンを連れて中国に訪問したことがあります。その直後ハンター・バイデンが設立した投資会社に、中国の銀行から10億ドル(約1300億円)が振り込まれていたそうです。

そんな過去もあるので、中国はバイデンがトランプを大統領の座から引きずり下ろすことを待ち望んでいました。実際にバイデンが大統領になって、米中の均衡状態は少し緩和されたようです。

しかし、台湾を取り巻く情勢は依然予断を許さぬものであり、今後もアメリカと中国の綱引きは続いていきます。本書ではやがて中国が国家レベルで分裂をしていくと予想をしていますが、ウクライナとロシアの関係も修復していない現在、何が起こるかなんてだれも予測がつきません。

言うまでもなく、米中の「冷戦」は我々日本人にも大きな影響を及ぼすものなので、引き続き注視していきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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